第15話女尊男卑
日記コーナー。
書いた時間順にページの一番上にくるみたいだ。しかもタイトルと書いた人のニックネーム。男性は青文字、女性は赤文字で表示される。年齢と都道府県、そしてその日記が何人に読まれたかの数とコメントの数。今は夜中の三時過ぎ。それでも書き込まれる日記。あることに気が付く。青文字である男性の日記の閲覧者数は0人、一人、二人がやたら多いのに対し赤文字である女性の日記の閲覧者数は二桁越えが圧倒的に多い。タイトルに読んでみたいと思うものはなかった。一通り足跡を気にせず読んでみた。
寝れない(ツヨシ 岐阜県 28歳)
うわあもう三時だよ(笑)。ちなみに明日は五時起き。起きれるかな(>_<)
日記と言うより呟きみたい。僕(私)が最初の閲覧者になった。十分ほど前に書かれた閲覧者数17人の女性の日記をクリックする。
自分にご褒美(おじょこ 広島県 48歳)
仕事頑張ったので自分にご褒美。ちょっと贅沢な発泡酒(笑)
明日にカンパーイ(もう今日だけどね)
さっきの男性より一行多い二行。そこで気が付く。いいねが二つ付いている。どこがいいのだろう?独り言に似たような日記が多い。中には本当に長文で書いている人もいるけれど普通の日記だ。その日のニュースや話題をネタにしたり、自分の考えや今日の出来事であったり。ページにランキングのボタンがあったのでクリックしてみた。前日と今日の閲覧者数のベスト10までが項目ごとにニックネームで表示されている。項目も男性ピュア、男性アダルト、女性ピュア、女性アダルトの四つに分けられていて写真付きの人がほとんどであった。アダルトはそのまんま卑猥な写真と一行、二行のコメントのものが多い。それでも官能小説のように長文で綴られた日記もあった。ピュアの方も自己申告だけで内容や写真がアダルトのものが多い。それでも男性ピュアには何人か面白い日記を書いている人がいた。面白いにも種類がある。ベクトルは違っても共通しているのは読むのが面倒くさいと感じさせない文章を書いている人は面白い。中には詩人気取りで、どこかで聞いたことのある言葉を上手くバレないようにそれっぽく書いている人もいた。これだけ全て出尽くした感がある今の時代で、しかも情報が簡単に集められるネット社会であるにも関わらず言葉はちょっとしたテクニックでオリジナルにすることが出来る。小説家になりたい僕(私)には一つの感覚がある。言葉には実は著作権が存在すると思っていて、本当に組み合わせは無限にあるけれど言葉は輝きを放つことがある。その輝きはイミテーションでも読み手次第で本物の様に見える。そう見せることも文章を書く人間ならある程度簡単なことであるのは知っている。この感覚を僕(私)は読書量ではなく書いた量で知らないうちに身に付いた。人が使った著作権のある言葉は使えない。小説家とは原液のカルピスをちょうどいい塩梅で出せる人だと思う。薄すぎてもダメ、濃すぎてもダメ。ただ、僕(私)の理想は原液でも気にせず飲めるものであり、何度も賞に応募しては一次落ちばかり繰り返してきた自分の悪いところでもある。誰かに読んで欲しい気持ちと、読んで欲しいを捨てないといけないという気持ちが同居している。賞を取りたいと思う気持ちと、受賞して自分に価値が出るのではなくごく少数でも誰かに楽しんでもらって価値が出るのだと思う気持ちが同居している。僕(私)は小説家になりたい。だから今日からこのサイトの日記コーナーで一位を狙う。男性ピュアで書くけれど総合閲覧者一位の座を。昨日の総合一位は閲覧者93862人で女性アダルト。うーん、無理かも…。僕(私)は出会い系サイトでの初めての日記を書き始めた。
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