第3話
いやぁ……小説家になろうの方で性描写が引っかかってしまいました( ̄▽ ̄;)
おかしいな、前回カクヨムで引っかかったのを教訓に抑えたはずなんですが、やはり小説家になろうは規制が厳しいです。とはいえ、運営さんにご迷惑をおかけしないようにしないと……。
ちなみにその引っかかった該当部分に関してですが、現在最新話まで投稿しているアルファポリスとノベルバの方は特に警告も受けていないので修正しておらず、こちらに投稿するのも、その修正していないやつ(要するにエロかった方)になります。
ただし、今後の性描写に関しては、一々差分を用意するのも面倒なので、もしかしたらなろうに合わせて控えめになるかもしれないし……私がサービス精神に溢れて、なろう用とそれ以外の差分とで分けて書くかもしれません。そこはまぁ、どちらちなるかは分からないよってことで。
ご了承くださいな。
ちなみに引っかかったのはおそらく第二章の21、22話だと思います。そこら辺がお色気描写ってことですねはい。
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拓磨のことは心配だが、拓磨以外にも、樹は少し心配だ。美咲は大丈夫と言っていたが、それでも樹もまた親友ではある。確認したい衝動に駆られるのは仕方がないだろう。
「樹、俺だ。刀哉だ。少し話がしたいんだが」
『……今開ける』
今度は、扉が開かれた。声は弱々しかったが、それでも拓磨程の異常な気配は感じない。
実際扉を開けた樹は、少し顔色は悪かったものの、そこまでだ。
「刀哉、起きたんだな。体の方は平気か?」
「どうにかな。そっちは? 一応心配になって確認しに来たんだが」
会話をしながら、樹の部屋へと入る。声も特には問題なさそうで、一先ず俺は、心の中で安堵の息を漏らした。
明らかに弱ってはいるが、それは予想よりも抑えられている。
「……蒼太のことか」
「美咲から、皆結構弱ってるって聞いた。樹はまだ大丈夫そうと言ってたんだが、心配だったからな」
一人になって精神的に解決できる人間はいるが、そうでない人間もいる。人前では強気に振舞えても、振る舞う相手が居なければ途端にそれが瓦解する人間も、もちろんいる。
樹はそんなタイプではないが、万が一は常に付き物だ。それに、俺が直に見れば、例え樹が今強がったとしても、すぐに見抜ける。
「……平気だ。いや、万全じゃないんだが……少なくとも明日には元通りになるぐらいには」
「一応聞いておこう……まだ、やれるか?」
「やれる。この世界で生きるってのはそういうことだって、昨日わからせられたよ。今の俺には、それで十分だ。蒼太のことも、それ程仲良くはなかったし、言っちゃ悪いが……割り切ってる。薄情だとは思うがね」
多くは語らない。まだ不安定な部分はある。
けれど強く頷ける程度には、自身の精神に折り合いをつけているということだ……美咲が言っていた以上に、どうやら樹は強いらしい。
樹はもっと、精神的に未熟だと思っていた。いや、事実前までの樹ならそうだっただろう。
だが人間は、何がきっかけで強くなるか分からない。俺が蒼太の死を乗り越えたのと同じで、樹もまた、そうなのかもしれない。
「薄情でもないだろ。人付き合いによって悲しさに大小の差があるのは仕方ないしな。それに、悲しみ続けるのがいい事かと言われても分からん」
「そんなもんか……俺に聞くってことは、お前は平気なんだろうな」
「仇は取ったから、その違いだ」
所詮はそんなもの、自己満足でしかない。蒼太自身が願ったわけでもなく、倒して何かあった訳でもない。それでも俺がより早く決意できたのは、その一歩があったのは間違いない。
「……そういや、お前が俺たちを助けてくれたんだったな……遅れたが、ありがとう。お前が居なかったら、今頃俺達は……」
