番外編 「友達DAYS」2


 正解は一年ではない、十三年だ。


 まあ、正確に言えば十三ではなく三年くらいだが出会って何年か? と聞かれたら正解は十三年で間違いはない。


「……っはぁ」


 口に付けて味見をするがやはり不味い。のど越しの悪いキャラメルバナナタピオカジュースに俺は顔を顰めた。


「なに、それまずいの?」


 不服な表情でこちらを覗く西島を俺は見ずに俯いた。


「俺としてはまずいなこれ、なんでこんなに人気なのかが分からないよ」


「現役高校生じゃないわね」


「高校生だよ、ただ現役JKじゃないだけだね」


「別に、これはJKだけの飲み物じゃないと思うけど?」


「そうなのか? 俺にはこんなに高くて、不味い——いかにも非効率的な飲み物はないと思うがな」


「時代遅れ~~」


 彼女の気持ちも籠らない雑な返しを無視して、はぁ……とため息を漏らす。手首を優しく動かして、そのカップを回すとふわりふわりと浮いていくタピオカが目に映る度、俺はあの頃を思い出した。



—————☆


「ふぅ~~ん、それでさ~~、ゆずくんだっけ? あたらしい子~~」


 小さきあの頃、まだ純粋な時の前沢誠也は幼稚園の先生の膝の上に座って思ったことを口に出した。


「そうだね~~、もうすぐお友達が増えるんだよ? よかったねぇ」


「うん、おれめっちゃ、たのしみっ!」


「じゃあ、ちゃんと友達になれるように~~自己紹介、してみよっか?」


 俺はニコッとはにかんでいた。

 我ながら子供の破壊力は時として半端ない。


「じこしょうかい?」


 極めつけに、幼稚園生なら俺もさすがに馬鹿である。


「そうだよ、じこしょうかい! ひまわり組に来たときもやらなかった~~?」


「ううぅん、そんなのやったっけ?」


 さらには、記憶力も皆無。

 ここまで来たら、老人のボケも笑えないほどだな。


「おぼえてない?」


「うん、そんなのやってないよ」


「ははっ、まあそれでもいいや」


「いいの……? じこしょうかい!」


 言葉の意味も知らずに俺は笑って言っていた。どうやらゴロが良くてかっこいいと感じたのだろう。我ながら本当に馬鹿である。


「んん~~、じゃあやってみる?」


「うん、やってみる!」


 可愛さ満点の笑顔に先生もまた、にっこりと笑った。



 そして、数時間後。

 帰る時間が近づいてきているなか、彼は訪れた。


「え、えっとぉ……そ、あ、うんと……」


 俺たちの前に立ち、もじもじと立っているのは幼き頃の洞野柚人ほらのゆずとだった。この頃の柚人はかなりのコミュ障で……というか、この頃はみんなコミュ障かもしれないが彼はその中でもひときわ目立っていた。


 最初の挨拶すらままならない。結局、自分で自分の名前は言えずに代わりに先生がフォローしながらニコッと笑って言ったのだった。



<あとがき>

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