あの子の葬式


 五月に飾った風鈴 仕舞い忘れた炬燵


 ぼろきれを羽織り 酸欠で死んだ金魚を携えて

 あの大きな煙突の根元まで 自転車を漕ぎ

 遠のくチャイムを背に 淀んだ空気を吸い込んで


 夢見心地の断片 不快な音色のピアノ


 あの子は真っ赤な犬のベロだったし、偽物の心霊写真だった

 浮浪者の手袋だったし、庭先に生えたジャスミンだった


 あの子は壁のシミと友達で、膝の上にはいつも綺麗な花が咲いていた

 サッカーボールを嫌っていて、塗り潰された絵を大事に持っていた


 あの子は長い髪を結い、ニキビだらけの顔を洗い

 細い目をさらに細めて、眉根の皺を深く深く刻み

 いつか燃やされる手紙を綴って


 壊れたモデルガン 河童の噂がある公園


 ユーフォーを見上げた晩の あの子のことを 永遠に笑い者にして

 立ち昇る煙を見上げた僕は あの子のことを 一生の忘れ物にして


 九月に仕舞われる風鈴 押入れに押し込まれた炬燵


 あの子は憶えていてくれるかな

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