皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!

古里@3巻発売『王子に婚約破棄されたので

第一章 婚約破棄

第1話婚約者が他の異性と抱き合っていました

「クリスティーナ・ミハイル。貴様との婚約をここに破棄する」

皆が楽しんでいる王立学園のサマーパーティ会場において、突然、クリスは皇太子に指さされて宣告された。


それもこんな皆の前でだ。


一瞬クリスは目の前が真っ白になった。

そうこの話は悪役悪徳令嬢がはかなげな娘をいじめにいじめて挙句の果てに皆の前で

その悪事の数々を暴かれ弾劾される話のはずである…

多分・・・・・


物語はこの宣告された日からさかのぼること3日前から始まる。


夏の初め、王都マーレはそろそろ暑くなり始めた時だった。


その夕暮れ時。


「!」


その場面を見てクリスティーナ・ミハイルは固まっていた。

ショッキングピンクの髪をした小柄な少女を青い髪を伸ばした美形男子が胸に抱きしめていたのだ。


少女は肩を震わして泣いているようだったが、夕日の光がキラキラと水面に反射する湖面をバックに抱き合う二人は絵になってていた。


普通なら何てきれいなのだろうと二人を呆然と見とれていただろう。


その相手の一人が自分の婚約者のエドでなければ。


慌ててクリスはその場を離れた。


うっすらと気は付いていた。


婚約者がピンクの髪のマティルダ・アーカンソー公爵令嬢とよく一緒にいることに。


最近婚約者が冷たいとも感じていた。

でも彼王太子エドとは10歳からの付き合いだった。

この王立高等学園でも2年と3ヶ月の付き合いだった。


王立高等学園。


貴族の子弟の多くが通う学びの学園。


各地にある10の中等学園から優秀な生徒を集めた高等教育の最高峰の一つ、


政治学から魔術や礼儀作法まで学ぶ全寮制の教育機関だった。


大半の貴族と一部の優秀な平民からなる学びの苑であった。


クリスティーナ・ミハイルはミハイル侯爵家の長女で皇太子エドワード・マーマレードの婚約者だった。


二人はお互いに愛を育みながら勉学に励んできたはずだった。


最近は授業後の王子教育、王妃教育の為にお互いに会える時間はほとんど無かったが、それでもお互いの心は繋がっていると思っていた。


そんなクリスだったが、最近は婚約者がピンクの髪の令嬢マティルダ・アーカンソー公爵令嬢といることが多いと気づいてはいた。


いつもは冷たい印象を与えるエドの顔が笑みを浮かべているのを時々見ていた。


最近は自分にほとんど向けてくれない笑みだ。


でも、今まで8年間も婚約者でいたのだ。


自分が裏切られる訳ないと。

単なる気まぐれだと思っていた。


自分の皇太子妃教育と高等学園の課題の多さで最近はアップアップでエドとの時間が少なくなっていたのは事実だ。


でも、自分ですら抱きしめられたことなんて無かった。それがあのぽっと出の公爵令嬢と抱き合っているなんて。


何も考えられずに慌てて寮の部屋に帰ろうとして、カバンを教室に置いてきたままなのに気づいた。


教室の中にはまだ5、6人が残って課題をしていた。


その中クリスは自分の机の前まで来て呆然とした。


机の上にはカバンが逆さになっていた。


中身がぶちまけられていて教科書やノートが踏みつけられた足跡まであった。


教室にいた者たちが笑うのを感じた。


ちらりと周りを見ると公爵家の取り巻き令嬢とその婚約者たちだった。


そこへ人が入って来る足音がして、クリスは慌てて拾い出す。


「どうしたんです?」

入ってきた男性スティーブン・スミスが聞いてきた。

北部から来ている優秀な生徒だと認識していた。

貴族ではなくて平民の出身だと。


王立高等学園は基本は貴族も平民も無く平等だったが、平民の男性が貴族の令嬢に話しかけることはあまりなかった。


クリスは特に皇太子の婚約者だったので他の異性とは意識的に避けてきたこともあり話したことはほとんど無かった。


「ありがとうごさいます。スミス様。ちょっと手を滑らせてしまって」

クリスは誤魔化した。


「えっ。でもこれってひどくないですか」

拾うのを手伝いながらスミスが教科書についた足跡を見る。


「あーら。ミハイル様。平民の男を持ち前の色気で捕まえられましたの」

突然座っていた女が話してきた。確か公爵家の取り巻きの一人で男爵家の令嬢のはずだった。


「これはこれはメーソン様。この方はご親切にもあなた方が踏みつけた教科書を拾っていただいた方ですわ」

クリスは反撃した。


「なんですって。私たちがやったというの」


「私が来た時にいらっしゃったのはこの6名の方ですし、こんなことになっているのを放っておくなんて普通は信じられませんもの」


「いえ、そんなこと気付かなかったわ」

慌てて男爵令嬢は言い訳しようとした。


「ほう。こんなに散らかっていたのに気付かなかったなんてよほどお目が悪いのかしら」

クリスは人の悪い声を出して聞いた。


「そんなの知らないわよ。行きましょう」

慌ててカバンにしまうとそこにいた男女は慌てて出て行った。


「あのままにしてよかったんですか」

スミスが聞く。


「こんな初歩的ないたずらなんて、慣れているわ。手伝ってくれてありがとうございます。スミス様。」

「いえ、こちらこそ、平民風情が手伝ってあなたの名声に瑕がついたかもしれませんが。」

困ったようにスミスが言った。


「そんなことないわ。勇気を出して手伝ってくれてありがとうございました。あなたこそ変な噂立てられたら御免なさい。」

立ち上がってクリスは謝ると、あまり異性と仲良くするのも良くないと思い礼をすると部屋を出た。


婚約しているものが異性とあまり接触してはいけない。

クリスはエドとの関係で酷聞流されるとまずいと思って行動を律していたのに。

もっともその婚約者が異性と抱き合っていたが。


クリスの心は沈んでいた。


部屋に帰っても食事もとらずにベッドに横になっていた。


「うじうじ考えていても仕方がないわ。とりあえず寝よう」

寝る子は育つ。

クリスの父がいつも言っていた言葉だが。

明日は明日の風が吹く

クリスは眠りについた。

クリスは良く育つ子だった・・・・・・・


*********************************************************

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

フォロー等よろしくお願いします。


私の初書籍『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://kakuyomu.jp/works/16816927863351505814

が【次にくるライトノベル大賞2023】にノミネートされました。

https://tsugirano.jp/

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