第22話 パンツ一枚デュラハン登場

 首無しデュラハンになってしまった勇者ジンテイジは真っ直ぐにゲンセイの方にと向かってくる。兵士達の死体から鉄の剣と鉄の盾を拾う。

 次にジンテイジはずるずると鉄の剣をひきずりながら歩いている。


 まだ体の操作になれていないのだ。

 体の動かし方が不気味そのものであり、まるでゾンビデュラハンのようでもあった。

 こちらの勝手な思い込みを叩き壊すかのように全力疾走でこちらに走って来る。



 パンツ一枚のムキムキデュラハンは少しだけ気が引ける。

 あれでは変質者がこちらに全力疾走しているようにしか見えない。


 力任せに右上斜めから両断する鉄の剣。

 それをデュラハンであるゲンセイが銀色のエンゲージソードで防御する事に成功する。

 その力はエネルギーの衝撃となってゲンセイは左に吹き飛ばされる。

 空中を飛ばされながら、頭は空中に浮遊している事を確認する。



 首から目線と頭目線があるので、ゲンセイは周りを把握する事が出来る。

 沢山の敵の兵士達が魔王リュウガと命を賭けて殺し合いをしている。

 しかし勇者ジンテイジは真っ直ぐに全力疾走して来る。

 少しずつスピードが上がっていく事にゲンセイは楽しくなってくる。


 お互いが首無し死体になった。

 勇者ジンテイジは7つの星の1つの莫大なる力を体に吸収している。

 エネルギーとして何かしらのエネルギーを食べる必要がある。 

 それが先程の首無し兵士達だったのだろう。


 

 ゲンセイは上手くやられてしまったと頭を押さえていた。

 頭はないのだが、イメージで敵の頭を想像してみたりする。



「こりゃああ、エンゲージソードも本気を出さないとね、フルケイルアーマーもね、いつもの如く俺様は覚悟を決めたんです!」



 それは唐突に訪れた。

 空気が凍り付くように冷たい氷になったり、マグマのような灼熱の空気になったり。

 人間から発せられるエネルギーが目に見えてくると。



 ゲンセイは銀色のエンゲージソードを右手と左手で握りしめた。


 

 構えたと思ったまさにその時、その場からゲンセイは消失していた。

 忽然と消えたゲンセイに頭はないが驚愕しているであろうポーズをパンツ1枚でしている。



 何かがめり込む音がした。

 風が吹いた訳ではなく、衝撃のような打撃のような音が響く。


 気付いた時にはジンテイジのデュラハンは遥か後方に吹き飛ばされていた。

 

 ゲンセイは物凄いスピードで走っただけであった。

 最後にエンゲージソードで両断していただけで、鉄壁の防御力を誇るジンテイジのパンツムキムキにはエンゲージソードでも刃が通る事はなかった。



 砦の瓦礫には先程叩き飛ばしたジンテイジのデュラハンがいた。

 ジンテイジはこちらを真っ直ぐに見ているようだった。

 そこには頭は無かったが、先程空に放り捨てている事から、空から監視しているのだろう。


 こちらに言葉を通さないという事は結構な遠い居場所、または、勇者ゲンセイの心臓がある場所ではないだろうか?


 

 恐らく高い所にあるとされ、砦の上層部にある塔みたいな監視塔が怪しい。



「しかし、今はこいつを倒す必要があるなぁ」



 エンゲージソードの使い方は沢山ある。

 ゲンセイの使い方は【溜め斬り】と【斬撃飛ばし】であった。


 ゲンセイはよくこの2つの攻撃を重ね合わせる事がある。

 現在眼の前からこちらへ全力疾走してくるムキムキパンツ一着のデュラハンがやってくる。



「あいつか、それともあっちか」



 現在ゲンセイはふたつの選択を選ぶ必要がある。

 1つはジンテイジのデュラハンを吹き飛ばす事。奴を倒すとなるとさらなる時間がかかるし、こちらが倒されてしまう可能性も上がって来る。


 

 なら、砦の屋上にある見張り塔に攻撃を仕掛けるか、あそこには恐らくゲンセイの心臓が保管さている。


 喉など肉体などないのにごくりと生唾を飲んでしまった。


【溜め斬り】を発動させる。

 

 銀色のエンゲージソードを鞘に入れて構えると。

 意識を鮮明に集中させる。

 この技を使うのはとてつもなく久しぶりであり、エンゲージソードとフルケイルアーマーは生物のように生きている。

 見た目は鉱物であるが、この2つにはちゃんとした魂が宿っているのだから。



 空中に浮遊している頭を首から出ている黒紫色の煙視点もまぜつつ。


 

 それを解き放った【斬撃飛ばし】に一緒に発動される【溜め斬り】



 空気を両断し、砦を破壊の限りをつくし、一直線に一刀両断してしまったその時。

 勇者たちが必至に守っていた砦が崩壊していった。


 中に隠れていた兵士達も大慌てで砦の外に出て着た。


 砦の屋上にあった塔は真っ二つに両断されている。 


 その時だ。ジンテイジの怒りの咆哮が辺りを支配してしまった。


 兵士達も首無し死体達も、魔王リュウガも首無し馬グリーに乗って人々をおちょくっているテイルまでもがその咆哮に心を揺さぶられた。



 ジンテイジの頭部が破壊されたという事だ。

 勇者であるジンテイジには首から目線がなかった。

 それは種類の問題なのだろうが、彼はデュラハンではなく、何か改造された化物だという事。



 頭が崩壊を辿ったという事は彼はムキムキパンツ一着状態で考える事が出来なくなったのだ。


 

 デュラハンには圧倒的な弱点がある。

 それは頭を破壊する事だ。

 頭を破壊されると、デュラハンは考える事が出来なくなる。

 それはデュラハンではない化物の勇者ジンテイジも同じ事だったのだ。



 咆哮はどこから出ているのかそれは首の継ぎ目から出ているのだろう。


 そこにいるのは殺戮しか考えない勇者モドキ。



 エンゲージソードを構えた瞬間、

 化物はこちらに両手両足で走り出す。

 まさに動物やモンスターそのものの走り方であった。


 それがムキムキパンツ一着だという事だから笑える。

 こういう状態になる事をゲンセイは予測していた。


 だが予測より上回っていたのは。



 ゲンセイは後ろにジャンプする。

 そこに目標から外した鉄の剣が地面に炸裂する。 

 巨大な爆風により、大きな穴が出来上がる。 

 普通のそれとは遥かに違うのは。城1つくらいの大きさだ。

 一瞬にして辺りは崩壊を辿り。砦はさらに木っ端みじんとなり、沢山の人々は爆風に巻き込まれて吹き飛ばされる。



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