第16話
何だ?徳徳トキシンて?トキシンて毒のことだよな。ウイルスじゃなかったのかな...
「異常箇所にセキュリティホールを発見。衛星通信モジュールからのハッキングを検出。量子コンピュータによるパスワード及び暗号解析、25のゲートを0.83秒で突破完了。最終ゲートを特定し徳徳トキシンを投入します」
スマホが何か難しい報告をしている。
「さて、どこの国の仕業かな?」
一瞬間を置いてスマホが冷静な声で報告する。
「敵ウイルス検出。反撃されました。ロケットの自律制御システムが書き換えられていきます。書き換え完了まで推定7秒」
「なんと!敵にうちの時子とタメ張るAIがいるのか!ほんじゃ敵ウイルスの無効化に現状のフルパワー投入!」
「こちらの64のゲートを1.4秒で突破されました。再度防壁を展開、敵ウイルスを解体中、こちらの解析に反応して防壁を組み換えるタイプです。量子コンピュータのCPU稼働率が55%まで上昇」
「55%?!すげー!東京都一個分の電力じゃん。ちなみに100%になると量子コンピュータがブラックホールになるらしいから、それもちょっと見てみたい気もするけども...こちらも突然変異型のウイルス「命の父A」を投入!」
何か闘いが始まっているらしいが、何の効果音もないので、静かに激しいせめぎ合いが起きているらしいことしか分からない。
三ケ島は何か手伝いたいと思ったが、何もできそうにないことを歯痒く思っていた。
せめて徳永氏が守ってくれているこのロケットを無事に打ち上げるため、カウントダウンまでの準備を進めよう。
「敵ウイルスの解析、解体を完了。コードをデータベースに保存します」
「待て!コードはそのまま破棄。メモリをNULLクリアしろ、下手に残すと復活するぞ」
「敵第2波最終ゲートを突破。合体型のウイル...時子メインスロットがダウン。バックアップスロットが処理を引き継ぎます」
「わお!劣勢かい?やってくれるじゃーん。稼働率80%までの増加を許可!」
「許可承認を確認。日本政府への余剰電力即時調達申請を上げます」
「さあ、一気にやっつけておしまいなさい!」
何やら今までとは次元の違うパワーを投入したらしい。
「!! 敵ウイルス殲滅完了。敵コアへのリンク128のルート全て遮断されました。現状攻撃不能です」
「こちらのゲートを2048まで増加、それぞれに合体型のウイルスを設置」
「ゲート増設、ウイルス設置まで2秒...完了しました」
「よし、とりあえず停戦かな。時子クラスのAIと量子コンピュータを持ってるって、あの国しかないよなぁ。それにしても手際が良すぎる。もしかして同種がいるのか?」
何がなんだかよく分からないが、とりあえず攻防は一段落したらしい。
徳永氏が近づいてきた。
「とりあえず現時点でのパワーの差を見せつけたったから、とんでもなく頭が悪くなければ一旦諦めると思うよ」
「ありがとうございます。では打ち上げのシーケンスを進めます」
「よろしくー」
こうして打ち上げの最終チェックも無事に終わり、カウントダウンが始まろうとしているところだが、隣で徳永氏がそわそわしだした。
「うー、俺っちだったらこれで諦めるか?NOー。敵はとんでもなく頭の悪いヤツな気がする。やっぱ何か仕掛けてくるよな。次は何が来る?」
「打ち上げ3分前。地上班は待避を開始してください」
ロケットの地上からの確認担当者らが待避を始める。
陸海空自衛隊の探知に掛からずに証拠を残さずロケットを物理的に落とすには?
超長距離からの荷電粒子砲による砲撃。
「ヤシマ作戦か。そうは問屋が卸しません!時子、南日本地域の電力消費をチェック」
「鹿児島県いちき串木野市の電力消費量が2分前から7倍に増加しています」
「それだ!いちき串木野市内で荷電粒子砲の位置を推測しろ!」
「市内に種子島宇宙センターを見通せる地域はありません。空中を捜索します。光学迷彩探知。敵荷電粒子砲と推測します」
「よし、電力消費量から砲撃時の荷電粒子の出力を推測しろ」
「現状の電力消費量である27万kWhから、砲撃時は125万kWh前後が予想されます。ロケットが同高度に到達する際が、威力、命中率共に最大になります」
「いや、多分ずらして来るだろう。さて前と後どっちかな?迎撃準備。電子砲の出力を相手に合わせろ。対消滅させる」
「地上に配備している陽電子砲を電子砲に切り替え、充電を開始します」
何やら物騒な会話をしている徳永氏に打ち上げのカウントダウンを始めることを告げる。
「あの、そろそろカウントダウンが始まります。このまま打ち上げても?」
「うん。問題ないよ。恐らく最後の攻撃があるけど、しのいでみせるし」
よし、覚悟を決めて、徳永氏を信じて打ち上げるだけだ。
「打ち上げ最終段階、自動カウントダウンシーケンス始めます!」
「全慣性航法制御をロケット側に移行。Guidance is internal。6基のロケットの同調確認」
「Ten, Nine, ignition sequence start, Six, Five, Four, Three, Two, One, all engine running, Lift off, we have a lift off!」
リフトオフ!この管制室にはエンジン音も振動も伝わって来ないが外部及びロケットのカメラ映像からロケットが上昇し始めているのが分かる。
さあ無事に上がってくれ!
6つの光と6本の水蒸気の煙が一気に天に向かって上がり始めたその瞬間、
「来るぞ!撃て!」
徳永氏が叫ぶ。
「電子砲連射します。連射可能時間は2.3秒...敵陽電子砲の発射及び対消滅を確認」
「よっしゃ!いっちょあがりー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます