夜空

2017年10月29日朝6時頃、A班のメンバーたちが乗っている専用機が岡山空港に到着した。


専用機を降りたA班のメンバーたちは、特大バスに乗り換えてドライブに出た。


バスは山陽自動車道から国道2号線尾道バイパスを通ってしまなみ海道へ向かう。


朝8時頃、バスはしまなみ海道の今治インターの料金所のゲートをくぐって目的地へ向かう。


朝8時10分頃、バスはイオンモール今治新都市に到着した。


この日は、午後1時からスポーツオーソリティの近くにあるコート(イオンシネマへ向かうエスカレーター付近)で開催される『経営者東西対抗歌合戦』に出場する予定である。


大型自動車メーカーの1社提供で、テレビで生放送される。


チーム構成は、北日本と東日本出身者の東軍と西日本と沖縄出身者の西軍に構成される。


優勝賞金800万円、MVPに選ばれた経営者には最新モデルのダブルデッカーバスが贈られる。


バスを降りたメンバーたちは、テレビ局のスタッフさんたちの案内で楽屋へ行く。


楽屋は、バス停付近にある空き店舗にある。


楽屋へ入ったあと、早速衣装合わせなどを始める。


朝10時10分頃、番組に出場する40組80名さまの経営者さまたちが全員そろった。


衣装合わせなどが終わった私は、ミンジュンさんとたつろうさんと一緒にモールの1階にあるスタバへ行った。


私とミンジュンさんとたつろうさんは、トールドリップを頼んだ。


スタバの店内に、5組10名の西軍で出場する経営者さんたちがいて、名刺交換などをしている。


私は、エクスペリア(スマホ)に内蔵されているウォークマンで歌合戦で歌う歌を聴いている。


歌合戦で歌う歌は、五木ひろしさんの歌で『夜空』である。


2017年に天に召された平尾昌晃先生の作曲・2014年に天に召された山口洋子先生の作詩の歌である。


私は、40組目の一番最後で歌う予定である。


歌を聴き終えて、エクスペリアをスーツの内ポケに入れた私は、名刺入れを出して名刺交換の準備に入る。


しばらくして、西軍の司会をつとめる大手通販会社の前の社長さん(2016年に社長を退任した)が私のもとにきた。


通販会社は、りかさんが以前つとめていた会社である。


「イワマツグループのオーナーさまでございますね。」

「ああ、(通販会社)の前の社長さま…はじめまして…よろしくお願いいたします。」


名刺交換のあと、ざっくばらんに会話を交わす。


このあとも、6~7人の経営者さまたちと名刺交換を交わした。


正午を10分過ぎた頃に、イベントが開催されるコートに観客が入る。


出場者のみなさまは、正午前に楽屋へ戻って準備を整える。


12時半頃であった。


オーソリティ前のコートにたくさんの人たちが集まっていた。


ステージの最前列から4番目のところに、波止浜の母子保護施設で暮らしていた私と同い年の子たち(男の子は所帯持ち、女の子はシングルマザーかおひとりさま)と現在施設で暮らしている母子たちとヨリイさんとマァマがいた。


一行たちは、開催される時を待っている。


ゆりこは、ヨリイさんとマァマのそばに座っている。


マァマの横に、ジョーくんの家族(夫婦と娘3人)が座っている。


ヨリイさんの近くに座っているりほちゃんが私は何番目に歌うのかとジョーくんにたずねた。


「ねえ、よーくんは何番目に歌うのかなぁ~」


ジョーくんは、りほちゃんに私が歌う順番を言うた。


「よーくんは、一番最後の組で歌う予定だよ…よーくんが歌う歌は五木ひろしさんの歌で『夜空』だよ。」


ジョーくんは、ひと間隔おいてりほちゃんに言うた。


「よーくんがちいちゃい時、先生と一緒に『想い出のリズム』(南海放送ラジオ)を聴いていた…その時に聴いた歌だよ…その時のことは、りほちゃんも知ってるだろ…」

「りほ、その時ヨーチエンに行ってた…だから知らなーい…」


そんな中で、ゆりこはひとりでしょぼくれていた。


午後1時、ステージの両サイドに設置されているスピーカーからファンファーレが鳴った。


総合司会の女子アナによるタイトルコールで始まった。


映画『サウンドオブミュージック』の劇中歌『ドレミの歌』に合わせて、東西両軍40組80名さまの経営者さんたちがステージに上がる。


私は、40組目の東軍の出場者と一緒に一番最後に上がった。


40組80名さまの出場者がそろったあと、開幕式に入る。


審査員は今治市長が審査委員長で、市議会議員13名・プロの作曲家先生4名・通町のカラオケ喫茶店経営者夫婦の20人である。


開幕式~2分間のCMのあと、歌合戦が始まった。


前半の20組は西軍先攻東軍後攻、後半の20組は東軍先攻西軍後攻である。


私は、大トリで歌う予定である。


トップバッターは、両軍の司会をつとめる経営者さんふたりである。


先攻の大手通販会社の社長さまは時代劇の主題歌『銭形平次』を、後攻の大手総合商社の社長さまは北島三郎さんの歌で『まつり』を歌う。


2~20組目は、35歳以下の若い世代の社長さまたちで、歌う曲目はJ-POPばかりである。


西野カナ・AKB48・星野源・EXILE・ジュディマリ・リトグリ・キスマイ・キンプリ・chay…


いまふうの歌は、ついて行けない…


後半の20組以降は、36歳以上の人たちで、歌う曲目は私の想い出の歌が多い。


25組目から、私の想い出の歌がつづく…


25組目に入った。


東軍が38歳のファッションワードローブ会社の女性社長さまで曲目は都はるみさんの歌で『北の宿から』・西軍は私と同い年のアプリ開発会社の男性社長さまで曲目は山本譲二さんの歌で『みちのくひとり旅』である。


おふたかたは、失恋した想い出がある。


「それでは歌っていただきましょう~」


東軍の司会のあと、歌のイントロがスピーカーから流れてきた。


この時、ゆりこは下を向いて泣いていた。


裏方で順番待ちをしている私は、なにも言わずに歌を聴いている。


このあと、私の想い出の歌が38組目までつづく…


こんな時だから、ものすごくつらかった時のことをよーく想い出してみよう。

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