第69話 妖精郷シスターズと配信会議

 知らない間にボクの画像がアップロードされていたんだけど、本当に油断してくると撮ってくるんだね。

 ちなみにこの件はお母様の報告がいったらしく、しばらくして削除されたことが確認された。

 ネット上に残る画像についても今後削除を進めていくというけどどうなることやら。


「ボクに限らずほかの人のことも無断で撮っちゃいけないと思う」

「えー、見たかったのによう。俺がいないときに何で面白いことしてるんだよ」

「そもそも酒吞童子はネットに張り付いてないでしょ?」

 この鬼は本当に面白いことを言う。

 ボクの写真が見たいなら、一日中ネットに張り付いて見ていればいいのに。

 でも、この鬼は言うだけ言うけどそういうことはしないのはよく知っているつもりだ。


「結局お使いは完遂したけど、色々とひどいことになっちゃったし……」

 次回の教訓として覚えておこう。

 お店で買ったものはなるべく早く消費する。

 うん、完璧だ。


「それよりも一番気になるのは、小学生に間違われたことじゃないのかな?」

 一番気にしていることを茨木童子がさらっと言ってしまった。

 それ、本日の地雷ポイントです。


「いやー、小せえ小せえと思ってたけどよ、まさかそこまで小せえとは思わなかったぜ」

「よく言うよ。ボクと変わらない身長の癖してさ」


 本日は妖精郷のボクの家にみんな集まっている。

 配信グループである『妖精郷シスターズ』で何かをやるために集まったわけだけど、なぜかボクのネタで盛り上がっていた。

 多分このネタ、配信の最中に出るだろうなぁ……。


「今回は何やる~?」

「あー、ツイスターゲームでもやるか?」

「あ、それいいね」

「みんな揃ってくんずほぐれつやるつもり?」

「それは非常に面倒くさそう」

「うちは~なんでもいいよ~」

 星熊童子が声をかけ、酒呑童子が提案して熊童子が賛同。

 茨木童子が疑問を呈して金熊童子がばっさり切って、両面宿儺が振り出しに戻す。

 見事な連係プレーだね。

 これは何も決まらないフラグ!!


「そうだ、暮葉。今度異世界探検配信するぞ」

「やだ」

「なんでだよ」

 酒呑童子がわけのわからないことを言い出したので、ボクは即拒否させてもらった。


「拒否とはいい度胸じゃねえか。10文字以内で理由を言え」

「トイレに困るから」

「お、おう」

 10文字以内というから素直に答えたのに何でドン引きするんですかねぇ。

 日本社会のトイレに慣れたボクはきっと海外にも行けないだろう。

 ましてや異世界も無理だ。

 余談だけど、汲み取り式トイレとか仮設トイレも何気に苦手だったりする。


「おしめしていってもいいぞ」

 酒呑童子が変な煽りを入れてきたので言い返すことにする。


「酒吞童子が穿いてきたらいいよ?」

 酒呑童子が穿いてきたならボクも穿いてあげよう。


「俺は別にトイレはどこでも問題ねーしよ」

「じゃあ野外ね」

 酒呑童子のトイレは野外に決定だ。


「ふふ。鈴、君の負けだよ」

「ちっ。わーってるよ」

 酒呑童子もさすがに野外は嫌だったようだ。

 

「まぁトイレの件は考えるとしてよ。たまには異世界の魔物ってやつを倒してみたいんだよなぁ」

 どうやら酒呑童子はチート無双がお望みのようだった。

 酒呑童子が相手ならドラゴンでも殴り倒すんじゃないかな?


「暮葉の言いたいことはよくわかるよ。まぁ鈴は暴れたいだけだね」

「単身でゴブリンの巣に突っ込みそうだよね」

「きっと盗賊の頭になるんだよ」

「里帰りみたいなもの」

「うっせーぞ! 盗賊家業は数千年前の店じまいしたっての!」

「うちはあまり変わってないとおもうな~」

「お前らな~!!」

 鬼たちの酒吞童子いじりが止まらない。

 でも、盗賊退治は面白いかもね。

 絵的にどうかと思うけど。


「まぁ酒呑童子なら余裕だと思うけど、剣とか弓はいいとして、銃とか出てきたらどうするの?」

「あ? んなもんちょっと痛いだけじゃねえか」

「あれ?」

 どうやら酒呑童子には銃は効かないらしい。

 見た目華奢なのにどうなってるんだろ?


「暮葉だって大して効かないと思うぜ?」

「えっ、そうかな?」

「おうよ。向こう行ったら試してみればいいんじゃないか?」

「あんまり突っ込みたくないんだけど……」

 銃相手につっこめとか、いじめかなにかですか?


「いっそ俺たちも銃持ってくとか?」

「銃? もっていけないでしょ?」

 この鬼は何を言ってるんだろう。


「大丈夫。暮葉がいれば許可出るから」

「ボクの権限を無駄に利用しようとしないでほしい……」

 むしろボクとしては酒呑童子には金棒で攻めてほしい。


「あ、いっそみんなで金棒で攻撃するとか?」

「それは動画にできないと思うよ? 排除する光景も見せられないけどさ」

 BANが怖いので諦めよう。


「異世界可愛い動物図鑑でも作る?」

 熊童子の提案が可愛すぎて即採用したい気持ちになった。

 ぜひ狐で行きましょう。


「絶景巡りとかどう?」

「うちは~お昼寝スポットさがし~」

「おいしいもの食べ歩き」

「異世界刀剣類収集もいいんじゃないかな」

「お前ら、ぶれねえな」

 星熊童子は絶景巡りがしたいみたいだけど、アクティブな彼女ならではという感じだ。

 対して、両面宿儺と金熊童子はのんびり屋というかなんというか。

 茨木童子は異世界に行ったら弁慶並みに武具を集めそうな感じあるし。


 結局このあと2時間くらい話し合ったけど、大筋合意といった感じで無難に終了した。

 それぞれがあげた企画を全部終えるには一日じゃ絶対足りないからね……。

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