ハナミズキ

 黙々と研究に打ち込む彼の、その横顔に恋をした。初めはちょっとしたお菓子から差し入れするようになり、凄くありがたがられることもない代わりに迷惑がられることもないのを良いことに、手作りのお弁当まで作って行くようになった。

 日がな一日、資料や顕微鏡と睨めっこし、またはフィールドワークに出かけて研究に明け暮れる彼は、コンビニ弁当が私の弁当に替わっただけのようで、それを差し入れる私には注意を払うことも全くなかった、ように思えた。

 だから私の誕生日に、好物であるショートケーキと、お気に入りのお店の紅茶葉を贈られたときには、それこそ机をひっくり返さんばかりに驚いた。認識されていたことからしてびっくりなのに、誕生日や好物まで把握してくれていたなんて。

 口をパクパクさせるばかりの私に、彼は眼鏡のツルを触りながら言う。

「私があなたに関心がないとでも?」

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