荒れ狂う嫉妬の炎④
膜を破壊して乱入してきた人物は俺がよく知っている人物だった。
「か、火燐!? お前どうしてここに!? それに一体どうやって中に……」
あの膜そう簡単に壊れちゃダメなやつだろ。
先生めっちゃ焦ってるぞ。
「……恋次、知らないの? どんな障壁があっても愛の前には無意味なんだよ?」
とても穏やかな笑顔でそう答える火燐。
……ん?
愛って誰に対してのだ?
その答えは一瞬で分かった。
「さて、と……」
俺の方を向いていた火燐が今度は水の能力を持った女子生徒(仮称:水子)の方へと向き直った。
「ヒッ……!?」
顔を向けられた水子はなぜかかなり怯えた表情をした。
(なにをそんなに怯えているんだ……?)
俺の位置からは火燐の顔が見えないので分からないが、どうやら火燐に対して怯えているようだ。
「さっきから"私の"恋次にベタベタベタベタベタベタベタと私の許可なく触ってるのは貴女ね……?」
明らかに怒気を含んだ声色で問い詰める火燐。
戦いだから仕方ないじゃんと水子に少し同情しつつ、先程の火燐の言葉を思いだす。
(私のって……。一体いつから俺がお前のものになったんだよ)
第一今までそんな好意を見せてきたことなんてーー。
あったわ。
明確に好意を示されたわけではないが、それに似た行為には覚えがある。
女子生徒と話していると必ず火燐が現れて、女子生徒と引き離される。
周りに人気がある時はもちろん、人気が全くない時にも現れるから軽く恐怖だったよ。
しかもそのせいで俺と話していると紅い人がどこからともなく現れる……、なんて噂が女子生徒の間で広まって……あれ?
もしかして俺にパートナーができないのって火燐のせいーー。
「恋次?」
「ハイッ!?」
思考の途中で話しかけられて思わずビックリしてしまう。
「今から恋次に色目をつかってたこの子にお仕置するけど……いいよね?」
無邪気な顔で聞いてくる。
ビビった……、考えが読まれたのかと思った。
「ほ……程々にね?」
火燐と話していると、水子が後ろから先程より大きい水の剣を形成して火燐に振り下ろそうとしていた。
俺の時もそうだったけど、やっぱり容赦ないね君。
「火燐あぶなーー」
幼なじみが後ろから攻撃されるのを黙って見てはいられないので呼びかける。
ガシッ。
「「へっ??」」
しかし数秒後には俺と水子の素っ頓狂な声が同時に口から漏れていた。
その原因は火燐が水子の水の剣を受け止めたからだ。
それも素手で。
え、それどんな原理でやってるの?
火燐はそのまま水子の剣を握りつぶし、剣はパシャっと音を立てて地面にこぼれ落ちた。
「えっ……なっ……?」
当の水子や周りの人間も目の前で何が起こったのか理解出来ず、狼狽えている。
「……私と恋次の甘美な時間を邪魔するなんて、これはお仕置きじゃなくて"教育"が必要なようね」
瞳孔の開いた目で小金井たち五人を睨みつける火燐。
「恋次、少し待ってて。今人の恋路を邪魔する不届き者を成敗してくるから」
言うが早いか、地面を力強く蹴って目の前からいなくなる火燐。
男女の差をなくすどころかその辺の男よりも強いだろ、あれ。
「いやぁぁぁ! こ、来ないで!」
最初に狙われたのは水子。
先程剣を素手で破壊されたことに対する恐怖で近づかれることを嫌った水子は、今度は水の塊を発射してくる遠距離攻撃にシフトした。
大量に飛来する水の塊を時に避け、時に手で弾きながら徐々に距離を詰めていく火燐。
ジリジリと距離を詰めていく火燐。
「かかったわね!」
次の瞬間、先ほどまで撃っていた水弾よりも二回り以上も大きい水弾が火燐に迫っていた。
水子め……、さっきまでの水弾は全部このどでかい水弾を溜めるためのおとりだったのか。
「火燐っ!」
助けに行こうと走り出したが、風を操る女子生徒(仮称:風子)に強烈な向かい風を出されてしまい火燐の元へたどり着くことができなかった。
あの大きさの攻撃を喰らってしまっては、いくら今まで無双していた火燐でもひとたまりもないだろう。
「くそっ! 火燐大丈夫か!」
向かい風が切れたのを見計らって火燐の元へ向かう。
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