かじせみなー
「さーちゃん、本当にやるの?」
「あったり前でしょ~ 南帆ちゃん先生もノリノリで準備しているんだからぁ~」
紗綾は自信ありげにそう語り、私個人としては開催して欲しくはなかったさーちゃんこと紗綾と南帆ちゃん先生こと桜ヶ丘南帆先生主催の家事セミナーの準備は着々と進めていました。
「南帆先生、準備中の所申し訳ありません。今回は何をする予定なのか教えて頂けますか?」
「紗綾さんといろいろ相談してみたのだけれど、最初は誰でも簡単に出来る無水カレーの作り方を伝授しようかと」
「無水カレーですか……」
無水カレーとは読んで字のごとく水を一切使わず、野菜の水分のみで作るカレーの事なのですが……。
「無理でしょ」
家庭科室に置かれていた材料はターメリックやコリアンダーのような粉末状のスパイスと、ひき肉三百グラムだけしかありませんでした。
「明日香さんは心配性ね。大丈夫、私はいつもこの材料でカレーを作っているから」
「あ~ちゃん、この材料だけでもカレーは作れるって泉ちゃんが言っていたから心配いらないよ」
二人の自信が何処から湧き出ているのか分かりませんが、少なくとも二人に任せていたら無水カレーが完成する事は無いことだけは理解できました。
「さーちゃん、マジックペンは持っている?」
「あるけど……。あ~ちゃんカレーに入れないでよ!」
「入れる訳がないでしょ!」
つい声を荒げてしまった私は紗綾からマジックペンを受け取り、校内中に貼られた家事セミナー開催のポスターにでかでかと書かれた『無水カレーの作り方講座』の『無水』に取り消し線を引いて回りました。
海 「話は聞いたよ」
海 「お疲れさん」
明日香 「疲れたで済む話ではないわよ」
美沙 「家事セミナーの話?」
美沙 「どうだったの?」
明日香 「二人があまりに見ていられなくて」
明日香 「私が講師をすることになっただけ」
海 「じゃあ、次回もよろしくな」
明日香 「は?」
明日香 「もう、こりごりよ」
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