第148話 1日目?-3

レ「さて、このコアをどうするか。」

メ「いただきっ!」


俺が地面に落ちたデーモンのコアを拾おうとすると、スッとコアが消えた。そして、透明化して着いてきていたらしいメィルが現れる。


レ「おいっ、それは悪魔のコアだぞ!」

メ「悪魔? 何言ってるの? これはヴァンパイアのコアだよ!」

レ「確かにヴァンパイアのコアだけど、中身はデーモンのコアだ!」

メ「ふふーん、渡したくないからっていろいろ言っても無駄だよーだ。」


メィルは悪魔を知らないのか、俺の言う事を全く聞かないな。じゃあ、力ずくで返してもらうか。


レ「勝手に使って爆散しても知らんぞ。それが嫌なら返して……。」


パキッ。


メ「あっ、割れちゃった。」


俺に奪われないようにメィルはギュッとコアを握りしめたらしく、デーモンのコアが割れた。それと同時にメィルが光りだす。ウロボロスの様に爆散しなかったが、この現象には思い当たることがある。それはワルキューレの女神ランクが上がった時と同じ現象だな……。

光が治まると、そこには12歳くらいの美少女が居た。まるでメィルを育てたらこうなる……いや、現実を直視しよう。間違いなくこの美少女はメィルだ。服装は変わらないが羽が4枚になっているし、あほ面が知的な感じになっているが。


メ「ふむ……やっと元に戻ったか?」


メィルはそう言って自分の体をジッと見下ろす。


メ「いや、まだ元には戻っておらんな。力も……この程度か。」

ヤ「えっと、メィルちゃん?」


弥生がメィルに声を掛けると、自分の体を確認していたメィルはこちらの方を向く。


メ「ほぉ、この時代の人間だったのか。久しぶりだな零。」

レ「久しぶりも何もさっきから会ってるじゃないか。」

メ「そう言う意味では無いのだが……、結界は継続中か。それならまあ、まだ記憶は戻らぬか。」

ア「お主、本当にメィルか?」


アヌビスがジロジロとメィルを見る。飛行しながら360度確認しているが、見た目だけならどう見てもメィルではないがな。


ア「鑑定不能……じゃと?」


ああ、鑑定をしていたのか。それなら分かるだろうが、360度確認する意味がなくね?


メ「まだ完全に力が戻っていないとはいえこれでも元××神なのでな。」

レ「えっ?」

メ「元××神といったのだ。ふむ、情報に制限がかかっておるのか。それはそうと、もう少し力が欲しいの。おお、丁度いい物があるではないか。」


メィルはそう言うと、まるで来るのが分かっていたかのように目の前に現れた転移陣に手を突っ込む。


ル「だ、誰っ? 私の頭を掴むのは誰なのよ! 放しなさい!」


その空間からズルリと悪魔の角を持つ女性が引きずり出される。そして、頭を掴んでいたメィルの手を払う。メィルに0ダメージ。


ル「くっ、見失ったネクロマンサーを追って来てみれば……私を天使ルバートと知っての狼藉かしら?」

メ「ふふふっ、笑わせてくれるでは無いか。悪魔落ちした者を天使とは呼ばぬぞ?」

ル「貴方、死にたい様ね。」


ルバートは右手をギュンッと伸ばすとメィルの顔面を掴もうとしたらしいが、メィルはその手を掴む。俺達には素早さが違いすぎて回避することも防御する事も出来ないスピードだ。実際にメィルが手を掴んだからこそ分かる事だ。


メ「怨みがあるわけではないが、お主はどうせ悪魔だし、私の経験になってもらおう。ソーラービーム。」


メィルの手から出た光が、ルバートを貫き、ルバートはあっさりとコアになった。そして、メィルはそのコアを踏み砕く。すると、またメィルの体が光輝き、少し体が大きくなって16歳くらいに見えるようになった。


メ「ふむっ、これでやっと女神ランクⅣくらいかの?」

ヤ「えっ? 女神ランクⅣ……ですか? ちらっと見えたルバートのステータスは女神ランクⅢのケルベロちゃんより少し低いくらいだったような……。えっ、さっきまで女神ランクⅤですか?」


