第106話 大精霊ガイア

「あらー、ごめんなさいねー」


ブオッって音はしないが、そんなイメージで突然あたりが光った。強い光だ。


その光の中から声がした。


ジュネの魔法陣は霧散し、クロリスの魔力も消え失せたが、


「ふははは、目が見えなくても斬れる!」

サイコは大剣を振り下ろした。


光が静まると美しい女神?が、現れた。


肌が透けて見えるキトンの上に、ギリシャ神話の神々が着る上着・ヒマティオンを羽織っていて、神々しい。


(女神?)


(大精霊だキュ)


思わず念話になったソウタの独り言にリャンゾウが答えた。


その大精霊が、ドリアードの少女を庇って袈裟に斬られていた。


大精霊の出現と同時にエルフ達は一斉に全員跪いている。


「あらー、斬られちゃったわー。これ、元に戻るのに時間が掛かりそうだわー」


左肩から右の腰にかけて明らかに斬られて、半身が分かれているのに血も流さず、そのまま宙に浮いている。


痛みはないのか、痛がる様子は全くなく、抑揚のあまりない口調には現実味がない。


「クッ、魔法陣が消されたわ………」

ジュネは大精霊ガイアを睨む。


「ひん、お母さあああああん」

ドリアードの少女が大精霊にしがみつく。


(「お母さん」って、ガイアはドリアードの母なのか?)

ソウタは念話でリャンゾウに確認する。


(そんな訳ないキュ。精霊は出産する事は滅多にないから、大抵は大抵自然発生キュ。母の様に慕っていると思うキュ)


(だよね〜)


「ガイアさ、ま?」

クロリスは怒りが失せて唖然としている。


「そうよー、ガイアよー。クロリスちゃんも随分成長したわねー」

少女を優しく離すと、スーっと宙を移動して、クロリスの側に行き撫で撫でするガイア。


「ふん、お前は敵か?」

サイコは大剣を構え直した。


(斬っておいて、今更「敵か?」って言うのもおかしい気がするね)


(たしかにおかしいキュ)


「サイコちゃんは相変わらずねー。敵の確認は裏を返せば味方の確認でもあるからさー。敵だらけの蠱毒の生き残り、蠱毒から抜け出した魔族の兄妹は寂しかったのねー。そんなサイコちゃんにも仲間が出来て良かったじゃないのー」


「うるさい!」

サイコは殺気を込めてガイアを睨む。


「まあ、ちょっと待ちなさいなー。この子に相談されてねー、サイコちゃんに世界樹とこの里が斬り払われると聞いて、作戦を授けたのは、私なのよー」


大精霊ガイアはサイコに手のひらを向けて、待つような仕草をした後、ソウタに向かって優しく話を始めた。


「そしたら、クロリスちゃんの契約者はサイコちゃんじゃなかったのねー。ごめんねー」


「あ、俺はソウタです………」

女神の様な大精霊に話し掛けられて、緊張するソウタ。


「そう、ソウタちゃんねー。クロリスちゃんがお世話になってるわー、宜しくねー。サイコちゃんには大勢の精霊も斬られてるからさー。ここらでお仕置きしちゃおうと思ったのよー。でも、ソウタちゃんなら話は別よー」


「は、はぁ………」

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