第57話 虚偽
浩平君の目論見があさっりとも外れた翌週から、あゆみちゃんが週4勤務に変わっていた。
それと同時に真由子ちゃんが週2勤務に減らされ、『絶対辞めるよなぁ…生活できないじゃん』と思っていた。
でも、真由子ちゃんは辞めることはなく、木村君にベタベタしては、躱されるばかり。
週に1度だけ、二人は顔を合わせていたんだけど、ライバル心なのか、双方で嫌い合っているからなのか、一度も口をきくことはなかった。
「何とかならないんですかねぇ」と木村君にボヤいたこともあったけど、木村君は「放っておきな」としか言わなかった。
『放っておけ』と言われても、3人でお昼の時間が被ったときには、何とも言えない緊張感が走ってしまう。
あゆみちゃんと真由子ちゃんのシフトが、初めて被った日のお昼休み。
あゆみちゃんに誘われ、キリのいいところで休憩室に行くと、真由子ちゃんがソファに座り、一人でお昼を食べていた。
向かいに座り、あゆみちゃんとお弁当を食べながら平然と話していたんだけど、真由子ちゃんはこちらを睨みつけ「静かにしてもらえませんか?」と言ってきた。
あゆみちゃんは「はいはい」と言い、少し黙って食べていたんだけど、真由子ちゃんは虫の居所が悪かったのか、私を睨みながら「なんであなたみたいな人が社長のパートナーなんですか?」と…。
木村君にあれだけアピールしているのに、一切靡かないし、全く相手にしてもらえないから、八つ当たりしたくなる気持ちはわからなくはない。
けど、私に言われたところでどうしようもないし、この前居酒屋で説教をされたように、編集もできないのに『パートナーになりたい』って言う方が間違えている。
なんて言えば理解してもらえるのか考えていると、あゆみちゃんが「んなもん簡単じゃん。大地が惚れてっから。超絶大好きだから。愛してるから。好きな女をそばに置きたいって思うのは、当然のことなんじゃない?」と…
真由子ちゃんはプライドが傷ついたのか、「私より、この人の方が勝ってるって言いたいんですか?」と睨みながら言うと、あゆみちゃんは「そういう事。あんさぁ、言っとくけど美香っち、大地の元カノだから。しかも大地は未練タラタラよ?違う会社に居た美香っちを何年もかけて説得して、大金積んで、わざわざ呼び出したんよ?そりゃぁパートナーにするっしょ?」と…
『ハタシテイツノコトデショウカ? タイキンナンテモラッテマセン』状態だったんだけど、あゆみちゃんの嘘は止まらず。
「美香っちと大地が最初に付き合った時も、大地が一目ぼれして、超絶口説きまくって、美香っちが渋々付き合い始めたんよ?しかも高1の時から5年もだよ?美香っちの仕事が忙しくなって、音信不通になっちゃって、自然消滅したんだけど、大地が諦めきれなくて、今パートナーにしてんだよ?今も超絶口説き中なんだよ?ベッドの中で口説きまくってんだよ?あんたの入る隙なんてないの!わかった?」
『イッタイナンノハナシデショウカ?』と思っていると、真由子ちゃんはスッと立ち上がり「負けないから」と言った後、休憩室を後にしていた。
『ごみくらい捨てていきなさい』と思っていると、あゆみちゃんは「腹立つ~!」と…
「…あゆみちゃん、今の話何?」と聞くと、「ん?そうだったらいいなって願望?ベッドの中ってところがインパクトあったっしょ?」と笑っていた。
「そんなことされたことないわ」と言いながら笑っていると、「私もない。仲間だね!」と言いながら笑っていた。
その日以降、あゆみちゃんと真由子ちゃんは目を合わせることもなく、口をきくこともなくなっていた。
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