第28話 ついてきちゃったんですか
エレノアが言っていたことを思い出す。
クラス分け試験の評価基準に、どのダンジョンを選ぶのかが含まれているんじゃないか。もしそうだとしたら、俺の選択は誤っていたことになる。
「サラ。このメダルをそのまま持っていくことについて、どう思う?」
「別にいいんじゃないですか? 早く終わらせるに越したことはないでしょうし」
「バカ。それじゃあ余計な評価をされちまうだろうが。俺は目立ちたくないんだ。平均点かそのちょっと下あたりを狙いたいんだよ」
「それでしたら……」
サラはうーんと腕を組む。
「だったらいっそのこと捨てちゃったらどうですか? そのメダル。それで、他のダンジョンに新しいメダルを取りに行くとか」
「あれだけ苦労して手に入れたメダルを捨てる? そりゃいい考えだな」
何度も言う。俺の行動理念ランキングには、目立ちたくない、が堂々の一位に輝いている。その為なら、どんな苦労も功績もドブに捨ててやる。
とりあえず俺は、足元にメダルをポイ捨てした。幸運な誰かが拾ってくれることを信じて。
「ん?」
足元に違和感。
「ご主人様! これって……!」
おいおい、ウソだろ。
俺の足元には、あの大人しくなったスライムがいた。
「ついてきたのかよ……」
コンビニエンスストアほど大きかったスライムは、今やバレーボール大に縮んでいる。俺がイメージする某RPGのスライムっぽい。目と口はないけど。
「どうすんだよこれ」
「どうしましょう」
俺もサラも困っている。
うーむ。
スキルでテイムしたことにすればなんとかなるかもしれないが、見る人が見ればすぐにバレるだろう。俺にテイム系のスキルがないことは学籍情報にも登録されている。
なにより、スライムなんか連れていたら目立つことこの上ない。
「おい、お前」
俺はしゃがみ込んでスライムを睨みつける。
「俺にお前の面倒を見てやれる余裕はない。ついてきてもらっちゃ困る」
分かっているのかいないのか、スライムは小さく震えていた。
「あの、ご主人様。この子、お腹が空いているんじゃなかったでしたっけ?」
「ああ、そうだ。だから人を襲っていた。俺の『ノーハングリー』で誤魔化したみたいだけど」
「ご主人様がこの子から離れちゃうと、また同じことが繰り返されるんじゃ……」
「そうは言ってもな」
「それにこの子。もうご主人様に懐いてるみたいです」
まじか。
「スキルなしでモンスターをテイムするなんて、やっぱりご主人様はものすごい『無職』ですね!」
しかしどうしたものか。ダンジョンで生まれたモンスターが外に出てくるだけでも事件なのに。
「仕方ない。とりあえずこれに入れておくか」
俺は懐からビンを取り出す。今は空だが、王都への旅で飲み水の容器にしていたものだ。
「やいスライム。ついてきたいならこの中に入れ。イヤなら大人しく森へお帰り」
俺がビンを置くと、スライムは迷う素振りも見せず中に収まっていった。
そんなについてきたいのか。しょうがねぇなぁ。
「ご主人様の魅力には、スライムでさえメロメロってことですね!」
「サラ。いつも俺を肯定してくれてありがとな。めちゃ自信に繋がる」
「本心を申し上げているだけです!」
ああそうかい。それが一番ありがたいんだよ。
それはともかく。
不本意ながらスライムを仲間にした俺達は、平均的評価を得るために他のダンジョンに向かうことにした。
目指すは、捨てられた神殿だ。
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