絶望した化け物は危険区域に住み着きます
不知火雫月
1話 復讐
「幼なじみは殺した」
森の奥、村から一キロも離れた場所で親友だった男が目の前でニヤニヤしながら僕、レンを見下ろしそう言った。
「なん…で…」
「ほとんど喋らないくせに今は声出すんだな。何でってか?あいつがお前しか見ていなかったんだよ!何度も告白してるのに断るなんてふざけやがって!だから殺したんだよ!何時間も犯した後にな」
「ふざ…ける…な」
レンは地面から手を放しフラフラしながら立ち上がり睨み付ける。
親友だった男はまだニヤニヤしている。
「犯したはずなのにあいつは俺を見ようなんかせずお前の名前を何度も何度も何度も何度も何度も何度も、泣きながら言っていたよ。その時の顔はたまらなかったなぁ」
その時のことを思い出したのか声を出して笑い始める。
それを見たレンの体の中で何かが切れる音がした。
「すべてに無関心だったお前が怒ったか。怒ったところで何ができる?力がなければただの無能だ!お前なんかに俺様に勝つことなんてできやしねぇんだよ!」
男はいつでもカウンター出来るように構えながらそう言う。
そう、この男に今まで一度も勝ったことがない。今までは。
レンは全身から溢れようとする何か分からない力を押さえ込んでいた。生まれた時から、親から捨てられた時からずっと。
だがそれも今日で終わりだ。幼なじみに怖がられないようにする必要ももうない。
体から力を抜くと押さえ込んでいた力を解放された。すると多くの知識が流れ込み、森がざわめき出す。
まるで
「な、何だよその力は!?お前は俺より弱いんじゃ無かったのかよ!」
男は構えを解かずに後ずさっていく。
「押さえて…いた…それだけ」
自分を中心に様々力が止まらずに流れ込む。底の見えない奈落のように。
「ふざけるなあぁぁ!闘技『瞬拳』!」
痺れを切らしたのかレベル1の闘技『瞬拳』を使い殴りかかる。完全に殺す気のようだ。
遅い。スローで動いてるように見える。
レンは紙一重で避け、体を流れに任せて動かし、男の顔をルキの拳が襲う。
「何でお前の拳が当たるんだよ!?それに今のはお前が使えるはずがない闘技『瞬拳』だ!ふざけるなあぁぁぁぁぁぁ!」
レンはただ、鼻をおさえながら叫んでいる男の真似をした。それだけしかしていない。それもまったく
男は『瞬拳』を連続で使う。魔力が底に尽きるまで使い続けた。
レンはそれをすべてに紙一重で避けていく。
魔力の限界がきたのか、男の拳から魔力が消える。
「ま、まってくれ!俺を殺しても幼なじみは帰ってこねぇ!見逃してくれねぇか!?」
殺そうとしてきた男が命乞いをしてくる。
それを覚めた目で見た後、その男と同じ動きで殴る。
攻撃を止めると男は後ろに倒れる。よく見るとすでに死んでいた。
「復讐、お疲れ様です」
突然背後から声が聞こえ、振り向くと浮かんでいる女の人がいた。
「誰?」
「話しはあとです。今から神界につれていきます。『転移』」
転移される瞬間に閉じていた目を開けると真っ白な空間に転移していて、女の人の近くには幼なじみ、ミオがいた。
「ミオ?」
「ミオだよ、ありがとう。あいつを殺してくれて」
レンに近づき抱きしめる。ミオの温もりを感じた途端に涙が溢れてくる。二度と会えないと思っていたはずのミオが目の前にいるのだ。
今まで一度も泣いたことのないレンが泣いたことに驚いたミオが優しく「大丈夫、大丈夫」と言いながら頭を撫でる。
「そのまま聞いてもらえるといいのですがミオさんは死にました。ですがもう会えないわけではありません」
女の人の言葉にレンはミオから一度離れ、涙を拭く。
「ですが今すぐに会えるわけではなく、一度ミオさんには違う世界に転生してもらいます。その世界で16歳になったらこの世界に転移、召喚します。転生先の時間はこの世界の時間よりも早く、向こうの16年はここの16日です。それまでレンさんには生き延びてもらいたいのです。レンさんは村から追い出されるはずですから出来ればアルト王国の近くの森にいてください」
「わかった」
レンはすぐに頷きミオをもう一度抱きしめる。数分間抱きしめた後ミオは転生していった。
「レンさん、あの戦闘であなたは覚醒しました。知っているでしょうがあなたは混血種と言われている種族です。しかしこの神界では覚醒した混血種はこう呼ばれています。【神種】と」
「神種は混血種のみがなれる種族です。今のあなたはステータスを見ればわかりますがすでに神獣クラスでないと太刀打ちできなくなっています」
「そこであなたには特別なスキルを与えます。うまく使ってください。ではあなたを元の世界に戻します。言い忘れていましたが私の名はミラクリスと言います」
そう言い女の人、女神はレンを元の世界に転移させた。
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