第31話 【幕間】スラヴァーとは?
[ジーン・ロス『武器の歴史~人類が求めた兵器~』より抜粋]
戦争の歴史とは、武器の歴史である。
棍棒は青銅の剣に負け、青銅の剣は鉄製の剣に追いやられ、鉄の剣は鋼の剣によって淘汰されていった。武器が人類の歴史を築いたとも言えるのである。
当然のことながら権力者たちは、より性能のいい武器を求め始める。
すると、こんな疑問が浮かぶ。
「歴史上、最強の武器は何か?」
騎士の象徴であるロングソードであろうか、東の国のカタナであろうか、手練れが扱えば鎧すら貫通するロングボウであろうか、それとも戦場の有様を一変させてしまったマスケット銃であろうか。
私が思うに、そのどれでもない。
スラヴァーこそが最強の武器である。
武器の歴史から見ればスラヴァーは生まれたばかりで、まだまだ赤子も同然である。大戦後期に誕生し、大型のスラヴァーはメックにも装備されるようになったが、人間が持てるサイズの物も生産されていた。
それまでの剣が物体を「斬る」武器であったのに対し、スラヴァーは「焼き切る」武器である。メックの動力にも使われているヴリル・エネルギーの刃を纏わせて、物体をエネルギーで焼き切る。それまでの武器の考え方とはまるで違っていた。
もちろん、スラヴァーにも欠点はある。ヴリル・エネルギーは定期的に補充せねばならず、エネルギー自体も高価である。しかし、最大の欠点は重量があり扱いづらいことだ。
本来はそのまま消えていく武器となっていたかもしれないが、大戦ではデュナミスが再び戦場で活躍し始めたことが、大きな転機となった。彼らにスラヴァーを持たせたことで、その性能を何十倍にも高めることができたのだ。
スラヴァーが登場したことで、それまでの武器が消え去ったわけではないが、すべての武器が過去の物になってしまった。その衝撃は「人類が石を投げることをやめて以来の変革」とさえ言われるようになった。
メックという兵器とスラヴァーという武器、そしてデュナミスという使い手が組み合わさることで、それは何より強力な存在となった。
私は時々思うのである。一体、こんな強力な武器を誰に使うのか、と。人間を殺すのであれば、鋼鉄の剣で充分である。スラヴァーは対人間用の兵器としてはあまりに威力が高すぎるのである。
今もまだ、スラヴァーの生産は続いている。できれば、こんな恐ろしい武器を使ってほしくはない、というのは、人類の願いだろう。
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