第6話 豆腐小僧。

「坊やたち、覗いていないでこちらにおいでよ!」


 肩口がぽわんと膨らむ西洋貴婦人のドレスにストライプ柄のチューリップスカートに白いハーフタイツ。

 腰にはちょっとアンマッチな紅い大きな袋をぶら下げ、襷掛けに革の鞄。

 シルクの長い手袋に肩口に乗せた小さな日傘を〈クルクル〉と回している。

 “エミリア” が声を掛ける。


「見つかっちゃったね“みなみ” ちゃん。」

 楠木の陰から現れたのは、“ゆうや”、“みなみ”、“小豆小僧”、そして新参の小僧さんがぞろぞろと出てきた。


「御免なさい、日本語の歌が聞こえたからつい覗きにきちゃった」


「ああ〜麦と兵隊ね、日本を守ってくれた先輩方の歌だよ」

「聞こえてたかハハハ」


「そういう小僧も日本人だなぁ」

「“ゆうや” と言うんだ!六年一組だよ」


「おじさん二人は敷島と斎藤、それと木の枝に座って足をぶらぶらさせてるのが“エミリア” という妙なお嬢ちゃんだ」


 まあ〜こっちに来て話そう。

 ストンと“エミリア” も木の枝から降りてくる。

 下りるついでに、

「あと二人居るでしょ、木の上から降りてきなさいよ!」


「なーんだ知ってたの」

 “ミケ” ちゃんと“ハクア” が下りてくる。


「“御君様” すみません。心配で付いてきておりました。」

 “ハクア” が神妙に“ゆうや” に謝る。

「“ミケ” ちゃんも謝りなさい!」


「ごめんだニャー」


「謝らなくていいよ、いつも心配してくれてありがとうね」

 “ゆうや” が微笑む。

 “ハクア” の献進に感謝と、いつもの“ミケ” ちゃんらしさが戻ってきたことを嬉しく思う。


「“ゆうや” 君に気の良い仲間という感じか」

「まーこちらに来て馳走を食べながら話そうぜ!」

 と“敷島” 三尉が手招きする。


 場が大所帯となって来た。

 “敷島” 三尉、“斎藤” 隊員、“エミリア” に、

 “ゆうや”、“みなみ” 、“小豆小僧” 、新参の小僧、“白鴉” 、“ミケ” 。


 “斎藤” 隊員が、「おや〜君の手に大事そうに持ってるのは豆腐かい!」と新参者の小僧に声を掛ける。


「はい!お豆腐です。」


「へー」


「一丁、どうぞ!」

 と新参の小僧さんが勧める。


 どれどれと“斎藤” 小ザルごと受け取ると〈パクリ〉と食べた。


「うめーこりゃ大豆を多く使って良い豆腐だよ」


 そうか、彼は豆腐小僧だ!


 “ゆうや” は思い出した。

 峠道とか人気のない場所で旅人に豆腐を如何ですかと勧める妖怪。

 でも豆腐を食べた旅人は死んでしまうのではなかっかたか⁈

 “斎藤” 隊員はケロリとしている。


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