ひとりぼっち

 昔から曲がったことが大好きで 歪んだ鉢を集めては悦に浸っている

 たわしで歯を磨き 汗だくで躓く人を指差し笑うのを日課としている


 渋滞の騒音を聞きたくないから ツバメの巣を避けて逃げ惑っている

 ビールの空き缶を踏み潰しながら 壊れた羅針盤を後生大事に抱えている


 自転車に二人乗りする少年少女に中指を立て

 橋の下で泥になっている野良犬を見下ろし

 善意の集金会場を恐れてそそくさと通り過ぎ

 光り出す四角の群れに本日も怯え慄きながら


 ぶつくさぶつくさ 箱の隅で喋っている 耳詮をして


 睡眠薬が足りないから買いに行こう

 財布の中には二銭銅貨 どこにも捨てられず

 睡眠薬が足りないから買いに行こう

 灰の壁から染み出す酸素で窒息しないために


 光り出す四角の群れに 本日も怯え慄きながら

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