ちいさい秋みつけた

12月7日、私はJR博多駅から特急列車とフェリーと特急列車を乗り継いで松山へ向かった。


(ゴトンゴトンゴトン…キーッ…)


時は、夜8時過ぎであった。


場所は、いよてつ路面電車の道後温泉駅にて…


路面電車を降りた私は、歩いて晶姐はんが経営している置屋へ向かった。


日本から早く出国したいのに、出国できずに困っている…


韓国にいるマァマに会いたい…


アメリカ合衆国のハイスクールへ行きたい…


このまま日本にいたら、ぺちゃんこにつぶされる…


なんとかしなきゃ…


ところ変わって、晶姐はんが経営している置屋にて…


晶姐はんは、居間でテレビをみて過ごしていた。


この時、芸妓(げいこ)はんが晶姐はんを呼びに来た。


「姐はん。」

「なあに?」

「男の子が姐はんお願いしますと言うてはるけど、どないする?」

「ああ、通してあげて…」


このあと、私は芸妓はんに案内されて中に入った。


「晶姐はん…」


晶姐はんは、つらそうな表情を浮かべている私をみておどろいた。


「よーくん、どないしたんよーくん!!」

「晶姐はん…晶姐はん…」


私は、その場に座り込んだあとガックリと肩を落とした。


晶姐はんは、ガックリと肩を落とした私の肩を抱きしめながら声をかけた。


「よーくん大丈夫!?とにかく中に入って!!」


晶姐はんに肩を抱き抱えられた私は、奥の寝室に入った。


寝室にて…


晶姐はんは、私にアメリカ合衆国のハイスクールはどうしたのかと聞いた。


私は、心身ともにヒヘイしていたので答えることができなかった。


晶姐はんは、ものすごく困った声で言うた。


「よーくんかわいそうに…よーくんにひどいことをしたのは誰かしらねぇ~」


(ジリリリリン…)


この時、黒電話のベルが鳴り響いた。


別の芸妓はんが電話に出た。


しばらくして、芸妓はんが晶姐はんを呼びに来た。


「姐はん、溝端屋のダンナから電話どす。」

「わかったわ…」


晶姐はんは、受話器を手にしたあと受話器ごしにいる溝端屋のダンナに話した。


「もしもし、変わりました…よーくん…よーくんいるわよ…えっ?、溝端屋のダンナのところへ連れて来てって…わかったわ。」


私は、このあと晶姐はんと一緒に溝端屋のダンナのもとへ行った。


その後、私は溝端屋のダンナたちによってナンキンされた。


12月9日の朝7時頃であった。


ところ変わって、ゆめいろ市の莉江子の家にて…


家の食卓に智江と時彦と莉江子と滋と芳美の5人がいて、朝ごはんを食べていた。


(ジリリリリン…)


電話のベルが鳴ったので、智江が出た。


受話器からボイスチェンジャーで変換された男の声が聞こえた。


男が時彦を出せと言うたので、智江は時彦に受話器を渡した。


時彦が受話器を持った時であった。


ボイスチェンジャーの男は、時彦に『ケーサツを呼んだらどないなるんかわかっとんか!?』と凄んだ。


ところ変わって、松山市米之野地区の山奥にある別荘にて…


(グォー!!グォー!!)


辺り一帯で、猛吹雪による恐ろしい風音が響いている。


別荘の居間には、溝端屋のダンナと田嶋組長と山岡と小林と番頭はんの5人がいた。


溝端屋のダンナは、ボイスチェンジャーを使って時彦をキョーハクした。


「オドレが世話していたイワマツヨシタカくんを預かった…返してほしいのであれば、ワシが出す条件をノムんだな…条件はただひとつだけ…温品のクソガキをここへ連れてこい!!…ただそれだけのことや!!…なんでつれてこなアカンかって…ワシが連れてこいといよんや!!…温品のクソガキをつれてくりゃそれだけでええねん…温品はキンシン中…ドアホ!!そんなんカンケーあらへんねん!!オンドレの娘のカレシがワシのかわいいシャテイを殺したんや!!温品のクソガキがわびに出ると言うまでわしらはなんべんでもサイソクするけん…覚悟しとけや!!」


(ガチャーン!!)


