詩人、怯える


詩人がいた

詩人がね

そしてそいつは

おれの嫌いな詩人だった

嫌な奴に会っちまったな

おれはそう思った

だがよく考えてみたら

自分の好きな詩人など何処にも存在しないので

詩人に出会った時点で

もう最悪な気分になるのは目に見えていた

おれは瞬間接着剤でその詩人の肛門を塞ぐことにした

何しろ詩人は所構わず脱糞行為に及ぶ最低の人種だからだ

無理やりズボンに手をかけ鬼のような形相で剥ぎ取った

尻まるだしでバタバタとする詩人

(ちょっと待てよ)

瞬間接着剤が無いぞ

鞄の中も机の中も探したけれど見つからないのに

アラビックヤマトがあった

おいおい

アラビックヤマト如きでは人類の肛門を塞ぐことは出来ないだろう

おれはがっかりした

だがおれは見くびっていたのだアラビックヤマトの真の実力を

アラビックヤマトが喋り始めた

「ぼくをそのまま差し込めばいいよ」

なんだってええ?

おれは素っ頓狂な声をあげた

まさかのりが喋り出すなんて誰も思わないだろう

おれはアラビックヤマトを持ち上げた

そして色々な方向から眺めた

「幻聴だろ?」

自分自身にそう言い聞かせた

こんなものが喋るわけがない

常識的に考えて

「常識が、この世界をすっぽり包み込んでるの!」

おれは怒った

だがその声は若干、上ずっていた


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