第457話 ぷるんとな
「……わかった。とりあえずそっちの要望を聞こう。何が望みだ」
「そだね~。じゃあ、キミを人質として貰おうかな~」
「人質?」
「そ~。なんかキミには~、このアナちゃんと同じ特別なものをかんじるっていうか~。誰だか分からなかったアナちゃんのパパらしいし~」
「そんな子どもの言うことを信じるのか?」
「言ったでしょ~? アナちゃんは特別なんだよ~。この子の示したことで間違いだったことはないんだよ~」
まじかよ。
一歳児の言動に一国の軍が左右されるのか。俺には理解できない世界だな。
「そうじゃなくても、貴重な種馬が手に入るのは僥倖さ~」
「だろうな。その条件を呑めば、撤退してくれるのか?」
「ジェルドの女王に二言はないよ~」
ほんとかよ。
いろいろわけわからんが、俺が人質になるくらいで丸く収まるなら願ってもないことだ。
それに、オルタンシアと子どものことも気になる。
まるで、運命に導かれているようなくらい、因縁と鉢合わせしてるんだよなぁ。
エストによる運命の干渉はもうないはずだ。
だからこれは、紛れもない俺自身の運命に他ならない。
運命は過去の行いによって決まるか。
言い得て妙だよな。改めて、実感するぜ。
「わかった。そんなのでいいなら、喜んで人質になろう」
「あいわかった~。やったね。じゃ、乗って~」
そう言って、アルドリーゼは戦車をぽんぽんと叩いた。
「今からか? こっちの連中に今の話を伝えないと。それに馬だって」
「すべてこっちでやるから大丈夫だよ~。よきに計らうから。ほら、早く」
「……強引だな」
だが、退いてもらう為には仕方ないか。
サラは俺のことを思い出したんだ。それにルーチェも一緒にいる。俺が一緒にいなくても上手く連携は取れるだろう。
最悪、ジェルドの軍勢くらいなら俺一人でなんとかなるし。
「はっ!」
俺はフォルティスをジャンプさせ、そのまま戦車に飛び乗る。
「おおっ!」
アルドリーゼが驚き、アナちゃんがぱちぱちと拍手する。
「フォルティスは一緒に連れていく。いいな?」
「いいよ~」
まったく。
面倒なことになった。
俺らしいといえば俺らしい人生だな。
波乱に満ちている。この波乱を乗り越えてこそ、俺の目的も果たせるってもんだ。
「アルドリーゼ。サラ達には、心配するなと伝えてくれ」
「りょ~かい~」
「あと、すぐ戻る。とも」
「伝えるけど~。それができるかどうかはわからないよ~」
「出来ない約束はしないタチなんだよ俺は」
「ふ~ん」
アルドリーゼはにへらと笑う。
おっぱいが、ぷるんと揺れた。
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