「たらればの悲観なんて意味無いし、気にすんな。というかそんなことしてる暇があるなら、俺に感謝しまくれ」
「あぁ、ホントにありがとうな。冗談なく、マジで心の底から感謝してる」
そうして、頭を下げる。親友同士の関係で深々と頭を下げられるのは色々と複雑だが、樹が最大限の感謝を示しているというのはわかる。
分かるけどもちろん頭を上げさせる。
「これは貸しにしとくから、後で返してくれよ」
「命を助けられた借りは、大きすぎるな……頑張って返すよ」
「そうしてくれ。そして借りを返してくれるまでは死ぬな。死ぬようなこともするな」
「そこに関してだけはお前が言うなって感じだけどな……肝に銘じとくよ」
確かに、勝算があったとは言えない状態で先に無茶をしたのは俺だ。そんな俺が死ぬようなことはするな、なんて言うんだから、棚上げにも過ぎる。
「とにかく、平気なようで安心した。お前がダメだと、これから先大変だからな」
「そりゃ高く買ってくれてありがたいね。刀哉は? 今日はどうするんだ? 話を聞いて終わりか?」
俺はそれだけ聞いて、部屋の外へ意識を向ける。それに気づいたのだろう、そんなことを樹が聞いてくるが、俺は僅かに考えて、「そうだな……」と紡ぐ。
慎二とは話したい。だが慎二は恐らく精神面では大丈夫だろうと踏んでいるので、後回しでも問題は無い。とすれば、確認したいことは現状───それも全体を把握することだ。
「この後は王様と話をして、それからだな」
他の貴族や大臣とは顔見知りではない。メイドはどこまで知らされているか不明。故に王様。
ようは、今後の話をするのだ。俺達はどうなるのか、これまで通りなのか、それとも違う対策をとるのか。そこを聞いて、こちらはこちらで今後の方針を練らなければならない。
もしかしたらこちらからも何か提案をしなければならないことだってあるだろう。
「……お前がやらなきゃいけないことか?」
「今の拓磨には難しいし、かといって待つのは時間を無駄にしてしまう。だったらやれることをやっとくのが普通だろ?」
「なら、俺も行く。万全じゃないのは確かだけど、それでもある程度は───」
「話をするなら、王様や王女を助けた、と認識されているはずの俺の方が都合がいい。それだけの事だ」
樹もやはり、俺が無理に労力を消費しようとしている風に感じたのだろう。そんな言葉をかけてくれるが、有難い申し出を俺は断る。
俺一人の方がスムーズに進む、というのは事実だ。樹は頭が良く、知識比べとなれば非常に頼りになるが、今は話を聞くことが目的。樹の力は必須ではないし、何より精神的不調は思っている以上に影響する。
「無理してる訳でもないから、お前は休んどけ」
「……大丈夫、なんだな?」
「美咲からも釘を刺されてる。それで十分だろ? 無理はしない」
例え拓磨や樹、俺のような人物でも、女友達からの叱責や注意は結構きく。特に美咲ともなれば。
多くは語らずとも、樹はそれでどうにか納得してくれたようだ。
俺が部屋から出ていくのを、最後までどこか心配そうにしながら見ていた。
◆◇◆
手間が省けた、といえばいいのか、偶然にも樹の部屋から出るのと、見慣れたメイドが視界に入るのはほぼ同時だった。
いつも俺の世話───気づきにくいが、服の替えや部屋の掃除など───をしてくれているメイドだが、その日は普段の無表情を貼り付けておらず、僅かにも感情を見せてくれた。
「トウヤ様、お目覚めになったのですね!」
「えぇ、まぁ」
「そうですか……あぁ、本当に何よりでございます」
違う。僅か、ではなかった。表情が笑顔になるほど、声音が弾むほど、喜びを見せてくれていた。
心当たりと言えば、あの時ガンツに襲われていた中に、このメイドがいた事だろうか。
あの無表情さは形を潜め、少なくとも今は素に見える。
「……失礼かと思いますが、いつもより感情豊かですね」