溝端屋のダンナは、受話器をガチャーンと置いたあと全身を震わせてワナワナと怒っていた。


溝端屋のダンナたちからキョーハクを受けた時彦は、どないしょーどないしょーと言うておたついた。


温品くんは、あの一件でガッコーからキンシンしていなさいと言われたので外へ出ることができない…


外へ出ることができないから、溝端屋のダンナたちにわびに行くことができない…


温品くんが溝端屋のダンナたちの要求を拒否している…


私は、ナンキンされた状態がつづくので外へ出ることができない…


いつまでこなな状態がつづくのか…


時は流れて…


1989年1月6日の夜であった。


私は、ナンキン先の別荘でテレビをみて過ごした。


テレビの画面には、ボクシング中継が映っていた。


会場は、大阪フェスティバルホールであった。


関西の名門ジムに所属している17歳の超天才チャンプのタイトル防衛戦であった。


超天才チャンプは、勝祝であった。


勝祝は、莉江子の家から家出したあと関西の名門のジムに入門した。


1988年に実戦デビューしてから無敵の14戦全勝でタイトルを総ナメしていた。


しかし、ガッコーは休学中のままであった。


対戦相手は、タイ出身の選手でムエタイ十段を保有している恐力(きょうりょく)ファイターである。


勝祝は、14ラウンド目まで顔がブクブクに腫れた状態で相手に立ち向かった。


最終ラウンドの2分経過した時であった。


勝祝は、より強烈な右フックで相手の顔を殴りつけて倒した。


相手は、勢いよく倒れた。


(カンカンカン…)


勝祝は、テクニカルノックアウトでタイトル防衛戦を勝利でかざった。


ブクブクに腫れた顔の勝祝は、カメラに向かって叫んだ。


「莉江子!!オレはお前を迎えに行くぞ!!オレは、ボクシングで生きて行くぞ!!」


その翌日…


勝祝は、朝6時前に脳挫傷で亡くなった。


勝祝が亡くなった日は、昭和の天皇陛下崩御で昭和が終わった日だった。


そして時は流れて…


2018年11月23日午後であった。


場所は、イオンモール今治新都市のオーソリティの前のコートにて…


この日、経営者東西対抗歌合戦が開催された。


私は、西軍の30組目で出場した。


曲目は、アリスの歌で『チャンピオン』である。


1989年、17歳で散った勝祝の哀しみを想いながら熱唱した。


勝祝は、莉江子を愛していた…


愛していたから、あななええカッコして家出して関西の名門ジムに入門した…


ほんで、あななええカッコしてタイトル総ナメで目立ちまくった…


ほんで…


ええカッコしたまま、17歳で逝ってもうた…


時は、夕方5時頃であった。


歌合戦が終わったあと、A班のメンバーたちは1階のスタバへ行った。


この時、イベントを観覧に来ていたヨリイさんも一緒にいた。


私たちがいる席に、20代の女性店員さんふたりがワゴンを押してやって来た。


ワゴンの上には、お皿とマグカップ10組とアイリスオーヤマのIH調理器の上に置かれているポットとクラシックティラミスが入っているガラスケースが置かれている。


女性店員さんは、ティラミスをお皿に盛り付ける作業とドリップに入っている挽きたてのコーヒー豆にお湯を注ぐ作業をしていた。


今回の歌合戦は、東軍の勝利で終わった。


東軍のトリで、60代の女性経営者さんが歌った童謡『ちいさい秋みつけた』で審査員さんたちがジーンと来たので、東軍の勝利につながったのか…


(ちなみに、西軍の大トリは、山口県出身の男性経営者で曲目は山本譲二さんの歌で『男の挽歌』であった。)


