奴隷メイド・クレアSide
私は両親に奴隷として売られてしまった。貧しい農村だったこともあり、なんとか家族で生活をしていたんだけど、今年は作物のできが悪く税金が納められなくなってしまったのだ。弟はいたが、家のことを考えると売られるのは私しかいなかった。両親には謝られたが、私が残っても結局は生活できないのだから仕方が無い。
私の見た目はまだいいみたいだったので奴隷商人は結構な金額で引き取ってくれたようだ。情事については拒否できる契約としてくれたのはまだ救いだった。でも1年売れなければその制約もとられて売られることになるようだ。1年以内に両親が引き取りに来てくれることは期待できないだろう。
奴隷商人のところへは結構頻繁にお客がやってきていた。ただ戦闘に関してはそれらのスキルを持った人が、力仕事は男奴隷が、女性はやはり制約なしの人が優先されているようだ。私も何度か候補には残ったんだが、制約があるせいでなかなか買い取り手が見つからなかった。
半年ほど過ぎた頃に私はクルトという男性に買われることとなった。仕事内容は家事などメイドのやるようなことらしい。なかなかこのような条件はないので必死にアピールしてみた。もちろん制約なしの女性の方が優位となってしまうので無理かもしれない。
そう思っていたのだけど、私の名前が挙がったときにはとてもうれしかった。一緒に買われたのはマルトという年上の女性で名前をよばれたことにかなり驚いていた。正直なところマルトさんは見た目がそれほどいいとはいえないし、スキルも持っていないと言うことで売れ残っていた女性だ。ただ制約なしだったはずなのでそちらの関係を持たれると言うことなんだろうか?
私は情事については制約されているけど、結局手を出されてしまう可能性は否定できないらしい。暴力を振るわれたり、食事を制限されたりと色々とやり方はあるようだ。できればそんなことがないことを祈るばかりだ。
そう思っていたのだけど・・・実際は全く違っていました。それもいい方向で違っていたのです。
最初にメイドとしての教育はされましたが、教えてくれた人はメイドとして一流の方でした。短期間でしたが、いろいろな作法や仕事を教えていただきました。
でもやっぱりおかしいです。奴隷に個人部屋なんか無いのが普通です。質素な食事で間違っても使えている家の人達と一緒に同じものを食べたりはしないものです。これはメイドの教育をしていただいた人も驚いていました。休日なんかなく毎日こき使われるもので、自由になるお金なんかもちろんあるわけがありません。
奴隷って何なんだろうか?本気で考えたくなってしまう環境でした。一緒に購入されたマルトさんは実はかなりの美人さんでしたけど、夜の相手は必要ないと言われたみたいでした。
あとから雇われた奴隷メイドのアリマールさんも同じ待遇で混乱していましたが、当たり前だと思います。混乱するなという方が間違っています。
しばらく務めたところでやっとご主人様が結婚しました。どう考えても好意を持たれているのに気がつかなかったんでしょうか?ご主人様は馬鹿、すみません、鈍感なのでしょうか?まあ最終的に収まったからよかったですが。
一緒に働き始めたマルトさんは奥様達に許可をもらってご主人様と関係を持ったようです。結婚はしていませんが、とても幸せそうな顔をしていました。正式な結婚はしていませんが、指輪を贈ってもらってうれしそうにしていました。
もともと3人の結婚している上に愛人までいるのであればかなり大変なことになりそうですが、そんなことはありませんでした。正直驚きです。こんなに仲のいい人達はそうそういないように思います。
こんな私ですが、私のことを好きという奇特な人が現れました。同じく奴隷として雇われたマルドリーという方です。ご主人に許可をもらって私にしつこく言い寄ってきました。どれだけ素っ気ない態度をとっても諦めずに誘ってきます。
タイプではないとは言いませんが、二人とも奴隷なのです。いくら好きな人ができたら結婚してもいいと言われてもさすがにそういうわけにはいきません。
それでも諦めずに言ってくるので、お互い奴隷を解放されたら考えましょうと返事をしました。その後マルドリーさんの一家は買い戻しの金額が貯まったみたいで、無事に奴隷から解放されましたが、そのまま仕事を続けることにしたようです。
私のことはもう必要ないかと思いましたが、それでも色々と誘ってきます。結局、奴隷解放されるまで彼の誘いは続き、奴隷解放とともにプロポーズをされました。さすがにもう私の中では断る気持ちはなくなっていました。
ご主人様達にも盛大にお祝いされて私たちは夫婦になりました。さすがにご主人様の屋敷に住むわけにもいきませんので近くにあるアパートを借りて住むことにしました。
結婚の際に私の家族も呼びました。かなり苦しい生活をしていたはずなので仕送りはしていたのですが、詳細はわかりませんでした。今は村全体が裕福になってきており、生活にも困っていないようです。
どうやらご主人様の商売で使う農産物を専属契約してもらっていたみたいです。特殊な農産物なので最初はかなり苦労したようですが、無事に栽培に成功したようでした。村全体でこの農産物を生産できるようになったことで村全体の収益が上がっており、村全体もかなり大きくなっているようです。
この話はマルドリーが持ちかけた話だったようですが、このことを付き合う理由にしてほしくなかったので黙っていたみたいです。このため今まで仕送りをしていたお金はすべて貯金していたみたいで、結婚祝いと一緒に渡してきました。
家族全員がご主人様に感謝していました。当たり前です。ここまでしてもらって感謝しない方がおかしいです。
その後、子供ができたのを機に仕事を辞めることを決心したのですが、育児が落ち着いたらまた戻ってきてと言われました。働いている間は雇っている子守メイドに預けてくれたらいいと言われました。
ほんとにいいのでしょうか?結婚して仕事を辞めないだけでも珍しいことなのに、子供ができても働き続けさせてもらえるなんて信じられません。もちろん世話をしている分お給金は減らされますが、それでも十分な手当でした。
結局、子供が二人できましたが、最初の授乳期間だけは仕事を休ませてもらい、その後は仕事に復帰しました。育児も仕事も大変ですが、ずっと子供の面倒を見ているだけではないためとても充実した日々を過ごしています。
ただ夫が「子供達が僕よりマルトさんになついているというのがちょっと悲しい。」というのがちょっとかわいそうだなと思ってしまいます。まあ、ご主人様の子供だけでなく、預けている子供達皆からマル母様といわれて慕われていますので、仕方が無いことなんでしょうけどね。
~あとがき~
これにて本作品を完結とします。
メインで連載している「10日間の異世界旅行」の息抜きのような感じで書いていましたが、書きたかった話は大体書ききったと言うことでこれにて終わりとさせていただきます。
もしこの人の話が読みたかったとう要望があれば書くかもしれませんが、確約できません。
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