ウィオラの旅日記 ～魔法剣士ウィオラは旅を通じて仲間と巡り合い、紆余曲折の冒険を経て成長する～

第二節：魔業の騎士

◆　視点は切り替わる『ウィーゼル』視点

　俺は考えた、村で高い所は二つしかねぇ。

　村長の家の屋根の上か物見櫓か酒場に二階以上が有ればそこでも構わない訳かそして酒場の屋根を見上げた、術士と思われる黒いローブの奴が酒場の二階に屋根の上にいた。

　さてどうやって上るかね、建物の横のトイレらしき出っ張りの横に消火用と思われる水樽が階段状に積み上げてあるのを発見した。

　あれなら行けると思い、こちらを見て無いのを確認すると横手に回り込んだ。

　そして他に何か居ないか気配を感じることにした、気配は屋根の上の一つ以外は外には村人も出ていない。

　スルスルとという訳にはいかなかったが何とか上まで這（は）い上がるこちらとら体力には自信があるが盗賊じゃぁねーんだ。

　二階に這い登る音はさせない様になるべく気は使うが厳しかった、ギリギリ何とか二階の屋根に上った。

　目を凝らすと確かにローブ姿の男らしき者が居た、手加減無用と思い一足飛びに踏み込んでパワーヒットを後ろから見舞う。

　その瞬間、そいつが影のように歪んで消えた空振りしたのだ。

　気配を探るべく、感覚を研ぎ澄ます。

　直後そいつが真後ろに現れ背中を突こうとした時には、しゃがみ落としと足払いを実施していた。

　そいつが横転した手ごたえが有ったので、そのまま殴りにかかる。

　パワーヒットを使ったが、ギリギリでそいつに掴（つか）まれてしまうそこを軸にして踵（かかと）で蹴りまわしを掛けた。

　流石にこれには反応できなかった様でそいつの側頭部に踵が命中する面（めん）と思しき白い物体が飛んだ。

　序（ついで）にもう一度、軽業の要領で不意討を実行した。

　起き上がりそうになるそいつの顔面に、ニードロップがこれもパワーヒットであった炸裂した瞬間そいつが顔を抑えのたうち回る凡（およ）そ人間の声で無い声を発しながら。

“うがぉぇっぇっぇぇぉおあいぷいあふぃうおあげういふぃおんぁえぇぇぇー”

　流石に背中に冷や汗がダラダラ流れ出した、人外の者であったようだった。

　堪（たま）らず、ホーリーウェポンを両手と両膝と両肘に拡大掛けする。

“これでも喰らえっ！！ホーリーフラッシュ！！”

　といいながら若干後退する。

“ごいこふぃおうさえ？”

　そいつが何語かを喋（しゃべ）る、何語か分からんといって敢（あ）えて踏み込んでパワーヒットをボディーに見舞った。

　そのままラッシュに切り替え、全ての正拳突きにパワーヒットを載せそいつの体に穴でも穿（うが）つかのように一点集中させた。

　その直後空間が軋むと様な

“ギシッ”

という音がしたが、構わず全力で叩き込んだ。

　何か陶器製の物が割れるような音が、響きわたった。

“ガチャンバリンッ！！！”

　直後、またもやそいつの苦しんでいるのかよく解らない声が下まで響きわたった。

“ぐろぅぁぁぁぁおいじゃえおぴちょぴひぽういはそふぉうふッ！！”

◆　視点は戻る私こと『ウィオラ』視点

　流石に私も気が付いた。

　さっきまでと、違う動きになったのである。

　だが、振りむくわけにもいかなかった。

　ショックバレットの詠唱を一旦取りやめ、刀を一旦納刀し居合の構えを取る。

　目の前の重装騎士鎧を纏（まと）い黒馬にのった物凄い威圧感のある奴が初めてその場所から離れ、こちらに向かって突撃を敢行（かんこう）してきたのだ。

　瞬時に狙いを変更し、斬り抜けることにする。

　馬の足四本に対し連続攻撃を行い、それぞれラッシュとパワーヒットを乗せて打ち込み右側九号車側に斬り抜けたのである。

“ズシャー”

　と重いものが滑っていく音がしたが、激突させるわけにはいかないのでチャージグラビティープラン後方！！　といいながら隊商の車列をギリギリ範囲から外してそいつに掛けた。

　今度は私が見てる範囲で宣言したので、そいつが私よりも後ろでこれもギリッギリ馬車には当たらずにスッ飛んでいった。

　途中にあった魔法陣を、そいつの転がる鎧や剣で傷つけながら。

　直後私はハヤテを掛け、馬車を飛び越し跳躍する。

　そいつは転がっていたが、体が消えかかっていてコアらしき赤い壺（つぼ）？　が見えていたそれに向かって持てるすべての攻撃を叩き込んだ。

　着地するのも面倒だったので腰だめに刀を構え当たりに行ったというのが正解かも知れない。

　赤い壺に刀が飲み込まれそうになる着地にすんぜんで切り替え、奥の手を発動させる。

「オーバーロード！！！」次の瞬間、何か嫌な手応えと感触が有ったので再跳躍をした。

　ついでに青白いオーラを纏う刀を引っこ抜き、馬車の反対側へ滑り込んだ。

　その直後であった、かなり眩（まぶ）しい閃光が煌（きら）めき爆縮（ばくしゅく）を起こしたのである。

“カッ！！　ズゴォォォォォォォォン！！！”

　瞬間に離れて無ければ閃光で目が眩（くら）んだところを引きずり込まれていたかも知れなかったのである。

　馬車の側へ滑り込んだため、私には閃光くらいしか見えて無かった。

　背後からの閃光のみで済んだのである。

　最もこの閃光は屋根の上にも届いていた様ではあったが、最早（もはや）ヒト型をしていない悪魔のような奴を叩きのめすのに必死で『ウィーゼル』は閃光を見て無かったのである。

第二章　第三節へ