第217話 タイミングって難しい
『ロートスさん。エレノアちゃんのためにも、くれぐれも軽率な行いは慎むように。よく考えて行動してください』
「わかってます。冷静にやってみますよ」
俺は念話灯をウィッキーに返す。
「ロートス? 先輩はなんて?」
「大丈夫だ。大きな問題はない」
とは言ったものの、一体どうしたものか。
「みんな。ちょっといいか?」
俺は深呼吸し、全員を見渡す。
「俺はアイリスを迎えにいく。みんなはこのままカード村を抜けて、アインアッカ村に向かってくれ。そこで合流しよう」
「なに言ってるの? そんなの」
当然の如く、ルーチェが反論する。
「どうしてロートスくんがアイリスのところへ行くの? なんの意味があって」
「野暮用ができたんだ。ルーチェ。お前達はサラを確実に連れて行ってくれ」
アイテムボックスはルーチェが持っている。サラもその中だ。最悪俺がいなくても、大丈夫なのだ。
「また離れ離れっすか?」
ウィッキーが恨めしげな視線を送ってくる。しかし、俺も退けないのだ。
「すぐに戻る。アイリスを連れてな。なに、トイレに寄る程度の感覚さ」
「でも――」
まだ何か言おうとするウィッキーに対し、俺は彼女の胸倉を引っ掴んで引き寄せた。
「あ」
そして、強引に唇を奪う。
「ん……!」
甘美にして濃厚な口づけ。とても並の十三歳男子にはできないだろうディープなやつをかましてやった。
ウィッキーの体から力が抜けていく。
守護隊の少女達が、小さな声でキャーキャー言っている。
「え? どうしてこのタイミングで……?」
ルーチェだけは冷静な反応を見せてくれた。
俺はウィッキーの唇から離れると、フードに覆われた頭を撫でてやる。
「……ロートス」
「黙って俺に従え。いいな?」
「……はいっす」
ウィッキーはとろんとした恍惚の表情である。
よし。
勢いでやったことだが、上手くいったからよしとする。
「どうしてこのタイミングで……?」
ルーチェは未だに疑問に思っているようだった。
それはそれで都合がいい。
「じゃあ、頼んだぜ。俺は行く」
この勢いのまま、俺は一人カード村の中心へと向かった。
エレノアがここにきているとなれば、放ってはおけない。
あいつは大切な幼馴染だし、加えて同じ世界から転生してきた転生仲間かもしれないのだ。
フェザールの言うことが正しければの話だが。
それを確かめるためにも、直接会って話をしなければならないだろう。
予想外の展開だが、仕方ない。
これも運命だ。
だが俺は運命に翻弄されたりはしない。
運命の方を、俺が振り回してやるのさ。
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