第18話 特殊超級職の《覚醒》
月光草特有のほんのりと甘く瑞々しい匂いが周囲に満ちる。
当然か。今、俺は調合しているわけだし。
「たっくコレ必要なのか?」
かりにも皇国の皇城だろうに。
「皆さんの分くらいはありますが〜」
「万が一があるとダメか」
俺の無限収納には山ほどあるんだけどな〜。それを出すのは躊躇われるし今のところは技術者・研究者として優れていると国に思わせておきたいから駄目だな。
「【聖女】ならそれこそ完全蘇生可能じゃないのか?」
次いでに言えば【教王】とかも。治癒系統の超級職なら死者蘇生程度はできて貰わないと困るのだが。アイツの強化プランに【死兵】系統【決死隊】系統【復讐者】系統をチラつかせたわけでもあるのだから。
「最終奥儀にはなくはないけど…」
「まあそうだよな」
俺の知るアレがかなり特殊なだけだよな。俺も解放すれば良いのだが…元々の再生能力は天元突破しているからあんましダメージとか気にしないだよな。そもそも職さえ有効化しておけば不意打ちですら殺されることはないはず。正確には死んでも動けると死ぬ前に刹那の猶予が生まれるだが。
「【教王】は不在ですし先生は治癒系魔法が不得意ですので」
「そう言えば【大賢者】は魔法使い系統の超級職だったな」
俺の知っている【大賢者】たちは皆技術屋の側面の方が強く目立っていたしこの世界の現【大賢者】は研究者に近い気がする。そう言えば【魔女王】の職は聞いたことがないな。女の名が入るだけあって女性限定の職だろうか。【救世主】用にどんな能力かは知りたいものだ。
「蘇生薬なんてそんな必要なものでもないし
欠損回復薬も必要なる蘇生薬なんて薬物中毒にでもなったら大変なんだよな。材料の一部がそう言った類の使い方も可能だし。
「それにまだ誰も《覚醒》してないみたいだし」
「《覚醒》ですか……」
「《覚醒》?」
「アレ知らないのか?《覚醒》」
わりと有名なモノのはずなんだが……いや生まれながら皇女として生きているエリスは【先導者】としての覚醒の資格があるはずもないし花よ蝶よで育てられる【聖女】が経験できるはずのない深みにあるもの事実。【勇者】たる勇はまだ力を授かったばかりだ。そして【救世主】は存在例が少なく《覚醒》に至った例がない。
「特殊超級職が特殊たる所以なんだがね。まあその内に分かるさ」
1番至り易いのはアレなんだがこの世界にソレがあるとは思えない。剪定者が変化すると剪定する項目も変わるだろうし。
「———以上の工程を以って終了とする」
調合鍋を前にその魔力を乗せた呪言により効力を増幅しゆく。
「一応の蘇生薬や欠損回復薬に高位聖水に各種能力値増幅薬そして経験値ブースターを1人辺り30本づつくらいは完成したな」
「充分過ぎますけどね…。というかその片手間でナニ作ってるんですか?」
「ん?ああコレか」
小さな鍋ではあるものも黒く濁った液体が溜まっている。……まあ色々と過程を吹っ飛ばしたので仕方ないとは言えども。まあ何故かポーションとしての役割を果たしてしまっているのだ。そのまま液体をビンに詰めていく。わりと多くできたな。ただもう一つの方は色々と受け入れてくれなそうなものなのでしばらくお預けであろう。
「まあ予想通りとしてはあったものだし」
「アレがですが?」
「うんまあね。ただまだ早いかな」
俺がタマタマ見つけたアレは連中に取っては確実にアメになりゆるものだから。そしてソレも俺としては必要としていたものだからな。色んな意味で需要が出たので増産は頼んでおいた。最悪場合に備えてな。
もうあんな事にならないように。終わらせるためにも。
【救世主】なんて存在が生まれないようにも。
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