「せかいせいふくだめでした。」

 将来の夢が「せかいせいふく」だったアホが借金取りに追われて死んだので

 その遺灰を適当に掻き集めて海やら川やらに流しました

 そのうちそれは天に昇って、しょぼい小雨になるでしょう

 誰の目にも留まらず、ひび割れたアスファルトを濡らして消えるでしょう


 あのアホの湿った布団の下に一通の遺書 しわくちゃの広告の裏

 「せかいせいふくだめでした。」って書き出し

 竜巻の中で書いたみたいな文字 紙の端に飛び散ったインクの跡


 あのアホのことは思い出せません、その価値もないただのアホでした

 いつも自分が悪党だと思っているアホでした、嫌われ者を演じるアホでした

 他人を蔑ろにしているふりをするアホでした、自分本位のふりをするアホでした

 エロゲをやり過ぎたアホでした、ラノベを読み過ぎたアホでした

 知らんうちにくたばっちまったアホでした


 そのうちあれは天に昇って、しょぼい小雨になるでしょう

 誰の目にも留まらず、ひび割れたアスファルトを濡らして消えるでしょう


 僕だってやりたかったんだ、「せかいせいふく」

 僕だってアホになりたかったんだ、「せかいせいふく」


 でもさ、もう終電が来ちゃうから、この新聞も読み終わっちゃったから


 そうです、いつだって我々は、

 「せかいせいふくだめでした。」


 そうです、いつだって我々は、

 「せかいせいふくだめでした。」

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