第6話 武神ジャイアント誕生

 太陽が昇ってきて太陽が沈むとそこには7つの星空があった。

 それはただの岩であった。

 巨大な岩、それは山であった。

 山は岩であり巨大であった。


 光がその岩を削っていく。

 人の形を取ったその岩は明らかに人より遥かに大きい。

 人間の城壁を2個合体させるとその大きい人間になる。


 岩の肌がまるで生きている生命体のように鼓動を始める。

 皮膚は滑らかになり岩から生物の皮膚となる。

 褐色に茶色が混ざった肌、それは胸だった。

 強靭な筋肉のようになった胸はまるで呼吸するように脈打った。


 巨大な頭は人間を人飲みしてしまう程であった。

 そいつはゆっくりと瞳を開く。

 辺りを見渡すとそこが武神の故郷の村である事が分かった。


 

 その巨人は武神の転生体であった。

 転生した先は故郷の人々が崇めたとされる伝説の巨人ジャイアントの岩であった。

 どうやら遥か昔にその岩はジャイアントであったようだ。

 そこに体の魂が沈んでいく。


 

 武神は見てはいけないものを見ていた。

 故郷の村が破壊されていた。

 死体がない事から人々の無事を祈った。

 そこには沢山の白骨死体があった。

 それはゴミ溜めのようにまとめて捨てられていた。



 それは遥か昔の死体だと分かる。

 それでも武人はゆっくりと両の掌で白骨死体を持ち上げる。

 するとそこには愛を誓い合った女性の白骨死体が見つかる。

 なぜ識別出来たのか、それは分からない。

 でも武神でありジャイアントはそれを即座に理解して。



 巨大な咆哮を発した。空気がびりびりと振動していく中、闇の中でも空を飛翔出来るとされる闇鳥も驚きのあまり落下してしまった。


 心臓が脈動する村の音楽。

 部族の曲が頭に過る。

 そして武神はゴリラのようにドラミングした。

 よく仲間達からゴリラだと言われていた。

 


 ジャイアントは断末摩を上げる。

 仲間の記憶を呼び起こし、そして仲間がここにいないという事を。

 再び諭されたのだから。風は冷たく体はほかほかに熱い。



 走り出しした。あまりにも巨大なジャイアントは地面を振動させながら走り続けた。

 故郷があるという事はここが7つの国の1つである【両手の王国】である事は明白。

 そこは沢山の部族が集まって出来上がった国とされる。


 恨みは怒りになり怒りは絶望になる。

 ジャイアントは人間を滅ぼす事を誓う。

 あの世がどれほど恐ろしい場所か、地獄と天界を行き来した武神ジャイアントならでは理解出きる。


「仲間達よ、お前達はこの世界に舞い戻っているのだろうか」



 まるで語り部のようにジャイアントは呟く。

 それでも走るスピードは衰える事は無い。


 そして語り聞かせる。



「仲間達よ、お前たちの冥福を祈る」



 そこには城壁が見えた。

 巨大な城壁であり、沢山の裏切り者達がいる。

 彼等が騙されていたとしても最後まで自分たちを信じる必要があったのだ。


 武神は【武王の籠手】を盗んだ嫌疑をかけられた。

 だが武神は【武王の籠手】は持っていなかった。

 しかしレプリカをもたされた。

 そして処刑された。



 あの武王のライバルであった国王が憎い、あいつを殺す必要がある。

 だが許さないのは今まで守ってきた国民達だ。

 いくら赤子だろうが子供だろうが大人だろうが、全てをその巨大な両手ですりつぶすのみ。



 一方で7つの星空が輝く空を見ていた兵士達はいつも通りの日常を過ごしている。

 彼等はありきたりな雑談を交わしたり、下品な事を呟いたりして笑っていた。

 1人の兵士がそれを見つけた。


「あれはなんだ?」


「遠くて見えないけどでかいなぁ」


「どうせ巨人族が暴れているのだろう」


「でもあれ、巨人よりでかいぞ」



 兵士達の心臓に響く振動。

 まるで魂で訴えかけてくる何か。

 空に何かが飛んでいる。


 兵士達はそれを見ながら、巨大な岩にすりつぶされた。

 城壁が破壊され、人形のように兵士達は地面に叩きつけられる。

 それは即死であった。



 城壁がいともたやすく破壊された事により、沢山の兵士達が跳ね起きた。

 警報が鳴り響き、国民達は避難を始める。

 しかし実は今日7つの星空のお祭りがあった。 

 人々はお酒で動く事が出来ないし、兵士達もぐでんぐでんに酔っぱらっている。

 子供達はパニックになって走り回る。



 そしてそいつが来た。


 城壁が粉砕される。沢山の破片が至る方向に吹き飛ぶ。

 大きな城壁の破片により子供も大人も関係なく潰される。

 両手の【両手の王国】の人々は断末摩を上げる。



「貴様等は、貴様等はああああああああ」



 巨人は怒りの咆哮を上げた。

 それは【両手の王国】が生き残るか武神ジャイアントが生き残るかの戦いであった。


 

 兵士の中にはまともな兵士達がいた。

 彼等は背後から巨大な石弓を構えている。 

 そこには巨大な弓が設置され、兵士達が解き放つと。

 ジャイアントの背中に直撃する。

 普通なら巨人クラスだと即死するレベル。

 しかしジャイアンの肌は岩ではなく岩を超えた最強な岩で出来ている。

 それが生命の岩と呼ばれるもの。



 生命の岩とは生命を宿す宝石級の岩という事だ。

 つまり名前は岩だが宝石並と言う事であった。



「何してんのおおお、早く頭を狙え」

「え、ですが、ぎゃああああ」



 ジャイアントの巨大な拳が石弓を破壊した。

 石弓が部品をバラバラにさせて吹き飛ぶ中、兵士達は回転しながら城壁の外に落下する。

 それも頭から落ちているので即死だろう。



 ジャイアントは暴れる。武神であるおかげで動作全てが想うように動く。

 拳は人間だった頃の遥かに上回っている。

 スピードも防御力も攻撃力もありえない力を秘めている。



 ジャイアントは城を見ていた。

 そこにいるであろうライバル。


 

 ライバルはジャイアントを嵌めたのだから。


 ジャイアントは辺りを見渡す。

 兵士も赤子も子供も大人も老人もまるでぐちゃぐちゃの死体のようになっている。

 

 ジャイアントは不思議に思った。

 彼等が人間であり同族であったのに殺しても虫を殺すようだった。


 ジャイアントはかつてのライバルの元へと向かった。

 城壁を障害物の壁のように昇るのだから。



 一方でこの国の国王は城のベランダからありえない光景を見ていた。



「嘘だろ、お前なのかドッデム」



 それは武神の本当の名前だった。

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