反抗期

 こけたバイクの車輪は回っていた 頭が割れて痛かった

 友人が顔面から血を流しながら笑った

 「あそこのおでんには螻蛄が入ってるんだよ」

 夜空に死にかけのゴミ袋が降っていた


 母が見ていたアダルトビデオを燃やした

 先生が持っていた色鉛筆を燃やした

 近所の犬の犬小屋を燃やした

 自分の靴を燃やそうとして、惜しくなってやめた

 火が燃え移った家は平然と乾いていた


 三角定規を尖らせることに熱中していたら、鼻糞になったよ


 夜空に死にかけのゴミ袋が降っていた

 こけたバイクの車輪は回っていた 頭が割れて痛かった

 友人が脇腹から血を流しながら笑った

 「あの角にいた紺の狢はもういないんだよ」

 頭が痛かった おれも笑った

 「螻蛄って意外と旨いんだよ」

 こけたバイクの車輪は回っていた

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