第284話 謎の女やん

「収まったようだな……まったく、一体なんなのだ」


 フィードリットが溜息交じりに呟く。


「アデライト女史。どう思う?」


「そうですね。おそらくですが……サラちゃんに反応したのではないかと」


「やはりそう考えるか」


「もちろん偶然ということもありえます。けれど、この出現の仕方は無関係とは思えません」


 サラに関係あるってんなら、調べないわけにはいかないな。

 そうでなくとも、近くで異変が起きたっていうなら、それが脅威になるか否か分かっておいた方がいい。


「よし。守護隊はその塔を調べてきてくれ」


「御意。数名を向かわせます」


「用心しろ」


「はっ」


 そして守護隊は動き出す。

 こういう時、すごい役に立ってくれるから最高だ。


「ねぇロートス。私も見に行ってきてもいいかしら」


 エレノアがそんなことを言い出した。


「ダメだ」


「なんでよ」


「安全が確認できてからだ。何があるかわからない」


「あの人たちには行かせたのに?」


「あいつらは諜報とかの専門家だ。俺達とは違う」


「それはわかるけど」


 どうにも納得できないらしい。


「なんだよ。少しくらい待てないのか」


「そういうわけじゃないわ。でも、なんだか呼ばれてる気がするのよね」


「呼ばれてる?」


 あの塔にか。

 視界の端で先生の眼鏡がキラリと光った気がした。


「エレノアちゃん。先ほど女神ファルトゥールが夢に出てくると言ってましたね」


 先生の問いに頷くエレノア。


「でしたら、出現した塔はファルトゥール由来のものかもしれません。あの子たちの報告を待てば、それもはっきりするでしょう」


 なるほど。ファルトゥール由来のものか。

 女神的パワーを秘めたものなら、地中に埋まっていてもおかしくはない。サラに反応して地上にこんにちはしたのも頷ける。


「なんであれ、今は待ちましょう。街での戦闘はほとんど終わっているようですし」


「そうなんですか?」


 それは朗報だ。


「スキルも魔法も使えなくなった影響で、両軍とも戦意を喪失したようです。親コルト派は撤退。王国軍も追撃はしていません」


 まぁ、いきなり力を失ったら慎重にもなるか。

 ある意味、俺のチートは戦争を止めたことになるのかな。

 なんか光明が見えてきたぞ。この調子で信頼と実績を積み重ねよう。


「ですが喜んでばかりもいられません。一部まだ戦闘を続けている者もいます。ウィッキーとシーラ、エレノアちゃんの従者の方も。今も死天衆最後の一人と戦っています」


「まじですか」


 確か『体力』のミーナだったっけ。

 やっぱり、全てを超越しているってのは伊達じゃないってことかよ。


「マホさん。大丈夫かしら」


「安心して。苦戦はしていないようです。善戦しているとも言えないけど……」


 まぁ、攻撃が通らないんじゃあな。


「泥仕合って感じですかね」


「そうですね……」


「ウィッキーには『ツクヨミ』もあるんじゃないですか?」


「それも効いていないようですね。体力だけでなく、精神力も並外れているのかもしれません」


 いよいよやばいな、そのミーナってやつは。

 いったい何者なんだ。

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