第13話 二人の決意

 レニの手枷を外したレオは、扉の鍵も開けると、扉を開けたところにいた警備の兵士を殴りつけて気絶させた。

 あまりに素早い行動だったため、兵士は声を上げることもできずに、汚れた床の上で伸びている。


「スラヴァーは使えるかい?」

「ええ。でもあなたは?」

「まあ、もう一本くらいどこかにあるだろ」

 兵士の腰に提げていたスラヴァーを受け取ったレニは、すぐに各部をチェックする。エネルギーも十分入っていて、見たところ動作も異常はなさそうである。

「手慣れてるな」

 レオはその手つきを見て感心したように「誰かに教わったのかい?」と聞く。

「パパの友人っていう人から教わったの……デュナミスの戦い方、スラヴァーの扱い方……」

「へぇ……それは興味深いね」

 彼はすっと立ち上がる。

「聞きたいことはいろいろあるが……まずはここから出ることだ」

「そうね」

「これであと砦にいるデュナミスは四人だ」

「それは正確なの?」

 レニは思わず口にした。捕まっていたはずの男がなぜ外のことを知っているのだろう、という単純な疑問であった。

「足音や話し声を観察したのさ。なにせ、牢の中では時間だけはたっぷりあったからね」

 彼は簡単に言ってのけるが、いくらデュナミスであろうと相当な集中力と記憶力が必要になる。


「さ、行くぞ!」

 レオは走り出すと、下の階へ向かっていく。しかも、駆け下りるわけではなく、飛び降りるようにして駆け抜けていった。十数段おきに足を着くとすぐに階段を蹴って降りていき、あっという間に彼の姿が見えなくなった。

 慌ててレニも追いかけるが、下の階に着いたときにはレオの足下には二人の兵士が倒れていた。

 今倒したばかりの兵士から奪ったスラヴァーを握るレオは、ドアに手を掛ける。

「レニ、君のメックは動かせるのか?」

「左腕が機能低下してるけど、動かすくらいなら」

「よし、じゃあこのドアを開けたら、急いでメックに乗るんだ。たぶんもう一騎レディストのメックがあるはずだから、起動する前に破壊してくれ。大破させなくても、片足だけでも破壊できればそれでいい」

「あなたはどうするの?」

「俺は残りのデュナミスを相手する。ある程度暴れたら、君のメックと合流して脱出するんだ」


 彼は二対一の戦いになるかもしれない役を引き受けようとしている。それはあまりに無謀である。だが、レオの表情は命を捨てる者の顔ではなかった。

 二人は目を見合わせた。

 互いの決意を読みとると、レオは扉を開け、レニはメックへ向けて全力で走り出した。

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