第9話 LINEでの脅迫

 その日の夜。

 俺は家にある自分の部屋にて、ベッドで横になり、三崎とLINEをしていた。

 話の内容はもちろんというべきか、白瀬とのことで。

『で』

『あの後はどうなったわけ?』

『まあ、その』

『一緒に帰った』

『はっ?』

『今から殺しに行っていい?』

『唐突過ぎるだろ?』

『あり得ないから』

『だいたい』

『何で志穂と一緒に帰ることになるわけ?』

 三崎の反応は苛立ちが混じっているようだった。

 まあ、無理もないかもしれない。

 俺はスマホを打ち続ける。

『体調が悪そうなクラスメイトと』

『そいつを気遣って、一緒に帰ってあげる優しいクラス委員長』

『といった感じだ』

『意味不明』

『そういう風に白瀬が言ってた』

 俺が答えると、三崎からの返信はしばらくなかった。

 だが、やがて、メッセージが届く。

『まあ、志穂なりの気遣いってことね』

『気遣い?』

『異性として意識しないためのね』

『いや、俺は別に』

『成瀬じゃないわよ』

『じゃあ、誰だ?』

『志穂自身のために決まってるでしょ?』

『白瀬自身?』

『つまりは』

『そういうことを成瀬に言いつつも、自分にも言い聞かせてるってわけ』

『成瀬のことをその場で異性として意識しないようにってことを』

『じゃないと、あんた』

『一緒に帰るの、その場で断るでしょ?』

 三崎の言葉は容易に受け止めることができず、俺は反応に困ってしまう。

 一方で、三崎は察したのか、追加でメッセージを送ってくる。

『だから、志穂はそれほど、成瀬のことが好きってことよ』

『こういうこと、あたしから言わせるなんて、万死に値するわね』

『だから』

『改めて言うけど』

『今から殺しに行っていい?』

 三崎の連続で送ってきたコメントに、俺は『それは勘弁してくれ』としか返事をできない。

 対して、三崎は待っていたかのように。

『冗談だから』

『けど、成瀬が志穂とくっつくようなことがあれば』

『その時は問答無用で殺すから』

 といったメッセージを続ける。

 俺はそれらを見つつ。

『言われなくても、わかってるけどな』

 とコメントを打った。

 俺はスマホを枕近くに置くと、仰向けになり、部屋の天井を眺める。

「白瀬か……」

 俺は口にしつつ、幼稚園から高校一年に至るまで、白瀬の記憶がないか、探る。

 だが、結果は何もない。友達がおらず、ぼっちを続ける俺としては、白瀬の存在は眼中になかったのかもしれない。

「まあ、しょうがないよな」

 俺は自分に言い聞かせると、スマホを再び手に取り、ソシャゲに興じ始めた。

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