第3話 本名
「ふう」
座ったところを見計らって、声をかけた。
「いい歌だったですね」
「おお。そうか。ありがとう」
手を差し出される。
「ん?」
あ、握手か。
「にぎにぎ」
握手した。
「まじか。本心からあれを良いと思ったのか」
「え?」
手。柔らかく、暖かい。
「俺は相手に触ると何考えてるか分かるんだ」
「うっわ」
手を離した。
「にぎにぎして損した」
「しかしお前、あれを良いと思うなんてな」
「良いものは、良いと思いますけど」
「発声も、曲も、目線もだめ。トークもだめ。全部だめだったよ。今日のは」
「そんなもんなんですか」
とりあえず、隣に座った。一応身体に触れないように距離をとる。
「おまえはすごかったよ。こんなに多くの観客の前で、緊張してなさそうだったし」
「緊張してないですもん」
「自ら望んで来たわけではないから、か」
「はい」
「じゃあなんでここにいる。いやならやめればいいだろうが」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます