第九節:野盗急襲

 皆同意して頷く「確かに」とそこへ『ウィーゼル』が追加した「野生動物やモンスターの出現にも対処せねばならんしな。遺跡の近辺はモンスターが特に多いからな。確か別の商会がついこの前センシウズラの近くでキマイラに襲われたらしいからな」と『ウィーゼル』も野戦の準備を始めた。


「確かキマイラって一種毎に違いませんでしたっけ?」と私が聞いた。


「そいつ等は荷物を捨てて命辛々いのちからがら逃げ出したってこともあって、情報だけは出てたぜ、確かメインの頭が二つで蛇の頭が後ろに生えてる奴だったかな」、「強い方のキマイラですね。倒されたんですか?」と自身の資料を見ながら答える『セリア』、「討伐情報しか見て無いな」と『ウィーゼル』がそれしか見て無いんだというようにいった。


「てことは最悪そいつともブツカルのか」と用意が済んだのか頭を抱える『ゲルハート』、「このルートとペース配分で行けば休憩中に、最も出会う確率が増しますね」と『セリア』がいった。


「まぁ先に俺たちで起きてるから、『ウィオラ』と『ウィーゼル』は休んでいてくれ。六時間交代にしよう。ちょうど時間も数えやすいしな。二十二時だ」と『ゲルハート』がいった。


「緊急時には起こしますからそのつもりでいてくださいね」と『セリア』がいった。


「判った遠慮なく起こしてくれ」と『ウィーゼル』、「私も遠慮なく起こしてもらって良いですからね」と私がいった。


 何かが起こる予感はしたがどこで何が起こるかまでは判らないが、そう思って先に休ませてもらう今は静かに休めた。


 それから六時間後、起こされるまで軽い眠りに入った。


 朝の四時、肩を叩かれたので起きた「交代の時間ですよ」『セリア』だった、隣で『ゲルハート』が『ウィーゼル』を起こしていた。


「特に変わったことはありませんでした」と『セリア』がいった。


「朝の十時交替ですね」と私がいった。


「走り始めてからですか四時間目ですかね。六時には走り出すので」と『セリア』がいった。



「まぁしかし昼は寝にくくなるぞ」と『ウィーゼル』がいう「昼は軽い休憩でもいいですよ」と私が伸びをしながら、馬車の後方をチラリと覗き円陣を組んでる六号車の御者台を見た。


 御者も、寝るスペースは確保してあるらしかった。


 異界が近くにあると厄介なので先にその存在を感知することにした、魔法で感知できるのである。


 エグジスタンスの構文を唱える、水界と魂魄界が近くにあるだけで他に異界の存在は無かった。


「今のは?」と『ウィーゼル』が続けた「聞いたことの無い呪文だったが?」、「余り知られてない呪文ですよ、私の師匠はお勧めだとはいっていましたが。異界魔法という、魔法です。異界が近くにあると、厄介なので先に調べたんです、幸いなことに水界と魂魄界以外の異界は近くにはありませんでした」と私がその問いに答えた。



「異界が有ると不味いのか?」と『ウィーゼル』も伸びをしながらがいう、「異界の種類にもよるんですが魔界とか完全に異界とかだと異なりますね。悪魔や魔物が現れた跡や現れる前の兆候ちょうこうですから。不味まずいです、そういう意味では」と私がいって続けた。


「モノにも寄りますが、大分対応は変わるでしょう。悪魔が出た後だとかも分かりますしね」、「凄いな、そんなことまで分かるのか」と『ウィーゼル』が正直に感心しているところだった。


 がしかし私が不意にバスタードソードを静かに抜き始めた、何者かの複数の気配を察知したからでもあったが静かにいった。


「何者かが、複数人おいでの様ですね」と時間はまだ朝の五時である、そいつ等は濃密のうみつな殺気をまとっていた。


 『ウィーゼル』もその殺気に気が付いたようだった。



 お互いに顔を見合わせ二人を急ぎ起こすことにした、私が『セリア』を静かに起こす唇の前に人差し指を置いて静かにの意味である、同様に『ウィーゼル』も同じ方法で『ゲルハート』を起こした。


「濃密な殺気がある」と『ウィーゼル』も静かにいった、幌馬車にはランタンはあったが灯は付いけていなかった。


 それに幸いに夜目は皆持っていたので暗い中でも活動できたのである。


 バスターソードに魔導剣闘技の初動のマジックソードエクストラクションを静かに載せる、剣が少しだけ淡く輝いた、次いでメンタルディフェンスも静かにかけて置く。


『ゲルハート』は漆黒のグレートソードを抜いたところだった、エンチャントが二人の得物『ゲルハート』は漆黒のグレートソードに、『ウィーゼル』は拳にかかった。



 現在の陣容は眠っていた二人が荷物側にそして眠っていなかった二人が後方の出口側に居た私は後方に向かって右側に、ウィーゼルは後方に向かって左側に居た、真中に居るようなドジは踏まない、そして逆に月明りのおかげで、相手の行動が手に取るよう判る。


 二人が同時に後ろから、幌馬車に侵入をくわだてようとしていた。


 野盗と思われる者の手が、ちょうどかかった。


 革手袋に短剣間違いなく野盗だった、もう一人の得物はショートソードと思われた。


 もう一人も静かに上がってきており突入準備をしている様だった、寝込みを襲う計画らしかった。


 高さはもう同じになっている。


『ウィーゼル』が頷いた『私』も頷いた、『ウィーゼル』が瞬間的に空けようとしている奴の首をまんで引きずり込んだ。


 同時に私がその後ろの奴の位置を正確につかんで居たので、気配で丸わかりなんだよてめーらはといった感じでバスタードソードで強襲を行った。


 一人は後ろの荷台の上で、声をあげようとしたため問答無用で首をえぐった。


 手ごたえは確かにありそいつがうずくまる所までは判った、のどを抉ったのだ。


 声を出す以前の問題で、声帯せいたいが無くなっているはずであった。


 しかも、急所きゅうしょである。


 これで起き上がったらしかばね認定しなくてはならない、その蹲ったもう一人も馬車の中に私が引き込んだがすでに絶命していた。



 人質ではなく情報を聞き出すには一人いれば十分なのである、すでに後ろでは静かな拷問ごうもんと静かな尋問じんもんが同時に行われていた。


 その間に、私は呪文を静かに唱え。


 レイダーの範囲拡大版を展開していた。


 ついでにセンサーの時間延長版をかけていた。


 これで周囲に何人、どれくらいのサイズの者が居るか分かるのである。



 レイダーの方は比較的広範囲にかけたため、どれくらいの人数が居るのが分かった。


 正確には十五人、先頭車に五人が集っていて、最後尾の九号車にも五人が集っていた五号車にも三人ほど来ていた。


 『ウィーゼル』が静かに少しだけ垂幕を開け頭を出さずに周囲を確認していた、“垂幕を開ける”それが合図だったらしい。



 残りの三人が、一気に五号幌馬車の後部めがけて殺到したのである。


 一人目は『ウィーゼル』が放った、問答無用のパワーヒットを顔面にもらって、もれなく五メートルばかり後方に吹き飛んで六号車の幌馬車に命中したところであった。


 そして左右からも、上がってくるのが分かった。


 二人の頭が見えたところでその顔面に向かってショックバレットを二発同時に、瞬間に叩き込んだ。


 直撃であった様で顔がへこみ死亡し、ずり落ちた様であった。

 引きずり込んだ奴から武器をいで、外に向かって蹴り落した。



 転がり落ちていきそこそこの



“ドシャッ”



 という音が響いた。



「先頭と最後尾に五人ずつ、計十人が居ます近くにはそれだけ。でも今の音で二人づつこちらに来ます」と私が静かにいった。


 すると「首領は魔導士の様です。近くには居ないでしょう」と『セリア』が静かにいった。



第一章 第十節へ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る