第146話 1日目?-1

アルスリアの転移によってはじまるのダンジョン入り口前に来た。ほとんど時間は経っていないはずなのにものすごく懐かしい気がする。アルスリアがインターフォンを押すと返事があった。




ラ「はい、こちらはじまるのダンジョン受付のラヴィです。お名前とご用件をお願いします。」


ア「あ、ラヴィ様、アルスリアっす。ちょっとご相談があって来ましたッス。」


ラ「あら、久しぶりね。丁度メィルが試験のための人材が居なくて召喚できずにいるから、時間はあるわよ。入りなさい。」


ア「あざーっす。」




以前と同様にインターフォンまでしか扉が開かない中途半端さも懐かしい。




ヤ「メィルちゃん、こっちじゃまだ召喚できていないんですね。」


レ「結局俺達は電車じゃ死ななかったからな。この時点で少し未来が変わってるのか?」


ア「貴方たちの代わりが死んでいない所を見ると、強制力でも直せないたぐいの変更ッスね。それが吉と出るか凶と出るかは分からないッスけど。」


レ「まあ、メィルが女神になったところで大して変わらなかっただろうし、大丈夫だろ。」


ヤ「私達、もうメィルちゃんより強いですしね。」




俺達は雑談しながらフロントに向かった。インターフォンでのやり取りの通り、ラヴィ様がフロント受付で待っていた。




ラ「貴方がここに来るのは本当に久しぶりね。相談って言うのは隣の人たちの関係かしら? 見たところ、見習い女神では無いようだけど、そこらの女神候補者よりずいぶんと強い者を見つけたのね。用件は見習い女神への昇進申請についてかしら?」


ア「うーん、どう説明すればいいッスかね。この方たちは、時間軸が違う未来からの転移者ッス。」


レ「ここでは初めましてになるのかな? 本来はこれからダンジョンをクリアしていく予定だった源零です。」


ヤ「同じく、形無弥生です。」


ラ「初めまして、ここで受付をしているラヴィ=キラーよ。一応、アルスリアの上司に当たるかしらね?」


ア「そうッスね。一応まだ研修中ッスけど、ラヴィ様の指揮下に置かれるみたいッスから。」


ラ「アルスリアが記憶の同期を行っているという事は、結構大きな問題が起きたのかしら?」


ア「あーしも詳しくは分からないんすけど、クロノス様がらみみたいッス。」


ラ「クロノス様が……。そう、ちょっと食堂へ行きましょうか。」




俺達はラヴィ様に続いて食堂へ行く。アルスリアは実質ウロボロスに取り込まれていたから詳しい話は知らない。とはいっても、俺達も上位の神たちが何をしていたのかは全く知らないが、俺達が経験したことは話せる。




は「よう、飯か? もう閉める時間なんだが、簡単な物でも食うか?」


ラ「いえ、食事ではなく厄介ごとみたいです。」


は「そうか。なら、そのテーブルに座ってくれ。」




俺達は食堂のど真ん中にある6人掛けのテーブルに座る。ラヴィ様、はじまる様が向こう側で、アルスリア、俺、弥生はこちらがわで対面に座る。




は「それで、何があった?」


レ「話せば長くなりそうですが……。」




俺はこれから起こるであろうことをかいつまんで説明する。主に悪魔達の行動に関して。特に俺達が地球へと返される原因となるヴェリーヌの行動については詳しく説明した。




は「あのヴェリーヌがな……。」


ラ「ヴェリーヌ先輩がそんな事を? 信じられないわね。」




ヴェリーヌはよっぽどうまく行動を隠していたのだろう。俺達の言う事よりも普段のヴェリーヌの行動からありえないとまで言われるほどに。しかし、数日以内にそれを決定づける出来事が起きるはずだ。




ア「確信できる出来事が起きるまで待つんスか? あーしの記憶同期でも大事になることは知ってるッスよ。」


ラ「アルスリアの記憶を疑う訳じゃないわ。そうね、魔界にも嫌な動きがある事は確かですし、それ前提で動きましょう。」


は「そうだな。とりあえず、ラヴィには一番最初の出来事が起きる3階を見に行って貰おう。わしは一旦神界へ戻って対策を練るとする。」




そう言ってはじまる様は転移していった。




ラ「それじゃあ、あなた達にもついてきて貰おうかしら。場所は分かるのよね?」


レ「ああ、大丈夫だ、任せてくれ。」




俺達は3階に出るであろう悪魔が居た場所まで向かうことにした。3階へエレベーターで移動するとワルキューレが居た。




ワ「ラヴィ様、どうされました? 巡回中に異変はありませんでしたが……。」


ラ「ちょっとしたタレコミがあったのよ。それで、確認しに来ただけだから、貴方は巡回に戻りなさい。」


ワ「はっ、分かりました!」




ワルキューレは俺達を訝しげに見るが、何かを言うことも無く巡回に戻ったようだ。これで俺達と一緒に行動するという未来も変ってしまったのかな? 悪魔の時のミスが無ければ俺達と一緒に行けという命令が下されないはずだからな。そして、3階の悪魔が出た付近に着く。




