聖女だけど異世界でテレポーターしてます!~愛されて皇帝の本妻に?

鍵弓

第1話 運命の出会いと異世界召喚

 私は如月 瀬利佳17歳。

 今をときめく華の女子高生!


 私には父親がいないの。小学生の頃に飲酒運転のトラックに追突されて亡くなった後、ママが女手一つで厳しく育ててくれているの。


 今日は待ちに待った就学旅行の初日なのよね!


 残念なのは大の親友の明子が虫垂炎で二日前に入院しちゃったから、新幹線の隣は空席な事かな。折角この前告白されたという彼氏の話をじっくり追求しちゃうつもりだったんだよね。


 今は駅のコンコースで切符を受け取りに行っている先生待ちで、皆と座って待っている所なの。


 何故かは分からないのだけど、左を見ないと!と強く感じて左を見ると、財布から何かを出そうとしながら歩いているナイスミドルなおじさまが脇を通る所だったの。


 サラリーマンは大変よね。今日は5月とはいえ、結構汗ばむ陽気なのよ。

 そんなふうに思っていると、急に私達がいる辺りの床が光出したの。何故かさっきのおじさまは気がついていないみたいで立ち止まる事なくわたしの横を通りそうだわ。

 周りから「えっ?」という声が聞こえたと思ったら辺り一面光ったの。光ったと感じたら意識を無くしてしまっていたの。


 次に意識を取り戻したら代理石?の床に倒れていて、私が最初に起きたみたい。

 建物はヨーロッパに有るようなお城の一角の広間と言った感じで何故?と強く感じていたわ。


 周りにはクラスメイトが倒れていて、さらにその周りには中世ヨーロッパ?の鎧を着た人達が様子を伺っているのよ。コスプレかな?


 そうすると私の横が光ったと思ったら若い男のサラリーマン?が湧いて出てきて、私の手と彼の手が触れたわ。


 その途端ある幻影?が見えて、彼が恋人で、その、あの、ゴニョゴニョで、彼は金髪のロングヘアだったわ。今は黒いけど。


 どこかのお屋敷のお部屋?そして彼が立ち上がり


「セレナ愛している・・・」

 と窓を開けて叫んでいたの。何故セレナなの?と突っ込みたいけどスルーかな。


 意識が戻るとさっき湧き出てきた彼が、さっきの幻影で叫んでいた事を呟いているの。確かに顔立ちは一緒。髪型も色も違うけど間違いないわ。先の体験の相手は彼ね。きゃっ!


 私は男子からはよく告白されるのだけど、一回り以上上の紳士が私の好みなの。さっき見掛けたおじさまなんかもうストライクだわ。でもね、そんな父親のような歳の人で素敵な人は既に所帯を持っているのよね。彼も結婚指輪をしてたし。ついついナイスミドルを見ると左手を見るの。


 私は絶対に不倫なんかしないわ。歳上希望だから未だに彼氏が出来ないよね。


 でも、若いけどおじさん臭い格好をしている彼ならば或いは、私のファザコンを治してくれるかな?とちょっと、ドキドキしたわ。



 彼女の呟きはここまでで、ここから物語が始まります。

 ここまでは彼女が異世界召喚されてから書いていた自叙伝の為に記録した冒頭の呟きとしての書き出しである。


 これが運命の出会いとはまだ知らない。過酷な運命に翻弄されていくが、幸せを掴む事が果たして出来るのか?


 セリカが不思議に思うのは彼が運命の人と魂が感じ、何故か愛している?気がする事だった。


 セリカはちゃんと恋愛をした事が無く、恋をする事がよく分からない。

 彼女の容姿は学校のナンバーワンと言われる美少女で、黒髪のロングだ。今時珍しいのだが、染めるのは母親が許さなかったのだ。勿論門限も厳しい。ばりばりの箱入り娘である。


 そうしてセリカ自身混乱していたが、周りを気にしてみた。周りが起き出して、混乱しているのが見てとれた。


 彼が気が付いたようで、大理石の様な石の床の上に手をついて息を切らせていた。


「なんださっきの光は?」


 そうつぶやき周りに注意を向けていたが、その鋭い眼光が素敵だとセリカは感じていた。


 周りには隣のクラスと合わせて2クラス分の男女半々程の同級生がやはりセリカと同じく突然の出来事に戸惑いの声を上げている。

 

 彼のつぶやきが聞こえた。


「えっなんで?今駅を歩いてたのに?マジですか?夢でも見てる?」


 そんな中、兵士の一団の中から一人の若い上品なドレスを着た女性が突然出て来て、凜とした声で皆に声を掛けてきた。


 とても美人で、衣装もザッツお姫様。ちょっと口角がきついが、街を歩いていて見掛けたら男女問わずつい振り向く容姿。髪は金色の縦ロール。初めて生で見た縦ロールにセリカは驚いていた。流石に友達にもいなかった。


