みまわり

「わぁ、どの教室も凄いクオリティだね」

「えぇ、どの教室も教室の面影が見当たらないほど店舗として完成されているわね」

 明日からの明才祭本番に向けて泊まり込みで作業をする生徒が多数いるため、ワタシたち生徒会も泊まり込みで校内の見回り業務を行っていました。

「おや? そこにいるのは生徒会の二年生ちゃん!」

「愛知先輩、随分と大荷物ですね」

 ワタシたちに声を掛けてきた愛知紅里先輩はパンパンに膨れ上がったエコバッグをそれぞれの手に持っていました。

「紅里先輩、どっちかナナがお持ちしますよ」

「では、もう片方はワタシが」

「良いの? ありがとう。二人とも優しいね」

 片方はナナに任せてもう片方を受け取ると、愛知先輩が涼しい顔で持っていたのが不思議なほどエコバッグはズシリとした重みがありました。

「重いでしょ? 大丈夫?」

「も、問題はありません」

「ナナも……へ、平気です」

 ワタシもナナも引き受けてしまった手前エコバッグを返却するという選択肢を選ぶことは出来ませんでした。

「辛かったらいつでも言ってくれて良いからね」

 愛知先輩はそう言ってくれましたが、ワタシたちはただの喫茶店と化した3年4組の教室まで荷物を運びました。

「二人とも助かったよ。お礼に何か作るから食べて行って」

「気にしないで下さい。ワタシたちは生徒会として、人間として当然のことをしただけなので」

「お手伝いだって、ナナたちから言い始めた事ですから」

「二人とも良い子ちゃんだなぁ。それじゃあ、うち達のために泊まり込みで残ってくれているお礼って事で!」

 愛知先輩はそう言うとワタシたちの返事を聞かず、明日の仕込みを行っている厨房へと入り、生徒会役員(小雨先生を含む)七人前のサンドイッチを作って持たせてくれました。



生徒会議事録

 まさか、日曜大工部に作ってもらったソファベッドが役に立つときが来るとは思ってもいなかったな。 芹沢

 初めて横になりましたが、寝心地が良いですね。 笑舞

 悔しいけれど、寝心地に関しては認めざるを得ないわね。 明日香

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