刺繍、読む瞑想Ⅰ

高熊桜子

帰路


夜の住宅街

ほのかに光を放つ、

誰もいないアスファルト

ひとり帰っていく


黒い髪、黒いコート

黒い制服、黒い靴

暗闇のなかで私の身体は

夜に溶けていく


しめった呼気

かわいた外気

淀んだ私を吐き出して

つめたい夜を深く吸い込む

私の輪郭が滲んでいく


コツコツ、と

靴がアスファルトを打つ

その音だけがやけに残る

私は足音

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る