ヨリイさんは、疲れ切った表情を浮かべている私にこう言うた。


「よーくん、結婚してこれからだと言うときに大変な思いしたわね…」

「ええ…」

「こなな時に、よーくんに話していいのかどうか…迷っていたけど…」

「話しがあるって?」


ヨリイさんは、私にもうしわけない声でゆりこが台風24号災害で亡くなったことを話した。


「よーくん、ゆりこちゃんが尾鷲で亡くなったわよ。」

「ゆりこが…亡くなったって?」

「ホンマの話よ。」


ゆりこが台風24号の大規模災害が発生した尾鷲市で亡くなった…


たつろうさんの実家があった地区で、土砂崩れか高波のどちらかで亡くなった…


ヨリイさんは、私にこう言うた。


「よーくんは、決まったお嫁さんがいるからもういいよね…」

「えっ…」

「よーくんは、ちいちゃい時ゆりこちゃんのことをどう想っていたの?」


それを聞かれた私は、ヨリイさんになんでそななことを聞くのかと言うた。


あの時、ゆりこは私に『よーくんキライ!!』と言うた。


『よーくんキライ!!』と言うた以上は、どなな形であっても結婚できん…


『好き』と『結婚』は違うねん…


そう思った私は、ヨリイさんに言うた。


「ヨリイさん!!好きと結婚は違うねん!!ゆりこはあの時『よーくんキライ!!』と言うたねん…そなな状態で結婚できるわけなどあらへんねん!!ヨリイさんはどないしてほしかったん!?」

「あの時は、ゆりこちゃんは強がっていただけで…」


ヨリイさんは、ゆりこは強がりを言っただけと言うた。


それを聞いた大番頭はんは『そなな話はやめなはれ!!』と言うてヨリイさんを怒鳴りつけてからこう言うた。


「あんさん!!好きと結婚はちゃいまんねん!!ヨシタカさんの結婚は、故人のユイゴンであらかじめ決まっていたんでおますねん…故人のユイゴンで決めたお嫁さんと結婚したらあきまへんと言うホーリツがおますか!?」


大番頭はんに怒鳴られたヨリイさんは、ものすごくつらそうな表情を浮かべていた。


強く言い過ぎたか…


私自身も、ヨリイさんに対して気まずいことしたと思った。


時は12月22日の夕方5時40分ごろであった。


ところ変わって、プリンスエドワード島・フレンチリバーの本籍地の家の特大豪邸にて…


私は、テーブルの上に顔を伏せて涙をたくさん流しながら眠っていた。


テーブルの上に置かれているエクスペリア(スマホ)のウォークマンが起動したままになっていた。


イヤホンから童謡『ちいさい秋みつけた』が一曲リピートで流れていた。


ちょうどその頃に、桜子たちとアンナがフランソワさんたちと一緒に帰宅した。


涙をたくさん流しながら眠っている私をみたマァマは、フランソワさんたちに言うた。


「よーくんを…桜子さんたちとアンナさんのもとへ帰してあげましょう…」


嫁育のインストラクターさんたち4人は、深眠の私が着ている衣服をすべて脱がした。


その後、入浴介護で使う機械で私をバスタブに入れた。


その間に、30人のインストラクターさんたちがオルド(とばり)作りを進めた。


オルドができたあと、4人のインストラクターさんたちは入浴を終えた私をオルドに入れた。


その後、桜子たちとアンナがオルドに入った。


オルドに入った桜子たちとアンナは、着ている衣服と下着をすべて脱いではだかになった。


そして、オルド(とばり)の入り口が閉められた。


フランソワさんたちは、オルドの外で静かに見守っている。


私は、桜子たちとアンナの温もりに抱かれて眠っている。


だが、つらかった頃の話はまだつづく…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る