第52話 酒呑童子とゲーム配信する。その1

 今日は酒呑童子と一緒に、とあるサバイバルゲームの実況プレイをする日だ。

 なので、ついでとばかりに酒呑童子がボクの家にお泊りに来ている。

 昔はよくあったけど、最近はやる機会が減ってしまったんだよね。

「さーて、準備はOKだぜ? PCの調子もいいしな」

 配信用機材の予備は我が家に常備されているので、泊りに来た子と気軽に配信することできる。

 もちろん、それらを扱うPCも最新のものになっているので、容量の大きなゲームも一緒にプレイできるようになっている。

 ちなみに酒呑童子は『酒井鈴』という人間名も持っているが、『鈴音鬼那(すずねきな)』というVtuber名も持っている。

 最近配信を始めた新人として活動しており、配信内容の6割は雑談で、時々同時視聴配信をしたりゲーム実況配信をしているようだ。

 ボクも視聴しているのでよく知っている。

 ちなみに個人勢グループ『妖精郷シスターズ』のリーダーをやっている。

 このグループは酒呑童子を筆頭に、茨城童子と熊童子、金熊童子に星熊童子、そして両面宿儺と猫又の黒井黒奈、烏天狗の烏山みなもと狗賓の雫ちゃんが所属している。

 いわゆるいつものメンバーというわけなんだけど、列挙してみると意外と数が多い。

 ここにボクと弥生姉様も加わることになる。

 まぁ、誘えば猫村七海ちゃんこと暁夏希ちゃんも所属すると思うけどね。

 ともかく、今後はこのグループメインで活動していくことになるだろう。

 まぁ今日はその一環ともいえるわけなんだけども……。


「やっほーみんなー、真白狐白のまったりゲームチャンネルはじめるよ〜。さて今日は特別ゲストがいるよ! 最近できたばかりの配信グループのリーダーで新人Vtuberの鈴音鬼那だよ」