ラ「あら、本当に……少しだけ空間に隙間が空けられているわね。言われなければ気が付かないほど巧妙に隠されているわね。」




ふうっ、よかった。もし、まだ発生していないとかだったら俺達が嘘つき呼ばわりされるところだった。しかし、その空間の隙間とやらが俺達にも分かるほど大きくなってきた。




ラ「!? 何かが来るわ。貴方たちは下がりなさい。」




ラヴィ様を先頭に、俺達は後ろに下がり、ガードするようにアルスリアが側に控える。そして、空間の隙間から何かが転移してきた。




ア「戻って来られたのじゃ!」


ラ「貴方は悪魔じゃ無さそうね。何をしに来たのかしら? 返答次第では消えてもらう事になるわ。」


レ「ラヴィ様ストップ! アヌビスか? 記憶はあるか?」




現れたのはアヌビスだった。最初に見たときと全く変わらない大人な姿だ。




ア「おお、零ではないか。久しぶりなのじゃ。おっと、我は交戦する気は無いのじゃ。」




アヌビスは持っていた杖をアイテムボックスに片付けると、ストンと地面に降りる。どういう事かとラヴィ様は俺達を見てくるが俺達にもよくわからない。本来ならアヌビスがこちらに来るのは数日後のはずだ。




レ「本当に俺達の知っているアヌビスだよな?」


ア「そうじゃ。我はもう自らの肉体に戻っておるから零の分裂体ではなくなっておるがな。記憶を保っていたおかげで悪魔どもに侵略される前に片付けてきたのじゃ。ついでに零に逢いたくなったので転移してきてしまったのじゃ。」


ヤ「むむっ、アヌビスちゃんが前よりも強そうに見えます!」


ア「おおっ、分かるか? 前回はしらなんだから見逃していたが、今回は悪魔のコアを全部砕いてきたのじゃ。おかげで1段階パワーアップしたようなのじゃ。それに、新しい魔法も増えたのじゃ。」


ヤ「見てみていいですか? 鑑定!」




アヌビス(神):HP500000、MP455000、攻撃力15000、防御力50000、素早さ78000、魔力120000、スキル:魔法耐性(特大)、闇魔法(8)、空間魔法(2)、HP自動回復(特大)、MP自動回復(特大)、転移魔法、鑑定、蘇生、千里眼、飛行、神杖(魔力8万)、聖なる衣(6万)




ヤ「むーっ、私だけだった空間魔法が!」


レ「いや、空間魔法ってダンジョンで手に入ったスキルじゃないか……。」




空間魔法はほとんどの女神たちが持っているような魔法だ。便利ではあるが特別なスキルでは無いだろう。それにしても、今のアヌビスは女神ランクⅣのワルキューレ並みの強さだな。




ラ「とりあえず、敵では無いと判断していいのかしら? ついてきてちょうだい。」


ア「分かったのじゃ。」




アヌビスは大人しくラヴィ様に続く。俺達も一緒にもう一度食堂へ行く事になった。そこでアヌビスから惑星アヌビスであったことを説明してもらった。




ラ「……事情は分かったわ。悪魔の進行がもうそこまで進んでいたなんて予想外だったわ。」


ア「そうなのじゃ。それに……おっと、忘れておったのじゃ。」




そう言うと、誰かを転移させてきた。急な転移のため、またラヴィ様が警戒する。




イ「……アヌビス様、忘れるなんてひどい。」


ア「すまぬのじゃ。ちょっと話しが長くなったのじゃ。」


レ「イルナじゃないか!」


イ「……おひさ。」




イルナは少し照れたように顔をプイッと背ける。その顔が少し赤い。




ア「イルナも会いたいだろうと、先に迎えに行ったのじゃ。我はこれでも神じゃからな!」




どういう意味かは分からないが、とりあえず全員揃ったことを喜ぶとしよう。イルナは最初に会った時の様に操られてはおらず、装備も整い、ケルベロちゃんからもらった冥府の鎌すら持っている。まあ、俺達も地球に戻されたときは装備そのままだったしな。




ラ「……説明してもらう事が増えた様ね。」




俺達は、結局悪魔の事以外にも詳しく説明する羽目になった。説明の間暇なのか、アルスリアが寝てやがる!


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