ふたりだけのしゅうがくりょこう
「困ったわ」
「あぁ、困ったな」
修学旅行三日目。大阪での自由散策をしていた私は偶然同じ時間、同じ場所を目的地としていた颯さんのグループと共に行動していたのですが、それはワタシのグループと颯さんのグループによる罠だったらしく私たちは二人きりで道頓堀の大きな観覧車前に立ち尽くしていました。
「連絡はつかないわ」
普段なら報道部の力を使って五分以内には目的の情報を手に入れることが出来るのですが、修学旅行という特異性からその手段は使用できなくなっていました。
「あいつらぁ」
「颯さん?」
「俺のグループのやつが『二人でデート楽しんで来い』って」
「で、デートですか」
「お、俺たちはまだそういう関係じゃないっての」
「まだ、ですか」
聞こえないように呟いたつもりですが、ワタシの声は聞こえてしまっていたようで颯さんの顔が赤く染まっていました。
「腹減ったし、何か食べに行こう。タコ焼き屋いっぱいあったから食べ比べとか」
「面白そうですね」
「だろ? じゃあ」
颯さんはそう言うと右手をワタシに差し伸べてきました。
「この辺、人多いからはぐれないように。流石に、一人きりにはなりたくないだろ」
「はい、そうですね」
あくまで、一人きりにならないように。ワタシはそう理由を付けて颯さんの右手を握りました。
生徒会議事録
そう言えば、通天閣は行かなかったな。 芹沢
という事は、明日香も? 美沙
あの時の私はどうかしていたわ。観光そっちのけで海と食い倒れ対決をするなんて。 明日香
思い出しましたよ。あの時は本当に……。 南帆
知ってる! 南帆ちゃん先生も参加して南帆ちゃん先生が優勝した対決だ! 柚鈴
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