弥生は強さの定義が分からなくなり混乱しているようだ。俺も頭の中で計算してみる。


メ「あやつは女神ランクⅢの中でも弱い方だからの。それに、見間違えでは無いか? ケルベロと同じようなステータスと言うには桁が一つ足りぬぞ。」


メィルはそう言ったが、ランクが上がるごとにステータスが10倍になるのだから、ランクが一つ低い最強の女神であってもそう簡単に格上の女神に勝てるものでは無いと思う。計算したら、見習いのメィルがたとえ女神ランクⅢになったよりもルバードの方がステータス上は強い。うん、よくわからなくなってきたな。


メ「ともかく、私には状況が分からぬ。一度どこかで現在の状況を教えてはくれぬか?」

ア「それなら食堂へ行くのじゃ。誰もおらぬと思うから丁度いいのじゃ。転移!」


状況が混乱する中、少しでも落ち着ける場所で話をすることになった。


メ「なるほど、そのような状況になっていたのか。」


俺達は出来る限り詳しくメィルに現在の状況、さらには女神たちの言う時間軸の違う世界での出来事を説明した。


メ「お主たちの居る本来の次元では、私はまだ見習いのままなのか。あれから随分と時間が経っておるのに全く嘆かわしい事だ。」


メィルは残念そうに首を振る。女神ランクⅤになるだけで悪魔の女神ランクⅢ相当を簡単に倒せるのなら、真っ先にメィルを女神にするべきだろう。帰れたらすぐにラヴィ様に伝えるべきことができたな。


レ「それで、俺達はどうすればいいんだ? クロノス様には時が来ればまた召喚するかもしれないとしか聞いてないんだが。」

メ「ふむ。正直、お主たちがこちらの次元で何をしようが元の次元には全く影響せぬからの。私としてはこのまま悪魔を退治して欲しいが、強制はせぬよ。」

レ「いやいやいや、悪魔と戦うとか無理だろ! ステータス的にも戦えるのはアヌビスとイルナくらいだし。」

ア「我とイルナに任せるのじゃ!」


アヌビスはやる気を出しているが、今のアヌビスはすでに俺の分裂体では無いので俺が一緒にいる必要は全くない。ひどい言い方をするが、俺の次元に全く影響しないのならばこちらで頑張る意味が全くないしな。


メ「ん? 気づいておらぬのか? 零と、弥生が持っているスキルの特性があれば戦えるのではないか?」

ヤ「分裂と変化でですか? ワーウルフになって多少は戦えますが、悪魔みたいに激強キャラには無理ですよ!」

メ「考えてみよ、スライムはどうやって強くなる? ドッペルスライムも特殊ではあるが、あのステータスでどうやって生きていると思う?」

レ「え、単なるダンジョンのモンスターだろ? 知ってるゲームとかなら合体して強くなったり、変身後のキャラと同一ステータスになったりするけど。」

メ「知っておるでは無いか。そのとおり、合体して強くなり、変身して強くなればよいではないか。」


俺達は半信半疑で自分のスキルを見直してみる。合体して強くか……キングなんとかにならないよな?


ヤ「あっ、できました。」


見ると、アヌビスが2人になっている。変化は変化でも、単なる見た目が一緒になるだけか?


ア「ほぉ、我と全く同一のステータスなのじゃ。戦力が2倍なのじゃ!」


鑑定を持っているアヌビスが現在の弥生のステータスを見たらしく、同一らしい。マジで?


レ「俺の立場が全くないな! そんな簡単に強くなれるなら最初からやっとけばよかったな……。それか、メィルの説明不足か。」

メ「過去の私なら、説明不足の可能性も否めないが、いいではないか。今現在生きておるのだし。」


メィルが適当な事を言うが、正直何度死ぬ思いをしたか……というか、実際何度も死んでるわ!


レ「で、俺は何と合体しろと?」

メ「自分の分裂体に決まっておろう? 試しに何かとくっついてみよ。」


俺はそう言われて、弥生のアイテムボックスから以前作った分裂体の固まりをもらい受け、融合する。


レ「マジか……本当にステータスポイントになっているな。」


分裂体の残したコアを壊せば、分裂体の得た経験を引き継げることは知っていたが、まさかコアの残らない分裂体も融合で経験を得ることが出きるのは目からうろこが落ちる思いだ。モンスターのコアとは違って元々自分のMPだからいくら融合しても全く反発が無いのもうれしい。


レ「じゃあ、少し自動狩りと分裂を繰り返すかな。」


俺はここで話をしている間、分裂体達にダンジョンのモンスターを狩らせると共に、余ったMPをひたすら作っては融合を繰り返すことにした。

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