あすかのみち
「ごめん、急に呼び出して」
「急に呼び出してくるなんていつもの事だろ」
最近の明日香は少しおかしなところがあると感じていたが、今日は特におかしく感じられた。それに、おかしいのは明日香だけではなかった。
「そう言えば、前に来た時よりも部屋がすっきりしたか?」
「まぁ、ちょっと」
歯切れの悪い返答をする明日香の部屋は以前に来た時よりも物が減っていて、必要最低限の物だけが置かれているように見えた。
「なんか、引っ越すみたいだな」
思ったことをそのまま言ってみると、明日香は首を小さく縦に振った。
「引っ越す。すぐじゃないけど……」
「それって、別の学校に進学する話と繋がるのか?」
「ごめん、ずっと言えなくて」
「理由があってのことだろ?」
俺がそう聞くと、明日香は突然涙を流し始めた。
「ごめん、本当は最初に言わなきゃと思っていたのに」
「確かにどうしたのかとは思ったけど、泣くことではないだろ? ないよ……な?」
その問いに明日香は首を横に振った。
「進学先がここから随分と離れるから、多分一人暮らしになると思う」
「まだ、確定ではないんだろ?」
「それは……私が受験に失敗すると言いたいの?」
生れてから今日までの付き合いの中で一度だって見たことがない程に悲痛な表情を見せていた明日香は普段通りの仏頂面に戻り、俺を睨みつけた。
「そ、そうは言っていないだろ」
「どうだか」
「俺だって、寂しいと思っているんだ。だから、出来れば離れたくはない」
言葉にしてみると恥ずかしさでおかしくなってしまいそうだが、それが俺の本心であることに間違いはなかった。
「ごめん。決めたことだから」
「明日香、ここを離れるまで出来る限り一緒に居ても良いか?」
明日香がそんな要求を受け入れるとは天地が入れ替わってもあり得ないとは自分自身理解しているが、俺は自然とその要求を口にしていた。
そして、明日香は俺の予想していない返事をした。
「海がそれを望むのなら」
美紗 「へぇ~」
美紗 「へぇ~~~~~」
明日香 「顔は見えないけれど」
明日香 「美沙のニヤついた顔が目に浮かぶわ」
美紗 「やったじゃん」
明日香 「あんなこと言っておきながら」
明日香 「今日は早速帰ったけれど」
美紗 「明日香も心なしか嬉しそう」
明日香 「違うわ」
明日香 「心から嬉しいの」
美紗 「おめでとう」
明日香 「ありがとう」
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