ひとりきり

「この家って、こんなに静かだったのか」

 一人で自宅の掃除をしていた俺は自分の出した物音がこだまする中でふとそんな独り言をこぼしていた。

 それもそのはずで、昨日まではこの家の中には笑い声が満ちていて静かになる瞬間がほとんどなかったのだ。

 思えば、一人きりになるのは随分と久しぶりかもしれない。

 去年までは一人きりの時間が数えきれないほどあったはずだが、最近は生徒会の仕事で手一杯になった俺を支えてくれるかのように明日香が俺の家を頻繁に訪れるようになり、俺がひとりきりなのを良い事に生徒会役員のたまり場と化してきてもいる。

 ここ最近は俺の家に誰かしら訪れていて丸一日ひとりきりという時間は随分とご無沙汰だった。

 同じことの繰り返しになって、龍鵞峯さんや青山報道部部長から校閲を受けてしまいそうなので一言でまとめると、今の俺は間違いなく……。

「寂しい」

 ひとりきりの時間が寂しく感じていた。




海   「明日は来るか?」

明日香 「何で?」

海   「来るならそれに合わせて買い出しに行かないとだろ?」

明日香 「まぁ、行くけど」

海   「ありがとう」

明日香 「今日の海はすごく変」

海   「昨日の明日香ほどじゃない」

明日香 「早急に忘れて」

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