第119話 悪魔復活

ウ「この星に転移してきてからここまで来るのに随分と時間がかかったようだが、道草でも食っていたのか?」


ケ「そんな事より、答えろ! この星の女神はどうした?!」





ケルベロちゃんは尻尾を逆立てて怒りを露わにしている。しかし、ウロボロスの方は余裕そうな態度を崩さない。むしろ、さっさと攻撃してこいという様な感じすら受ける。





ウ「鑑定で私のステータスを確認したのだろう? 見ての通り、今、この星の女神は私だ。」





俺にはどういう理屈か良くわからなかったが、ケルベロちゃんはそれで意味が通じたようで攻撃できずにいるようだ。





レ「女神を救出する手段とかあるのか?」


ケ「見たところ、完全に融合してやがる。仮にこいつを倒したところで分離は不可能だが、そもそも許可なくこの星の女神に手を出す事はできねぇ。」


レ「え? こいつ女なの?」





俺はどうでもいい事を口にすると、ウロボロスはピクリと反応した。





ウ「私の様な美女を相手に女なの? だと! お前の目は腐っているのか?」


レ「いや、どう見てもゴツイドラゴンなんだけど・・・。」





ウロボロスは目を開くと、ギリッと歯を鳴らした。そんなに気になる所か?





ウ「腐っているお前の目でも分かるように、お前基準の姿に成ってやろう!」





そう言うと、ウロボロスは徐々に縮んでいく。俺より少し小さいくらいの大きさになった時、漆黒の髪に全身の大事な部分だけ鱗で覆った切れ長の目の女性になった。肌は浅黒く、例えるならダークエルフのような見た目だ。そして、空間魔法で漆黒のドレスを取り出し、あっという間に着がえる。下着は付けない派か。





ケ「それは、お前の姿じゃないだろ。アルスリアの姿だ!」


ウ「今は私の姿だ。私も一目で気に入ったぞ。」





この星の女神はアルスリアと言う名前だったらしい。恐らく、ウロボロスはその女神のコアを食べ、姿を写し取ったようだ。ただ、強さ的には八岐大蛇よりステータスは高いが、スキルを含めた強さだと八岐大蛇の方が強いくらいだと思う。





ウ「どうだ人間?」





ウロボロスはくるりとその場で回る。綺麗だと思うが、それを口に出すほど俺もうかつではない。無反応が気に障ったのか、ウロボロスの顔はムッとした。





ウ「返事も無しか。まあ良い。そろそろ戦うとするか。おっと、女神は手を出すなよ?」





ウロボロスの周りに大量の転移魔法陣が生成され、その中から見た目が悪魔の様なものが大量に転移してきた。ケルベロちゃんはウロボロスに言われたからという訳ではなさそうだが、手を出せないようだ。





ウ「ざっと200体と言ったところか。魔界直送の妖魔たちだ、遊んでやってくれ。」





ウロボロスはそう言うと、飛行でふわりと空中に離れた。ドレスの中身が見えますよ! まあ、見えても鱗だろうが。





ヤ「源さん、この敵たちは鑑定が出来ません!」


レ「なんだと! どういう事だ?」


ア「鑑定が阻害されている訳では無い様じゃ。ステータスを持っておらんのか?」





アヌビスも鑑定したようだ。





イ「・・・とりあえず攻撃する。」





イルナは一番近くに居たゴブリンに羽根が生えた様なモンスターに冥府の鎌で攻撃する。モンスターはこっちのルールが反映されないのか、ダメージは出ず、袈裟切りに鎌が通り過ぎ、真っ二つになって煙の様に消える。それにしても、イルナの攻撃力で1撃とは弱いのか? 試しに俺もスラタン刀で小型のミノタウロスの様なモンスターを斬ると、手ごたえも無く煙の様になって消えた。





ケ「どうやら、幻惑と眷属召喚の間の様な感じだな? 数は多いが大したことねぇな。」





ケルベロちゃんは少し安心したように、腕を組んで仁王立ちした。弥生も手裏剣を数十本に増やして投擲すると、数十体のモンスターが煙となって消える。





ウ「なかなかやるな。ならば、これでどうだ?」





ウロボロスはアイテムボックスから何かのコアを3つ取り出すと、蘇生を唱える。すると、そこから現れたのはルバート、オリヴィエ、カリヴィアンだった。





レ「ゲッ、悪魔じゃないか!」


ル「また会ったわね?」


オ「よう、雑魚ども。」


カ「あ・た・し・復活!」





カリヴィアンがアブドミナルアンドサイポーズを取る。





ケ「ばかな!? ありえねぇ!」





ラヴィ様達にやられたはずの悪魔が、ウロボロスの蘇生によって甦る。3体の悪魔は、少し霞がかかったように黒い粒子が体から放出されている。





カ「これは、どういう事かしらん?」


オ「むっ、体が重いな。」


ル「何か変ね?」





3体の悪魔は自分の体に何か違和感を覚えているようで、しきりに自分の体を確かめている。





レ「弥生、鑑定できるか?」


ヤ「やってみます!」





弥生が鑑定するが、先ほどと同様に鑑定出来ないようだ。さらに、弥生の鑑定に対してカリヴィアンが無反応なところを見ると、鑑定に気が付いていないようだ。もしかして、弱体化してるのか?





ル「とりあえず、私がこの犬っぽい女神をやるわ!」





ルバートはそう言うと、ケルベロちゃんに攻撃する。そのスピードは俺でも十分追える程度だ。ケルベロちゃんも不審に思って回避する。





ル「この攻撃が避けれるかしら?」





ルバートはケルベロちゃんに接近すると、腕をグンと伸ばした。しかし、ケルベロちゃんはその手首を掴む。





ケ「うん? 見ない間にさらに随分と弱くなったようだな?」


ル「クフフ、それはどうかしら?」





ルバートは煙の様になると、ケルベロちゃんに憑依しようとしたようだ。しかし、煙のまま漂うだけで憑依できないようだ。





ル「おかしいわね、憑依できないピギョッ」





煙から戻った瞬間、ケルベロちゃんのパンチでルバートの顔面が吹き飛んだ。そして、コアが残るが、そのコアもひびが入って消滅した。





オ「ちっ、ルバートの雑魚が。女神は後回しだ。雑魚どもが死ねい!」





オリヴィエはケルベロちゃんを避けて俺達にパンチをした。が、スキルが発動しないようで、単なる正拳突きの練習にしか見えない。





オ「む? スキルが発動しないようだが。」


カ「おかしいわね、あたしも魅了できないわん。」





カリヴィアンがずっとポージングを取っていたのは、魅了を使っていたようだ・・・。





イ「・・・えいっ。」





オリヴィエの後ろにいつの間にか回り込んでいたイルナが、冥府の鎌でオリヴィエの首を刎ねる。それだけでオリヴィエはあっさりとコアになり、コアも消滅した。





イ「・・・弱い?」





それを見たカリヴィアンが慌てて逃げ出したが、弥生がその背中にクナイを刺す。すると、カリヴィアンもあっさりコアになり消滅した。





ヤ「見かけだけでしたね?」


レ「そうみたいだな。」





何が原因かは分からないが、弱くて助かったな。

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