第125話:なぜかめちゃくちゃ感謝されたんだが①
確かにこの城のメイドさんは美人ばかり。
普通の冒険者なら目を奪われてしまうかもしれない。
だが、俺には彼女たちよりもさらに魅力的な三人がいる。当然浮気などするはずがない。
というか、断じて浮気はしていないといはいえ、重婚を許すのに浮気はダメなのはどうしてなんだ?
何が違うのだろうか……。
内心ではそんなことを思いながらも、全力で誤解を解こうと試みる。
「ま、待て誤解だ! 話せばわかる!」
「そうですか。ではゆっくり事情を聞きましょう」
必死の弁解虚しくまったく信用されていないようだった。
とはいえ、実際何も変なことはしていない。正直に話せばわかってもらえるだろう。
「実は、アリスの部屋にいたんだ」
アリスの名前を出すと、アレリアとミーシャは驚いていた。
「アリスって、アリス姉さんのことですか……?」
「あのアリス姉さんが誰かを部屋に入れるなんてありえな……いや、ユーキ君ならなくはないか」
勝手に驚き、勝手に納得されてしまう。
話が早いのは良いことだが、この俺への謎の信頼はなんなんだ?
「二人も部屋に入ったことないのか?」
「う〜ん、あるにはあるんですけど……」
「その時ちょっと、気まずくなっちゃって……ね」
アレリアとミーシャは同時に顔を見合わせる。
何か訳ありのようだ。これが不仲の原因なのかもしれない。
「何かあったのか?」
俺が尋ねると、渋々といった様子でアレリアが話し始めた。
「ユーキはアリスが部屋で何をしているか知っているんですよね?」
「俺が知ってるのは漫画を描いてるってことくらいだけど」
「そうです。その漫画というものなんですけど、昔読ませてもらったんです」
まだ全ての話を聞き終えてはいないが、先の展開が見えてしまった気がする……。
「アリス姉さんには正直な感想を聞かせてほしいと言われたので、主人公が現実離れしすぎてリアリティがないって答えたんです。良いところは褒めたりもしたんですけど……それから拗ねちゃって……」
アレリアとミーシャに悪気がなかったことはわかるが、悪気がないだけに堪えるという部分もあっただろう。
「なるほど。まあ、そのなんだ。どうすれば良かったんだろうな」
創作物を面白いと思うかどうかは感性によるものが大きい。
まったく同じ作品でも人によって評価が分かれることはよくあることなのだ。
実際、俺は二人とは逆で現実離れした舞台設定やキャラクター造形、ストーリー展開に魅力を感じていた。
傷つけまいと嘘をついて褒めるのも違うだろうし、俺も当事者だったらどうすれば良いのかわからない。
「す、拗ねてないもん……」
「ん……?」
アリスの声が背後から聞こえた気がした。
後ろを振り向くと、柱で身を隠し、顔だけにゅっと出したアリスの姿が見えた。
部屋から出られないと言っていたが、どういうわけか俺のあとをついてきていたらしい。
「ア、アリス姉さんが部屋の外に……!?」
「何年ぶりでしょうか……!」
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