「皆様初めまして。私はこの国バルバロッサ王国第二王女ルシテル・グリーンウッドです」


 とスカートを少し摘まんで優雅に挨拶をした。


「うわあ!あれが貴族ってやつか。優雅だな」


 彼の呟きが聞こえる。「顔は負けるかな?でも、胸は勝った!」とセリカはついつい思う。


 お姫様の話は続く。


「突然の事で混乱されていると思いますが、先ずはこちらにいらしてください。説明と検査を行います」


 彼女はそう話をして「こちらです」と手振りでついてくるように促した。


 クラスメイトの中から


「うわーリアルお姫様だ!」


 等と聞こえてきた。


「いよいよ俺の時代来た~」や「嘘、おうちに帰りたい」


 とすすり泣くクラスメイトの声


「ルシテルちゃんパネー」

「異世界来た~」

「ハーレム作るぞ~」 

「馬鹿ね!あんたなんか真っ先に野垂れ死んじゃえ」


 等と様々な会話が聞こえる。


 周りが立ち上がり王女の後をついて行く中、彼が少し遅れていたが、クラスメイトに手を掴まれ仕方なく後を着いていく。


 慌てて後を追ってきた彼にセリカは意を決して話し掛ける。どんな人か話しをし、確認したかったからだ。


「お兄さんこれって何だと思います?」 


「うーん何だろうね?さっき駅に居たよね?君達は修学旅行かなんか?」


「ええ。これから行く所だったんですよ。家に帰れますかね?お兄さんはお仕事ですか?」


「お兄さんってこんなおっさんに?」


 そう返答するので、セリカは不思議そうに首を傾げた。どう見ても20歳にはなっていないからだ。


「お兄さん私らとそんなに歳変わらないでしょ?」


 戸惑っている彼からは返事がなかったが、彼の狼狽えようは他のクラスメイトの比では無いと違和感を感じていたが、目的の小部屋についた。


 小部屋と言っても、ちょっとした結婚式場のホール位は有る。王女が


「間もなく王が参ります。先ずはお掛け下さい」


 王女に言われるので、皆が座り始めた。

 どうも椅子が一つ足りずに彼が座れずにいて、慌てて兵士が椅子を持ってきた姿が見えた。

 その様子を見ていた王女の眉がぴくついたのには少し気になっていたが、それより何人いるのかが気になり人数を数えてみたが、彼、同級生と自分含め合計81名。

 どうも王女達は、人数を二度程確認しているようだ。王女の周りで神官服を着ている中年の男が、少し慌てている素振りが見えた。


 そうこうしている間に、王と思われるでっぷりとした見苦しい者が、ローブを纏った複数の人を引き連れて入って来た。


 ローブを纏った一団は王の少し後ろに控えている。

 前方の豪華な椅子に王が腰を掛け、隣に王女が立ち、語りだした。


「こちらにおわすのは、私の父上にしてこの国の王のマクシミリアン・グリーンウッド三世であらせられます」


 王女からの紹介の後に、デブ王が挨拶を行い色々説明を開始してきた。


「先ずは此度の勇者召喚に応じて頂き感謝する。

 80名の勇者召喚を行ったのには訳がある。この世界は魔王の脅威にさらされておる。最近魔王が復活して、近隣の国々が魔王により苦しめられている。魔王軍に対応するには、我々だけでは残念ながら力が足りず、古の召喚術により皆様方を召喚し、皆様方には勇者として魔王討伐に力を貸して欲しいのだ」


 そんな話をしている間に途中で声を挟んで怒鳴る者が居た。

 隣のクラスの級長だ


「ふざけるな。俺達これから修学旅行行く所だったんだぞ。お前達の事なんか知るか! 今すぐ元の所に返せ」


 と一気にまくし上げた。


 周りの家臣から


「王に対するなんたる不敬か」


 等と声が出て、兵士の何人かは槍を構えたり腰の剣に手を掛けていた。しかし王は黙って片手を挙げて、周りを黙らせた。そして王が


「突然の召喚に混乱していると思うし、一方的に召喚したのには訳があるとは言え、そなた達にとっては突然の事で、怒るのは尤もな事である。申し訳ない事をした」


 そう言い謝罪を行い


「まず話を聞いて頂きたい。勿論魔王討伐の暁にはそれ相応の褒美と、元の世界に返す事を約束する。勇者一行よ、どうか我々を助けて欲しい」


 周りの臣下が慌てて


「なにも王が頭をさげる事はありません」


 等と言っている中、深々と頭を下げていた。


 彼の冷めた感じの呟きが聞こえてきた


「茶番だな」


 とその様子を見つつセリカも同じく思っていると


「レジストしました」


 どこからか言葉が聞こえてきてセリカの混乱は増していく。


 セリカは目線だけで周りに注意を払うと、ローブの一団の全員何やら小さな声で口走っていた。


 文句を言っていた生徒が王の姿を見て


「分かりました。どうか頭をお上げください。我々にどこまで出来るか分かりませんが、この国の為に協力させて頂きます」


 そう返事をしていた。

 その様子を見ていてセリカは驚愕したが、誰も驚かないし、文句を言わないので黙って様子を見ている事にした。お兄さんも難しい顔をして様子を見ている。


 そんな中王が退出して、王に替わり王女が説明を開始したのだった。

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