第10話 超絶の冬の荘厳美麗。

 超絶の冬の荘厳美麗そうごんびれい

 動いた!

 冬を纏まとう女が一歩下がる。


 刹那せつな。

 “ミケ” は、必殺の猫爪を光らせながら上空から滑空態勢に入った。

  “白鴉の姫 ハクア”は “ゆうや”を後ろに突き飛ばし、“ゆうや” が居た位置に移り神器フラガラッハを一閃する。

 おっさんは躊躇ちゅうちょなくスーパ89式カービン銃の引き金を引く。

 自衛隊が躊躇なく引き金を!

 守るべきものが決然とした男の横顔。


 超絶の冬美は刹那の間に反応した必殺の攻撃が視野にある筈なのに一歩下がった位置で跪いて首を垂れる。

「私、北の白夜組みの“雪姫” と申します。お目通りに参りました。」


 その間にも三人から放たれた必殺の攻撃は止まらない!

 迫り来る渾身の一撃はもう止まらない。


 “雪姫” が口上を述べている間、白装束の女が守りに入った。


 おっさんのスーパ89式カービン銃の高速弾丸が白装束の女の吐息で凍らされて落下する。

 “ハクア” の神器フラガラッハの一閃は精密に“雪姫” を両断するコースを疾る。

 〈スーッ〉とその剣撃の射線に白装束の女が割って入る。

 一閃を白装束の女が受けた瞬間、〈シュパーッ〉と白い霧氷となり剣撃、白装束の女共に消滅する。


 最後の“ミケ” の一撃は上空、これは防げない。

 無防備で隙だらけの“雪姫” の脳天に直撃。


「痛〜い」

 “ミケ” ちゃんの声が“おっさん” の遥か後ろから聞こえる。


「ごめんね、“ミケ” ちゃん」と“小豆小僧” が謝る。


 〈パンパン〉と手を叩きながら、

「はいそれまでじゃて」

 “ぬらりひょん爺” が声を張る。

「なかなかの緊迫の度合いじゃったの〜」

「“雪姫” は見ても分かる様に雪女じゃ。見た目の先入観で冷徹に見られがちじゃが律儀でいつも心根に凛とした風を吹かせている心優しき良き姫じゃて」

「難点は行動が俊敏過ぎて周りの理解が追いつかない時がある事くらいじゃ」

「今もただの挨拶が戦闘になろうとしたようにほんの些細な難点じゃな」

「ほっほほ」


 これが些細なものか!

 この屋敷が吹き飛ぶ、激烈な死闘が始まろうとした事が些細…。


 どうも“ぬらりひょん爺” は事が混乱する事を喜ぶ癖があるのでは無いか。

 妖の中でも断トツ一番怪しい“ぬらりひょん爺”。

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