第235話 英雄の集い

 進んでいくと、すぐに兵が案内人として現れた。

 エレノアやマホさんと会話をする暇もない。

 忙しなく案内された先は、広い講堂だった。天井は高く、奥行きのある空間だ。大きな窓から日光を取り入れ、室内は外と変わらないくらいに明るい。


「申し上げます! 『大魔導士』エレノア様が、従者を伴いご到着されました!」


 広間に案内人の声が響き渡る。


「おお来たか!」


 反応したのはガウマン侯爵だった。

 講堂に並べられた椅子には、多くの将軍や冒険者が座っている。ざっと二十人はいるだろう。その他に従者や部下とおぼしき者達も控えている。

 一番奥に鎮座する一際大きな椅子には、厳めしい老齢の男。その左右に、それぞれが向かい合うようにして椅子が並んでいる感じだ。俺の左手には王国の紋章を刻んだ鎧を着た将軍達。右手にはそれぞれの装いの冒険者達が座している。


 面識のない俺でもわかる。ハンパなくオーラのある面々だ。

 ところが、エレノアはまったく物怖じすることなく前に進み出た。

 そして、最奥の老将軍に一礼する。


「そなたが『大魔導士』か」


 老将軍がしわがれた声を放つ。なんか威圧的だ。


「はい。エレノアと申します」


 しかしエレノアは動じない。


「カード村とアインアッカ村の戦いで、大きな戦果をあげた者ですね」


 若い女将軍が嬉しそうにそんなことを言う。


「すでに王国中にその名が轟いている。少なくとも軍人で、その名を知らぬ者などいるわけがない」


 ガウマン侯爵が誇らしげに笑声をあげると、他の将軍や冒険者達も揃って笑いを漏らした。

 あれ? 意外に和やかな雰囲気じゃん。


 エレノアは改めて、丁寧な一礼を行う。


「ムッソー大将軍。ガウマン侯爵閣下。王国の将軍方。S級冒険者の皆さま」


 それぞれの方向に一度ずつ頭を垂れ、最後にまた深く一礼する。


「どうぞ、お見知りおきを」


 おい。

 なんかやっぱり、俺の知ってるエレノアと違う。

 いや、エレノアはエレノアなんだけど、なんというか、大人になったというか、精神的に成長してるっていうか。そういう感じだ。

 十三歳の少女とは思えない風格を漂わせている。


「うむ。今、我らが祖国に大きな危難が訪れている。優秀な人材は一人でも多い方がよい。『大魔導士』エレノア。貴殿を心より歓迎する。さぁ」


 ムッソー大将軍と呼ばれた老将軍が、威厳ある声でエレノアを促した。


「では」


 エレノアがそれに従い、並べられた椅子の一つに向かおうとする。

 俺とアイリスは顔を見合わせた。どうしよう。とりあえずエレノアについていけばいいのかな。


「待て」


 その時、ガウマン侯爵が鋭い声を発した。その目は俺とアイリスを見ている。

 やば。そういえば、俺ってあのおっさんに顔を見られているんだった。

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