ふたりだけのぶんかさい
「らっしゃい!」
とてもぬいぐるみ屋とは思えない挨拶でワタシと颯さんを出迎えてくれたのは、昨年まではワタシのクラスメイト、今年度からはナナのクラスメイトとなった手芸部副部長の縫野綿子さんでした。
「おやおやぁ? 笑舞に颯じゃないか。二人揃ってどうしたんだい?」
「ナナに頼んで予約をしたぬいぐるみを受け取りに来たのだけれど、話が伝わっていなかったかしら? それと、颯さんと一緒なのは割といつものことだから気にしないでくれると嬉しいのだけれど」
「なんだい、ちょっとからかっただけじゃないか。それで、予約のぬいぐるみだったね。今取って来るから少し待っていておくれ」
綿子さんがバックヤードにぬいぐるみを取りに行っている間、ワタシは颯さんと共に店内のぬいぐるみを見て回りました。
「イルカのぬいぐるみだ! こっちはカメ!」
「颯さん、こっちにはサメもありますよ」
「本当だ!」
颯さんは海洋生物が好きなようでイルカやカメのぬいぐるみを何度も手に取って見ていました。
「待たせたね」
バックヤードから戻ってきた綿子さんはワタシたちを呆れたような目で見つめながら綺麗に包装された手のひらサイズの箱を何故か二つ渡してくれました。
「予約していたのは一つのはずでは?」
「ピンクの箱は笑舞にブルーの箱は颯にあげな」
「オレは頼んでないけど?」
「ごちゃごちゃうるさいねぇ。アタイが折角用意したんだから素直に受け取りな! それと、お代はいらないよ。その代わり……」
綿子さんは突然ワタシたちの耳元に顔を寄せ、
「幸せにならなきゃ許さないよ」
そう呟いて笑みを浮かべました。
「ほぅら、用が済んだら帰んな。あんたらにゃぁここよりもお化け屋敷の方がお似合いさぁ」
綿子さんは茶化すようにワタシたちにそう言いました。
柚鈴 「くじ引きで水族館のチケット当てた!」
七海 「おめでとうございます!」
明日香 「随分と豪華な景品ね」
柚鈴 「大当たりだって!」
柚鈴 「でも、ペアチケットだって!」
柚鈴 「欲しい人!」
海 「柚鈴が誰か誘っていけば良いだろ」
美沙 「それが良いと思うよ」
柚鈴 「ワタシはみんなで行きたいな!」
柚鈴 「だから、欲しい人!」
笑舞 「もし、立候補が居ないのなら」
柚鈴 「カウントダウン!」
柚鈴 「5! 4! 3!」
柚鈴 「2! 1! 0!」
柚鈴 「笑舞ちゃんにプレゼント!」
笑舞 「ありがとうございます」
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