『鈴音鬼那って誰だ?』

『最近出てきた可愛い親分だな』

『おやぶーん!!』

『たしか個人勢のグループやってるんだっけ? 【妖精郷シスターズ】だったかな』

『あそこも可愛い子多いよなぁ。あといろんな属性に刺さる』

「おう、俺の子分もそうじゃないやつもよろしくな! 俺は『鈴音鬼那』っていう、見ての通りの鬼族だ。狐白とは親友でな、こうやって時々一緒に何かしてるんだぜ」

 鈴音鬼那の姿には2種類ある。

 一つは通常時の姿である、洋装型だ。

 どちらにも共通しているのは、肩口まで伸ばした奇麗な黒髪と赤い瞳、そして奇麗な白い肌だ。

 洋装型の服装は白いノースリーブのブラウスに黒のハーフパンツ、黒いガーダー付きソックスが基本セットになっている。

 追加装備としては羽織るためのジャケットなどのアウターが複数用意されている。

 次は和装型だ。

 こちらはボクにもあるのだが、いわゆる巫女服というタイプになる。

 白衣と緋袴、白足袋が基本形となっていて、そこに草履や白木の下駄が追加される。

 上着としては千早、水干、羽織が存在している。

 現在の鬼那の姿は洋装型で、小さな体に平坦な胸もあいまって、スレンダーな美少女といった見た目になっている。

 そんな美少女が画面の中で勝気な表情を浮かべてみんなを見ている。

「それにしても鬼那の姿ってよく似合ってるよね」

「お? そうか?」

「うんうん。なかなか可愛らしいよ。これならもっとファン増えそうだね」

「あはははは、あんま褒めんな。照れんだろ?」

『お、いちゃついてる』

『深い関係ってのがよくわかっていい』

『これはキマシ』

「あぁ? キマシってなにも来ねえぞ?」

「鬼ー那ー? これは仲が良くて百合百合しいって感じたときとかに使われるんだよ?」

「ほーお? そうなのか。百合百合しいねぇ」

 視聴者のみんなの反応を聞いて、酒呑童子がボクのほうを見る。

 つられて画面内の鬼那もボクのほうを見ている。

「つまり、こうすればいいってわけだな?」

「はぁ!? ちょっ、ばかっ」

 何を思ったのか、急に酒呑童子が抱き着いてきた。

 画面内の鬼那も動こうとしたが、今回は2Dモデルのためそこからは動かない。

『なになに? なにがおきてんの?』

『まーた狐っ娘が襲われてるよ』

『なんだまたか。いいぞもっとやれ!!』

『ありがてぇありがてぇ』

『\10000 本日の百合代お納めください』

『\1000 拝観料』

『\2000 タワー建設費用』

 高額の投げ銭を筆頭に、それからいくつものお金がこの瞬間に投げられた。

「わっ、ありがとうございます! ってもう、鬼那、いい加減にしなさい!」

「ちっ、しゃーねーな。投げてくれたみんな、ありがとな!」

「しゃーねーなじゃありません。まったく。今日はゲーム配信の予定でしょ?」

「お、そうだったそうだった」

「じゃあさっそく始めよう。みんな大好きゾンビサバイバルゲームだ!」

「おう! 話には聞いてたけど、実はまだちょっとしか触ったことねえんだよな」

「鬼那って結構やらないよね。これは物を作りながら拠点を作ったりゾンビを倒したりするゲームだよ。数日ごとにまとまって襲ってきたりする、そんなゲーム」

「へぇ。面白そうじゃねえか。やってやんぜ」

 こうしてボクたちはゾンビゲームを始めた。


「前もやったけど、今回は二人だから最初からね」

「おう」

『ビビり散らかす子狐に期待』

『狐白ちゃんの悲鳴はよ』

『親分、俺たちがついてますぜ』

『親分の悲鳴も聞いてみたい』

 視聴してくれているみんなの期待に応えられるかはわからないけど、とりあえず無難なプレイを目指していくことにする。

「とりあえずよくわかんねえから、狐白が指示してくれ。従うからよ」

「りょ~か~い」

 まずはある程度プレイに慣れているボクが前に出る。

「じゃあまずはフレンド登録してお互いの位置を探すよ。じゃあ送るね」

「おう、来たぜ」

「あ、意外と近いね。じゃあまずはチュートリアルをやろう。最後のトレーダーの場所に行くのは合流してからでもいいから、ボクは先にトレーダーの付近に行って拠点候補地見つけておくね」

「おう。なんか気をつけなきゃいけないことあるか?」

「う~ん。本当は自由にプレイしてほしいけど、合流優先してからってことにして、家の中とかには入らないでまっすぐ来てね」

「りょーかい。んじゃいっちょやりますか」

 こうしてボクたちはプレイを始めた。

 最初のチュートリアルは簡単で、寝袋を作って石斧を作る。それから服を作ってこん棒作って弓矢を作って、っ建設に使えるフレームを作ってキャンプファイヤーを作る。

 ちょっと石ころの場所と鳥の巣の場所で手間取ったものの、なんとかクリア。最寄りのトレーダーの位置が表示された。

「今の場所から1.5kmかぁ。思ったより遠いなぁ。お店見つけたら場所だけ記録しておこう。鬼那もお店見つけたら場所だけ記録しておいてね」

「おうよ。で、何見つければいいんだ?」

「ん~、探さなくていいけど、ホームセンター系とか電気量販店というかパソコンショップみたいなやつ、スーパーや本屋、それと薬屋かな」

「わかった。ん? このワークなんたらってのはそうか?」

「あぁ、それそれ。いいツール手に入るんだよね。序盤はかどる」

「わかったぜ。お土産にしていかなくていいのか?」

「ん~、ほしいけど死ぬリスクもあるからね」

「ならしょーがないな。まずは合流することにするぜ」

『めっちゃ仲良く協力プレイしてる』

『分かり合ってる夫婦感あるな』

『かなり堅実に進めるねぇ』

「あはは。このゲームって、本当に序盤が長いよね~。ふぅ、やっと半分か。すぐ体力切れちゃうよ」

「なんだこの人間、1キロも走れねえのか。貧弱だなぁ」

「たぶんブロック数計算だと思うから実際もっとあるよ」

「まじかよ」

 ボクたちはくだらない雑談をしながらゲームを進めていく。

 さすがにマルチプレイなので合流までは面白ハプニングなどは起こらない。

 何かが起こるとすれば建物探索を始めたり、夜に行動したりした時だろう。

「ふぅ、ついた」

「おつかれー。お、見えてきた。ここか」

「おぉ? 早いね。もう合流できたんだ」

「なんかこう、誰かと出会うと地味に安心するな」

「だよね! だから拠点を利便性もあるけど、トレーダーの付近に作る人が多いんだと思う」

「それな」

 こうして無事に酒呑童子と合流することができた。

 ちなみにボクのキャラクター名は『mashirokohaku』で酒呑童子のキャラは『suzunekina』だ。

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