第23話 変化
相手の作戦が、戦い方がわかっているのはずるいだろうか。
ループを繰り返すうちに相手は初見なのに自分だけ経験があることに罪悪感を抱くようになった。
相手にだって叶えたい願いがある。それを簡単に踏み潰しているのだ。自分だけが知る未来を利用して。
心がおかしくなりそうな時もあった。
「人は誰だって自分勝手な生き物さ。他者のためだと言いながら、結局は己のために行動をする。そうしてセカイは回っている。だから、ボクは君をおかしいだなんて思わないさ。むしろ、生き物らしくていいじゃないか」
チェシャはよくわからないやつだった。だが、時に励ましともとれる言葉をくれる不思議な存在だった。
蓮は己の願いのために戦いを続けた。
そして、時は戻る。大学のオープンキャンパスに来ていた蓮と優仁はステラフィールド内に取り込まれた。
今回の相手は天秤座と乙女座の二人組だ。戦いに姿を現すのは天秤座の契約者だけ。そう、それが今までの戦いだった。
たとえ、今回の戦いが2対1であっても勝てる自信はあった。元々クリスティーヌ自身の潜在能力は高かった。そして、相手は一人だと敵に思わせることでその隙を突いて戦う戦法を取っている。ならば最初から二人組だと知っていれば戦い方はわかる。
また、天秤座の契約者は非常に強い意思のもとで戦いに挑んでいる。そのため乙女座より天秤座のほうが強い。天秤座を倒してしまえば、乙女座とその契約者は戦いを放棄する。
「クリスティーヌ、狙いはあの天秤だ。あれを倒すことに集中しろ」
「蓮、何を言ってる?」
「いいから、俺の指示通りにしろ。必ず勝つから」
クリスティーヌは少し不満そうな表情を見せたが蓮の指示通り、女神の星霊、つまり乙女座の持つ天秤に攻撃を仕掛けた。
ギリギリかもしれない。クリスティーヌとの相性は決して良くはない。でも、勝つんだ。必ず勝って優仁を救うんだ。
クリスティーヌが乙女座から天秤座を引き離した。そして天秤座を仕留めようとした、その時だった。
蓮は何があったのか、即座に状況を把握することができなかった。
「蓮!」
何故か、側にいたはずの優仁が蓮から離れたところから走ってくる姿を地面に沿った形で眺めている。
蓮は地面に倒れ込んでいたのだ。そう、何かに当たり蓮は吹き飛ばされたのだった。
乙女座か?いや違う。天秤座か?いや違う。天秤座はクリスティーヌが抑えており、乙女座はそれを助けに行こうとしていた。
それに今まで契約者自体に攻撃を仕掛けてくるような戦い方はしてこなかった。
では、一体誰に攻撃をされた?
「悪いな、ガキども。俺は汚い大人なものでな。手段は選ばないのさ」
天秤座の契約者の隣にいつの間にか黒いスーツに無精髭を生やした男が立っていた。
「そんな...まさか」
あの人がここで現れるなんてありえない。
そう、ありえないんだ。
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