「申し訳ありません。ですが、トウヤ様も分かっておいでのはず。何せこの身を救って下さったのは、他ならぬ貴方様なのですから」
つまり、やはりそういうことだ。どうやら襲撃の件を経て、俺はある程度信頼される存在になってしまったらしい。
きっとそれは、目の前のメイドだけじゃない。あの時あそこにいたほぼ全員に言えるだろう。
まぁ、流石にほぼ初対面に近い大臣などにまでどう思われているかは知らないが。それでもこのメイドは、ある程度、それもメイドという立場での交流だけとはいえ、会話があったので、それからきているのかもしれない。
「貴方様が無事で、心底安堵しているのです。何よりトウヤ様は、私だけでなく、本来の主である陛下とお嬢様も共に救ってくださったのですから、好意を寄せて当然というもの……私は何か、間違ったことを言っているでしょうか?」
「……いえ、まぁ、おかしくないですし、凄く嬉しいです」
確かに、反論する部分はないが、それでも今まで必要最低限しか会話してこなかった相手にそんなことを言われれば、困惑するのも事実。もちろん状況は理解した。理解はしたが、それでもこう、慣れない感じがするのだ。
それに、相手は俺よりも歳上の、大人の女性。同年代ならともかく、そんな相手ともなれば、困惑するなという方が無理だろう。
好意、というのも些か助けただけにしては過剰に思えてしまうし。
とはいえ、目の前のメイドにそんなことを伝えても、同じようなことを言われるだけだと思うので、俺は素直に嬉しさだけを伝えておく。
そして、俺は矢継ぎ早に言葉を繋げた。
「その陛下と王女殿下が今どこにいるか分かりませんか? 少し用事があるんです」
「あ、私としたことが……その件について、実はお嬢様がトウヤ様をお呼びしているのです。もし目覚めていなかったらまた後でとの事でしたが……」
「なるほど、分かりました。今から向かいます」
「ありがとうございます。案内致しますね」
メイドは、そう言って微笑む。今までと違う挙動は、高校生の男子には非常に辛い。何せ相手は美人だ。そして恋愛やそういった面は知らないが、少なくない好意と信頼を、たった一度助けたことで俺に寄せてきている。
名前も知らないメイド。普段も、別に世間話などしたことは無かったし、特別な会話はしていない。
「トウヤ様は何か、勘違いをなさっているかもしれませんが」
「……?」
俺を先導しながら、いつになく優しい声音のメイドは、やはり無表情ではなく柔らかい微笑みをした横顔をこちらにみせ、紡ぐ。
「たった一度助けたぐらいで、という認識は間違いです。私からしてみれば、貴方様は生涯で一人できるかできないかの『命の恩人』で、現在では『ご主人様』で、そして私よりも幼き『子供』で……とてもお強い『勇者様』なのです。命を助けられて尊敬し、優しくしたくなるのも当然ではないでしょうか」
「……そういうもの、ですか」
「そういうものでございます」
俺には、それは分からない。けれどメイドがそう認識しているなら、それは真実なんだろう。
俺に当てはまるかどうかでは無い。メイドに当てはまるかどうかが重要だ。尊敬など、まだ子供の身である俺にはあまりに不相応ではあるが、それを否定するのは、相手を侮辱する可能性にも繋がるので、下手なことは言えない。
「そしてこれは、陛下と、そしてお嬢様にも言えることです」
「陛下や王女殿下にまで必要以上に感謝されては、こちらが困りますね」
「そうは仰らないでください。それだけトウヤ様が成したことは大きく、感謝されて当然のことなのです」
メイドという立場であることを考慮しても、俺の事を持ち上げすぎだ。しかし、嘘もお世辞も感じないのだから、やりにくいことこの上ない。
褒め殺し、に近いのだろう。照れと困惑を隠すために、俺はそれ以上は特に喋らなかった。
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