第30話 愛、この前みたいにローズ先生たち何か仕掛けて来るかな?

「愛、この前みたいにローズ先生たち何か仕掛けて来るかな?」

「達也、ローズ先生のスマホやパソコンの通信記録は、常にチェックしているんだけど、公安関係については動きは無いわね。こないだの秋葉原四次元ホール以来、おとなしいわよ」

「そうか。いまだに、乗っ取られたスマホを使っているところを見ると、あの四次元ホールの出現の原因も分かってないな」

「そういうこと。それよりローズ先生、時々、FGCについて外人ともメールのやり取りをしているのよね」

「やっぱりか。この前、ローズ先生を襲ったやつら、裏でローズ先生と繋がっていると思っていたんだ」

「嘘でしょ。達也にそんなことを考える頭があったなんて」

「失礼な物言いだな。ここまでくればその可能性だって考えるだろ」

「その通り、自作自演の拉致監禁劇。しかも、口封じに仲間を殺すなんて、相当訓練を積んだ組織だと思うの」

「なんか、それ以上は聞きたくない気がするんだけど」

「そんなこと言わずにしっかり聞いてよ。それで、ローズ先生が、時々情報を得たり、報告したと思われるメールがあるんだけど、そのメールの行き先を調べてみたら、どこに繋がっていたと思う?」

「愛、どこなんだ?」

 愛は、達也に近づき耳打ちをする。

「アメリカ政府のサーバー。色々なサーバーを経由して隠蔽しようとしているけど間違いないと思う」

「アメリカ政府のサーバーだって。それって……」

「たぶん、アメリカの諜報機関と繋がっていると思うわ。FBIとCIAとか」

「でもSEXなんて諜報機関あるかな?」

「それは、わからないけど、こちらのハッキングがばれると困るから、あまり、深く侵入することができないからね」

「うーん。こまったな。得体の知れないアメリカ政府機関か。なにをされるか分かったもんじゃないな」

「確かに、困りましたね。いよいよになったらローズ先生、公安を裏切ってSEXに付きそうだしね」

「そのSEXって、自国の利益のためには手段を選ばないだろうしな。ぎりぎりのところで法律を守ってくる公安よりたちが悪そうだ。事実この日本で、拳銃をぶっ放したしな。それで、そのSEXが動く気配はあるのか?」

「今のところは、無いわね」

「愛、悪いけど、秋葉原で使ったスマホにFGCを送信するマルウエア、いつでも使えるようにしておいてくれ」

「当然よ。達也こそクリスタルUSBキーを無くさないでよ」


 達也と愛は思っていたよりも、やっかいな組織に付け狙われていることに、閉口する。

 こんな組織相手に、どこまでFGCという目くらましが通用するのか、楽天家の達也はもちろん、何事にも肝が据わった大胆な愛でさえ、不安が募っているのだ。


 そこに、達也と愛にラインが入った。演劇部の部員たちのライングループだ。

「そろそろ、控室に帰ってくるように」という連絡メールだ。

「愛、帰ってこいだって」

「達也。分かっているわよ」

 二人は、席を立って、ハンバーガーショップを後にする。


 控え室に入った達也と愛を見て、恋が、早く伝えたいとばかりに、達也に話しかけてくる。

「達也君、探したわよ。ちょっと見てよ。この名刺の数、ほら、プロダクションのスカウトの人が、私に挨拶にきたのよ」

「そりゃよかった。恋さんいよいよ女優デビューか!」

「いえ、まず、どこのプロダクションに入るか決めて、それから、色々なオーデションを受けて、受かったらよ。まだまだ先は長いわよ。それに、まずは全国大会の結果ね」

「そうですよね、恋さん。とりあえず実績がないとね。容姿だけじゃね」

「愛さん。それは、私に演技力がないという意味かしら」

「そんなこと言ってないわよ」

「こらこら、そこの二人、静かにして。発表が始まるよ」

 恋と愛が言い争っているところを部長が制している。

 そして、発表が始まる。


「銀賞、光彩学園、演目「シンデレラ」!」

呼ばれて、演劇部は全員舞台に上がる。残念ながら金賞ではなかったが、三校選ばれる銀賞に選ばれたのだ。まあ、スポーツでいうならベスト4と言うことだ。

そして、部長が表彰状を受け取り、演劇部全員が客席に向かって頭を下げた。

その表情は、結果に満足してにこにこしている者、悔しそうに唇をかみしめる者、放心状態の者、悲喜こもごもである。

 そして、達也は関心がなさそうに、スマホを触っている。

 そして、愛と恋は感激して二人で抱き合っているのだ。この二人、仲が良いのか悪いのか。いずれにしても、頑張ったことに対して、結果が出ることはうれしいことの様である。

「やったね。恋さん」

「うん」

 そこへ、部長の喝が飛ぶ。

「舞台に上がれば、常に冷静に、そして礼儀正しく。自分の感情に流されるなんて最低よ」

 その言葉に、部員たちは、整列し舞台に上がり、表彰状と盾を受け取ると、宝塚ばりに客席に礼をして降りて行く。

 当然、達也と愛はそんなことは聞いていないし、地区予選での表彰式にも出ていない。あたふたと戸惑いながら、ぺこぺこ舞台から降りる達也に対して、愛は、アドリブで華麗に礼をしてさっそうと舞台を降りて行く。

 まったく、演劇に関してはド素人、完全な裏方という雰囲気を出していた愛が、一瞬で凡人にはないオーラを身に纏い、観客の注目を集めてしまう。それは芸能プロダクションの目にも止まっていた。

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